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12話 どこかにいるラナ 後篇

 竜にしか使えないって、私使えるよ!


 実際にやって見せてやろうとしたが、ペンと羊皮紙がなくてできなかった。


 『それは、君が人間と竜の間の存在になっているからだ。 魔法を使ったあと体調を崩すだろう? アレは人間が竜の魔力を使った反動みたいなものだ。 運がよければ慣れる。 それになること(・・・・・・)になる』


 ど、どういうことか、さっぱりなんだけど……。


 理解が追い付かないし、なんか落ち着かない。 これ以上聞いてはいけないと本能が叫んでいる。 でも理性が『聞け』と(ささや)く。 『おまえのことだ』と囁く。


 『私たち、竜には生殖器官がない。 そのため歳をとった竜は人に化けて、人に憑りつき竜にする。 こうして絶滅から逃れている』


 嘘だそんなの……。


 『君は今、竜になれるかどうかの瀬戸際にいる』


 人に化けれるなんて聞いたことないよ……。 そんなの反則だよ……。


 じゃあなに……、人間は竜の子宮みたいなもの……。 人間(しきゅう)に|竜(精子)が入って、受精する。 そして、竜になる。 今の私は……。


 『竜になれなければ、君は死ぬことになる』


 死ぬことってなんだよ……。


 ふつふつと怒りが湧き上がってくる。 どうして私なのか。 人間なんてもっとたくさんいるのに。 なんで私が……。


 『医学的には心肺機能が停止することだったか。 死の定義はいろいろあってどれが正しいのやら……』


 そういうことじゃない! 私は竜のために生まれたわけじゃない!! そんなの知らない!! そっちの事情で私を巻き込まないで!!


 『種が生き残るには致し方ない』


 致し方ないって、人をなんだと……


 『ならば問うが、君たち人間が食べてきた牛や魚はどうなのだ? そいつらも、君に食べられるために生まれて来てはいない』


 ……生きていくには仕方がない。


 自分に不利になることだが、それしか言う事ができなかった。 それしか言えなかった。


 『そうだ、仕方がない。 生きていくには自分より弱い生き物を狩り、喰い、利用しなければならない。 それが自然の摂理であり、命の循環だ。 私はそれに従っただけだ』


 そうだ、ただ従っただけ。 なにも悪いことはしてない。

 でも、だからって竜になりたくない! 私は人間だ! ラナ・フェーリエだ! ロナ・フェーリエの妹のラナ・フェーリエだ!


 『……そんなになりたくないか?』


 なりたくない!


 『……死んでもか?』


 お姉ちゃんと会えなくなるなら、死んでもいい。 お前を道連れにしてやる!

 炎を指差して宣言する。


 『君が死ねば、私はまた別の人間に憑りつくだけだがな……。 まぁいいだろう、ならば折衷案を出そう』


 折衷案? 


 『あぁ、そうだ。 竜を道連れにするなんて言った生き物などいなかったからな。 少し興味が出てきた』


 それで折衷案は?


 『そうだな……。 私は種を守るために君を竜にしたい。 しかし君はなりたくない、と』


 私は頷き、『そうだ』と伝えた。


 『ならば、君を中途半端な人間(・・・・・・)にする。 良い言い方をすれば、竜と人間のハーフになってもらう』


 それって人間って言えるの?


『心配することはない。 姿形は人間のままだ。 姿が一緒なら人間は不安がらないだろ?』


 それならいいか・・・。 で私は何を妥協すればいいの?


『魔法を使う時に竜の姿になってもらう。 さらに、その姿を他人には見せてはならん。 特別に君の姉になら見せてもいい』


 竜になるって、あんなに大きくなるの!? そんなの目立つに決まってるじゃん! 無理だよ、む、り!


『いや、あんなに大きくはならん。 むしろ大きさは変わらない。 ただ、身体に竜の特徴が表れるだけだ。 翼や尾などが出るだけだ』


 それ、だけなら、まぁいいか・・・。


 向こうも妥協したんだ。 こっちも妥協しないと、折衷案にならない。 それぐらいなら我慢しよう。


『では、主たる身体である君が私を取り込め』


 炎が一層燃え上がり、小さくなっていく。

 まるで命が消えていくように。


『面白いことを言うな・・・。 炎を命と例えるか・・・、人間とは案外面白いのかもしれんな』


 炎は段々小さくなり、最終的には手のひら大になってしまった。

 私はそれを両手で優しく掬い上げ、胸元に押し込んだ。


『後は君次第だ。 頑張れ』


 炎が完全にラナの中に入りきる前に一つの言葉を残した。

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