11話 希望はあるのか
ラナは薬を飲むと気絶したように眠りに落ちた。 ヴァンスさんが言うには、「即効性の薬だから副作用もある」とのことだ。
命に別状はないが、強い眠気が襲ってきて目が覚めるのは早くて二日後だと言う。
副作用のことはあるが、効果は出ている。 顔はまだ熱いが穏やかな寝息をたてて眠っている。
「本当に助かりました」
「いえ、力になれたのならよかったです。 しかし、ラナさんはどんな病気で……」
ロナの顔に曇りが出た。 ラナの病気のことを話すと、もうすぐラナが死んでしまうことを肯定しているみたいで嫌だった。
しかし、ラナの病状をすぐに静めたヴァンスさんなら、ラナの病気も治してくれるかもしないとも思った。
かなり薄い期待だけど、ないよりは良い。
「……ラナの病気は、免疫力を低下させる病気です」
ヴァンスは驚いたように目を大きくしたあと、肩を落とした。
「それは、お気の毒に……」
やっぱり、ヴァンスさんでも無理でしたか……。
落胆しながらラナの現状をヴァンスさんに伝えた。
「人間の身体は一度病気にかかったら、その病気に対しての少しだけ強くなります。 しかし、ラナはそれができないんです……。 それにさっき分かったのですが、どういうわけか薬が効かなくなっているのです……」
ラナをここに連れてくる時に、いつもの咳止めの薬を飲ませた。 市販されているものなので、簡単に手に入りそれなりに効果も示してくれた。
それなのに、さっきは薬の効果が出るのが遅かった。
それに効きも良くなかったようにみえた。
「薬が効かない?」
「はい……」
ヴァンスさんは腕を組んで少し考え込んでから話し始めた。
「一般的な市販薬は私たちの身体にとって異物として認識されます。そのため身体の防御反応を示し、その薬に対して免疫力を付けます。 しかしラナさんの病気は、『免疫力を低下させる病気』といいましたが、これですと矛盾が生じてしまいます。 もしかしたら違う病気かもしれません……。」
最後に「あくまで俺の考えですけど……」と付け足した。
違う病気……。
医者は確かに「免疫力を低下させる病気」と診断した。
それに治すすべはないとも言った。
けどもしヴァンスさんの言う通り違う病気なら、まだ助かるかもしれない……。
今も魔法が使えるから希望は限りなく薄いが、私たちの明日が少しだけ明るみを増したような気がした。
「ラナは、助かりますか?」
「希望はあると思います」
「そうですか……」