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やっぱり予想外♪

 本日も見事なまでの快晴。気持ちの良いお出掛け日和。

 VRMMO初装備、“Garden”。全年齢対象のゲームであるS&Wでは通常のゲームに参加できない幼年者に対するサービスとして各地にRestPoint、“Garden”がある。

 最初の町【ファーン】には初心者用フィールド、南の草原に触れ合い型動物園よろしく“Garden”は設定されていた。。


 テクテクテク❤

 みんなでお出掛け嬉しいなっ、と。

 きゅきぃぃっ!ザクッ! シャリーン・・・

「まぁ!遊んでないでそっちのChihuahuaを早く()ってくれ!」

「出来ない!僕にはこんなカワイイわんちゃんを殺す事なんて出来ない!と、えい☆」

手に持つ盾をエイッと落して顔を覆うその足元で、ボコッ。きゅっ!パリーン・・・

「言ってる事とやってるコト違うじゃねぇか!」

 えい☆と同時に大盾に潰されるChihuahuaに空に矢を射ていたみっきーが文句を付けると、

「だって潰さなきゃ女王様に僕が潰されるぅ♣」

 ヘタレである。そして見事な自己愛者でもある。

 ズルッ!ポーン、ざしゅっ!

思わず外した(ハト)に“カァ~”と鳴かれ、落ちた先にいた(スズメ)に当たったのは幸運だろう。他のモブに当たっていたらbattleoutになっていた筈だ。

 始めて早々にリングアウトしかけた恨みも込め、ぎゅりぃっ!と弓を絞ると、

「アホな事云って邪魔すんじゃねェェっ!」

 シュッ!

「ちょっ、リト危ないでしょ?! 僕ヤるき?!」

飛んできたのは空気の刃。まぁ君の背後に潜んでいたbrownスライムを切り裂くと消えていった。因みにまぁ君が避けなければ狙えない位置にいた不運なスライム君。更に文句を言おうとしたまぁ君の背後には・・・

「あら?、リトに何か文句あるのかしら?」

少し離れた位置で一人ウサギ狩りに勤しんでいたはずの神子様。手には串焼き。狩りの合間に生産活動にも励んでいたらしい。初心者用フィールドだけあってノンアクティブしか居ないとは言え、豪胆な事である。で、

はいっ、と渡すのはリト。本心バレバレ(*^。^*)、の筈なのだが。

「‥‥‥ありがと。はい、」

 はい、と渡されたのは獲物(?)を奪われたみっきー。タイミングを外され呆けた手に押し付けられるウサギの串焼き。

「・・・・・あぁ」

受け取るしかない。切なくなって噛みつく…うん、美味い。

「はい、みんなにも」

「おーっ❤」

・・・斜め上方向に打っ飛ぶのはコイツ等の仕様らしい。

 串焼きを差し出した姿で凍りついたせいの肩をポンッと叩く手。

 ギギギ、と錆びついた機械の作動音と共に手の(みっきー)にぎこちなく振り替えるせい。

 非戦闘空間である“Garden”にはついさっきまで小学校低学年と思しき子供達と保護者がそれぞれ思い思いにノンバトルモードのモンスター達と戯れていたはずなのに、今は彼ら以外誰もいない。ついでに言うならモブモンスターも居なくなっていた。

 頭をカキカキそっぽ向き、

「なんか規定数達成したみたいだから一旦ファーンに帰っか。これ以上、此処(ガーデン)に粘ってももう戦闘にゃならねーし」

それに

 もぎゅもぎゅ、ごっくん。

「そだね~。クエスト達成すると、“Garden”、通常のRP(休息地)に戻っちゃうし」

「・・・【ガーデンを取り戻せ!】の討伐数は確か100体だった筈だが?」

 まだ10体ほどしかリス(+ネズミ)を突いていないちぃ。6人で割ると一人当たり16体前後なのもあるが、恐怖のネズミ退治をとっとと終わらせたいセコイ本心も見え隠れしている辺り、流石ヘタレの相棒。

