ヴァレンタイン
この作品は作者の初投稿作品となりますので、温かく見守ってやってください。
面白く、微笑でもしていただけたなら幸いです笑
二月一日。とうとうヴァレンタインの月に入った。今年は何個もらえるのだろうか……。
「陸~、お前去年いくつチョコもらったんだ?」
海斗が聞いてくる。海斗の周りには郷耶、史蔵、輝也がいる。こいつら四人はモテる集団、「星の四人組」と、俺だけが呼んでいる。
「さ~、覚えてないな。お前ら星の四人組のほうが貰ってるんだから聞いても仕方ねえだろ」
輝也が本気になって俺に向かっていってきた。
「俺たちは、お前がモテてることを知ってんだ! しかも俺たちは去年チョコをあまり貰ってないんだ!」
そうだったのか……。多分こいつらモテてるからみんな遠慮しているのだろう。
「はいはい。ま、俺には関係ないね」
「いや、関係ある!」
郷耶が叫び、そして史蔵が説明する。
「今回のバレンタイン、俺たちと勝負だ!」
何を言ってるんだ。それに海斗が補足をする。
「まず、バレンタインじゃない。ヴァレンタインだ」
「そこどうでもいい」
「しかも、今回はただの勝負ではない! 誰が一番チョコをもらえないかだ! 景品はもちろんあるぞ」
「てかそれ、やる意味なくね? 勝ってもあんまうれしくないし」
なぜか俺は星の四人組に呆れ顔をされた。郷耶が口を開く。
「意味ある! 何とは言えんがある!」
ないんですね。
「これで勝ったものは美恵子ちゃんにコクる」
え? 輝也なんていった? ……こいつら……俺の好きな人を知ってて……。しかも「ちゃん」だと? そういう柄でもない癖しやがって!
「人をもの扱いするなよ」
「やりたくないならやらなくていいけど? 俺たちだけでやって俺たちの誰かがコクるから」
「ル、ルールは?」
「ふっ、やる気になったな。ルールは、女子に『いらない』と言ってはいけない。そして貰う期間はヴァレンタインの日、前後二日間とする。いいか?」
俺はいいが、こいつらなんでそんな自信たっぷりなんだ? 去年もしかして……。
「いいぜ」
「じゃ、そういうことだ。じゃあな」
と史蔵が言って「星の四人組」は去っていった。
俺は、それからというもの気が気でなかった。毎日彼女のことを見ている気がする。彼女からはチョコを貰いたいが貰うとあいつらが彼女へコクる確立が増えてしまう。きっとコクられたら付き合ってしまうだろう。
そして二月十二日。
「とうとうこの日がやってきたな、陸!」
海斗が一人、大声で俺の元へ寄ってきた。
「お? 今日は一人か?」
「ああ、まあな。なぜか他のやつらは下の下駄箱のところにいるよ」
「どうせもらいたいんだろ」
「今回は俺とお前の対決になりそうだな。俺も美恵子ちゃんのことは気になってたんだよね~」
こいつ……。絶対に勝たねば。
一日目終了。この時点で俺はまだ貰っていない。まあ、バレンタインの日は明後日で、水曜日なので学校だ。というわけで、当日に渡すのがほとんどだろう。他のやつはどうだったのだろうか……。
二日目、周りを見るといつもよりにやけているやつが多いように思う。今日渡す女子もいないことはないのだろう。もうすでに昼休みだが俺はまだひとつも貰っていない。今年はラッキーだな、と思う反面、疎外感を多少感じる。
放課後に、輝也が声をかけてきた。
「陸、俺もう二つもらっちゃった。お前はどうだ? 五つとか?」
「輝也、妄想はそこまでにしな。俺はまだnothingだ!」
ナッシングの発音がうまかったな、と自分で思いつつ輝也の驚く反応を楽しむ。
「え? マジでか! お前に勝ってるのは嬉しいがなんだか負けてる気がするのはなんでだろう……」
「だってそれはこのゲームの趣旨って数が少ないほうが勝ちってやつだからだろ?」
「あ……忘れてた」
流石だぜ! と歯を輝かせながら言いたかったがキモいのでやめた。
「じゃあな……」
なぜか輝也はすごい放心状態だった。
「陸くん」
「ん?」
とある女子に声をかけられた。
「こ、これ……よかったら食べてくれないかな……。精一杯作ったんだけど……」
異様にかわいい。あまり話さない女子だったがその照れ方がヤバい。
「ああ。ありがと。食べさせてもらうよ」
もっとかっこいい言葉が俺は言えないのだろうか……。
「うん! こっちこそありがとう!」
と言って走って階段を降りて言った。
一個目か……。それにしてもかわいかったな。いや、俺は美恵子のみだ!
