12話 どこかにいるラナ 前篇
暗い。 真っ暗だ。
どっちが上で、どっちが下なのか。
私は今どこに立っているのか。
そもそも立っているのかすらわからない。
浮いてるようで浮いてない。
立ってるようで立ってない。
私の身体がここにないみたいだ。
ここはどこなのか。
水の中のように動きにくく、何かがまとわりついてくるような違和感がある。
確かお姉ちゃんの言いつけを破って魔法を使って、体調を崩した。それからヴァンスさんという人から薬をもらって、それから頭がぼぉーっとして寝ちゃったんだっけ……。
それじゃあ、ここは夢の中?
だったら起きなきゃ! もう町には着いてるんだし、仕事もあるし!
起きようと躍起になっているところで、ボォ……っとある一点に青い光が灯った。
暗やみを食ったように、そこだけが明かりを灯し別空間のように見えた。
……なんだろう、あそこに行かないといけない気がする・・・。
手で暗やみをかき、足で地面(?)を歩く。
不思議なようでしっかりと前に進めている。
自分で自分を関心しながら明かりのあるところに行く。
そこには、青い炎が一つゆらゆらと燃えているのが見えた。
あれが光の正体か……。
暗やみをかき分け、明かりのある空間に手が届くと引っ張られるように中に入れられた。
急に引っ張られたせいで、顔面を地面(?)に打ち付けて涙目になる。
顔がヒリヒリする。
顔を手で覆いさすって痛みを逃がすしていると、暗やみの中であった感覚がなくなっていることに気が付いた。
うぅん……、ここは何だろう。 本当に分からない。 顔の痛みも引かないし。 そんなことよりも夢の中でも痛いのね……。
『こうやって話すのは初めてだな』
炎がさも当然のごとく言葉を発した。 「言葉を発する」というよりは、頭の中に文字が浮かんできたと言った方が適切かもしれない。 頭の中に出てきた文字を読んでいる感覚だ。
感覚なんて言って普通の人は理解できないだろうから、本を読んでる感覚に近いと思ってくれれば結構だ。 それに近い。
あなたは誰?
私は問う。
『竜だ。 昔、君に会ったことがある』
文字が浮かんできた。 どういうわけか、今度は声も聞こえたような気がする。 おっとりとしたおじいさんみたいな声だ。
それに竜って言えば、全生物の頂点に君臨し存在しているのも怪しいといわれている生き物だ。 そんな生き物と私はあったことがある?
『思い出せないもの無理はない。 そのころの記憶は私が鍵をかけて思い出せないようにしている』
心の声も読み取るなんて……。
『それも魔法のおかげだ』
魔法の?
『そうだ、竜の目には魔法がかかっていてな。 睨んだ生き物の心を読むことができる』
目なんてないのに?
『……矛盾しているな』
炎が少しだけ小さくなった。 肩でも落としたのかな。
『まぁ、この際それはどうでもいい。 今日は君に伝えなければならないことがある。 これは君の生死に関わる』
……病気のこと?
『病気……。 まぁ……、そうだな。 まずは、それについて話すか……。 結論から言うと君は病気にはかかってない』
病気にかかってない? ちょ、ちょっと変なこと言わないでよ! 私、魔法が使えるんだよ! もう……死ぬってことなんだよ……
『……人間の間ではそうなっているのか。 間違ってないが、違うな。 そもそも魔法は竜にしか使えない』