 その傍ら、さり気なく食べ終えた串焼きの串を集めて生活魔法・水で洗浄してみっきーに渡して何をさせる気なのか。ついでにこっそり錬金術を掛けている辺りにまぁ君の類友臭を感じる;

「お前らが遊んでっから、俺とまぁで稼がせて貰ったぜ?」

 くるっ

 そこにはモギュモギュと意地汚く串焼きを頬張る間違ったサイズ(180㎝)のショタエルフ。

 その手に大盾はなく、左前腕部を辛うじて蔽う大盾と同じ色をしたバックラーと、同じく大盾と同じ色をした細身の木剣。

「ちぃっ!」

獲物を独占された怒りは、武器を渡した相棒に。だって怖いんだもの、得物を持った古流剣術師範代なんて☆

「俺だって獲物を奪われたんだ!」

 渡さないと、狙った獲物(ネズミ)を逃がすんだぞっ?!

 ネズミなんて亡べばいいと常々呪っている人間の獲物をネズミ限定にする原因を作ったうえに、その狩りの邪魔をする鬼畜ぶり…〇だっ!ド〇がいるっ!!

びゅんっ!

 ・・・・・

「ちょっ、どこ狙ったんだい!」

「なんか僕の悪口が聞こえた気がして☆」

てへ、ぺろっ。

 耐久∞の初期装備の短剣がお空の彼方に飛んでった。

「…落下地点に何もないと良いな」

「…うん」

 短剣が消えた西の空に、遠い目をして呟くせいとちぃ。ギャーギャー騒ぐみっきーにそれを煽るひろ。

「反省はしてるけど後悔はないよっ!」

な、ゴーイングマイウェイなまぁ君。それに生温い視線を向けるリト。


ぽーん。

【クエスト・西の森街道を塞ぐ逸れウルフを退治せよ!】クリアされました。

 初討伐報酬・灰色狼の神宝珠

 初回討伐報酬・灰色狼の魔晶石

 ソロ討伐報酬・灰色狼のコート

 通常討伐報酬・灰色狼の魔石×1、尻尾×1、耳×1、肉・毛皮・牙・爪×10

 討伐部位:灰色狼の舌


ぽぽーん。

 只今の戦闘により『まぁ君』は2、レベルアップしました

 ステータスポイントが2加算されます。任意のステータスにポイントを振って下さい

 スキルポイントが4加算され合計10ポイントになりました

 《投擲》が習得されました。控えスキルにセットされます


 ・・・・・・・・

「……灰色狼って犬だよね?」

「何処までもブレねぇなっ!てめぇはよ!」

 唖然、呆然。正気に返った最初の一言がそれって…;

「だってせっかく可愛いワンちゃん達を血の滲むような思いで()ったのに、それが無駄になるなんて耐えらんない!」

顔を伏せ悲痛に訴えるが、パカッ。

「お前はマスターが怖いだけだろ」

「当たり前じゃない☆」

ガバっとイイ笑顔でサムズアップ。

 やっぱり、といったみんなの呆れ顔。

「ワンちゃんは可愛いけど、うちのマッシー以上に可愛い仔なんていないものっ」

サイズ違いのショタエルフの正体は、愛犬(2歳の豆柴)を溺愛するタダの犬好きだった。

 それ以外の犬に向ける愛情はとても非情だが。

「帰るか…」

「…うん」

 きらきらオーラで愛犬愛を語る相棒の襟首に手を掛けると、他のメンバーに声をかける律儀なサブマス、ちぃ。

 完全に毒気を抜かれて帰り支度な一行を背後から窺う影。

 どうやら安心と判断して姿を消していた親子連れも“Garden”に戻り再びモブモンと戯れている姿に

ほっこりしているメンバー。近寄るつぶらな瞳のウサギ。

戦闘が無いと判断して手を伸ばすまぁ君。

 のんびりとした“Garden”の日常。

 横から手を差し出す優しく微笑む神子装束。優しく微笑み・・・

『ぎゃるるぅっ!』

 首を絞められパリーンと砕けるモブウサギ(BabyRabbit)。


【クエスト・Gardenを取り戻せ!】クリアされました。

 討伐部位:First Crystal

ゲームとはかくも無常なのです

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