バレンタイン当日。下駄箱前にて。
「ふふふふふ……。ここからが勝負だ。陸!」
おもいっきり近くで指を差してきた。今日は四人でお出ましか。
「はいはい」
と流すと、郷耶、史蔵、輝也の順で一言ずつしゃべってきた。
「陸、勝負だ! 俺は負けねえぞ!」
「俺が負けるわけなか!」
「勝負!」
……。呆れた海斗がつっこんだ。
「まず、なぜに全員ほぼ同じことを言う? そしてどんどん短くなってるし! 史蔵に至ってはお前誰だよ!」
「海斗、お前よくあんなワンテンポ遅れた状態でつっこむ気になったな」
「だって仲間だからさ、怪我させるわけにはいかねえから」
かっこいいことを言っているようにも聞こえるがあまりピンと来ないのは俺だけか? 他の三人の目ウルってるし!
「んまあ、今日でほとんど勝負が決まるようなもんだから、気合入れてくぞ。じゃあまた後でな、陸」
「おう」
星の四人組は去っていった。
「下駄箱かあ、開けんのだるいな」
マンガみたいに雪崩が起きることはないが去年入っていた気がする。
下駄箱を開けてみると、ラッキーなことに一つしか入っていなかった。名前を見てみると他クラスの人からだった。
教室に入ると、男子はもう大騒ぎだった。大喜びするものもいれば、喜んだのも束の間、みんなに配っていた、というもの。そしてもらえないで落ち込んで一人席に着いているやつ。特にそのもらっていないやつは他クラスからはもらったと聞いた。ということはこのクラスの女子からはどうも思われていないということだ。
「ドンマイ」
と俺が横を通り過ぎるときに言うと、
「そうなんだよ! どう思う? 他クラスからはもらってんのに自分のクラスでもらえないって。俺このクラスの女子に嫌われてんのかな」
食いついてきた。
「そう落ち込むなってまだ終わっちゃいないぞバレンタインは」
「バレンタインなんて朝で終わりだよ」
とまたどんより雰囲気が漂い始めたので俺は早々に退却することにした。
「はい、陸君の分」
「あ、ありがとう」
義理ならいらないって……。と呟きそうになったがそう思うとさっきの彼に悪いのでやめておいた。
多分義理ならみんな同じ数くらいだろう。ここではあまり差はつかないのでやはり勝負は本命だ。本命と断定することすら難しいがそれは感覚だ。
俺は席につき、机の中に手を入れてみる。最悪なことに三つも入っていた。こうなると見つけてはいけない宝探しゲームのようになってくる。次の宝島はロッカーだ。ここは一番確率が少ないが一応見てみる。
「うわっ」
開けた瞬間に驚いてしまった。五個。しかも一つ、ものすごく大きいのがあったのだ。
「おい陸、お前ロッカーに何も入れてないのになんでロッカー見てんだ? もしやバレンタインでか?」
とにやけながら男子が聞いてきた。
「違う違う。この前ロッカーに一回だけなにか置いたから、残ってないか確かめに来ただけだよ」
「へ~。で、あったのか?」
ヤバい。……とここで思いついた。五個のうちのでかい袋のやつに全て入れた。そして出す。
「ああ、これだよ」
「なんだよそのど派手なの。お前ってそんな趣味だっけ? 中見せろよ」
「親からそのまま手渡されただけだから。ちなみに、これは見せられない」
と言って俺は逃げるように去った。
放課後、五人集まった。
「よし、途中結果だ。まあ、これでほとんど決まりだけどな」
そして海斗たち四人がチョコをばら撒いた。みんな結構あるように見える。いつもの順番、海斗、郷耶、史蔵、輝也の順で言っていった。
「十二個だ」
「十三個」
「十五」
「……十七」
輝也だけ多い。流石だ。
「陸は?」
俺はまだ数えていないので、今、机にばら撒いて数えた。一、二、三……だんだんと海斗の数に近づいていくのが怖い。十、十一、十二。それで全部だった。
「十二だ」
「俺と一緒じゃねえか。一騎打ちになりそうだな」
ここで負けたら本当にヤバイな……。
「あと二日に俺はかける」
十五日にはいつもの順で十三、十三、十七、二十二と俺が十二だった。
「俺は変化なし。いい感じだ。今日渡されなかったってことはもうないな」
待ちに待った最終日。俺は美恵子を放課後に呼び出した。もう俺の勝ちはほぼ決まっていたので許可を得た。
「美恵子、なんかごめんな。呼び出したりして。あのさ……」
「あ、ちょっと待って」
美恵子はバックをあさり始め、「あった」と声を出して袋を二つ出した。
「え……? これは?」
声が震えてしまう。
「友達が渡してほしいって言うのと、私の分。渡すの忘れてたから。あげる」
負けた……。海斗に……。しかも郷耶にも。
二人が影から飛び出してきた。
「美恵子ちゃん、俺と付き合ってくれ」
「俺も、お願いします!」
さらになぜか史蔵と輝也も出てきた。
「付き合ってください!」
「お願いします」
こんな光景めったに見ることはできないだろう。というかもう見れないだろう。「星の四人組」が……。
「えーと……」
四人は頭を下げたまま言い争っている。史蔵と輝也のことだということは予想が付く。
「あの、私好きな人いるんで。ごめんなさい」
「そうか……。誰なの?」
輝也が聞く。
「陸」
最後までこんな拙い作品を呼んでいただきありがとうございました!
これからもがんばっていきたいと思いますのでよろしくお願いします!




