エピローグ
4月。
結衣は軽い足取りで旧校舎へと向かう渡り廊下を歩きながら、初々しい制服姿の新入生たちを見つめていた。
桜はもう満開で、儚げなピンク色を制服の上に落としている。
その花びらの一片が結衣の目の前にやってきて、ひらひらと舞う。そっと手を差し出してみるとうまい具合に手のひらに収まった。
優しく桜の花弁をつまみながら階段を上り、探偵同好会の部室をあける。
「おはようございまーす」
時刻はすっかり放課後なのだが、結衣はそんなことを気にしない。
室内にはすでに4つの人影があって。なんとなくデジャヴにおそわれる。見慣れた光景とは少し違ってはいたが、きっと本質的には同じもの。
「おはようございます」
固い返事がふたつ。
緊張して、こんにちは、と訂正するだけの余裕がないのだろう。結衣はにこやかにほほ笑んだ。
「ようこそ探偵同好会へ。そしてわたしは――白谷結衣、名探偵だ」
会長と副会長のうつった写真が、かすかに光を反射してきらめいていた。
いままで読んでいただいた方々、本当にありがとうございました。
気が向けば番外編なんかも書くかもしれません。
足かけ半年に及ぶ連載でしたが、書いていて面白い時間でした。
この作品が、少しでも楽しい時間を提供できたならこれ以上にうれしいことはありません。