表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/32

10話 看病

  「俺にも魔法を使える妹がいたんだ。 肺の病気だったよ……」


  男は少し昔のことを話し出した。

 う

  「俺の家は貧乏で、薬もまともに買えなかった。 両親と俺で必死に金を集めてたよ。 でもそのせいで、妹には寂しい思いをさせてしまった……。 誰もいない家でひっそりと息を引き取ったよ……」

 

  かける言葉が見つからない。 もしかしたら私もそうなるのかもしれない。

  私が出かけているときにラナの容態が悪くなすり、そのまま……。

  そう思うと他人事にはとても思えなかった。


  「そばにいてほしい時にそばにいてやれなかった……。 そのことを今でも後悔してるよ……」


  男は深いため息をついた。


  「だからせめてもの罪滅ぼしで、魔法を使える人の手助けをしてるんだ。 何か力になれることはないか?」

 

  ポツリと「こんなことで許されるとは思ってないが……」と呟いた。 最後の時、そばにいられなかったことをそうとう後悔しているようだった。

 

  「ついてきてもらっていいですか。 えっと……」

  「すまない。 言ってなかったな」


  恥じるように頭をかいて名前を言った。


  「ヴァンス・ストライプだ。 よろしく」

  「こちらこそ、ロナ・フェーリスです」


  二人は軽く握手をしてラナが眠っている場所に行った。




  「ラナ、大丈夫ですか! 起きてください!」

 

  ロナはラナの顔を見て焦った。 呼吸は荒く、ラナの額から大粒の汗が溢れていた。 ラナの身体を何度も揺すって起こすと、うっすらと目を開けて弱々しく声を出した。


  「その、ひと、だれ?」


  寝る前より咳することはないが、喋るのも辛そうだった。


  「ヴァンスさんです。 少し助けしてもらおうと来てもらいました。 ですが、その前にちょっといいですか」


  ラナの額に手を当てるとひどく熱かった。


  「ラナ、ひどい熱ですよ!」

  「なんだって!」


  ヴァンスもラナの額に手を当て熱を測ると、目を見開いて驚いた。


  「すぐ解熱剤を飲んだ方がいいかもしれないが……」

 

  ヴァンスは悩んだ。

  人体の発熱は、生命防御反応の一つだ。 最高で40~41℃まで上昇し、発熱は細菌やウイルスの増殖を抑え免疫力を高めるという。

  しかし、発熱は不快感、不眠、食思不振 、発汗による脱水、エネルギーの消耗など悪影響があることも確かだ。

  それに、今のラナの様子を見ると飲ませた方がいいかもしれない。

  ヴァンスはバックから小さなケースを出した。 そこから一粒取り出してロナに手渡した。


  「俺が調合した薬です」

  「調合したって、大丈夫なんですか?」


  不安気に渡られた薬を見る。


  「妹がいなくなってから医学を勉強したんだ。 ほら、許可書もある」


  懐から許可書を取りだしロナに見せる。 許可書には、白衣を着たヴァンスの顔写真が貼ってあった。

   

  「それなら、安心ですね。 ラナ薬です、飲めますか?」

  「うん……」


  ロナはラナの身体を起こしてやり、薬を飲ませた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