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こっくりさん、こっくりさん

またまたちょっとホラーチックですが、作者の力量が足りないために、中途半端な怖さになっている恐れがあります。

それでもなお、心臓が弱い、霊感が強いという方はお気を付けください。


ここからは1月編となります。

 もしもあなたに知りたいことがあって、こっくりさんに教えてもらいたいのなら、こう言えばいい。

「こっくりさん、こっくりさん、どうぞ私のもとにおいでください」

 これを3回繰り返すとこっくりさんが降りてきて、あなたの体を使ってあなたが聞きたいことをなんでも教えてくれる。

 あなたが用意するのは昭和時代に製造された古い10円硬貨と、はい、いいえ、性別と赤い鳥居、そして五十音を記した紙だけ。それを4人で囲む。

 あなたたちは必ず4人でなければいけない。1人でも足りないと、こっくりさんが現実世界に出てきてしまうから。

 あなたたちは4人で鳥居の周りを囲んでいる。それは東西南北の四方を封印するため。だからひとつでも方位が欠けていると、こっくりさんが現れて、あなたたちは強すぎる妖力にとりこまれて狂ってしまう。

 友達を傷つけるだけで済めばいいけどね。

 そして、こっくりさんをお呼びしてからは1人ずつ人差し指を硬貨の上に乗せていく。

 そのときに大事なのは、こっくりさんの存在を強く信じること。もしひとりでも疑っているような人がいたらこっくりさんは怒って帰られてしまう。だからこっくりさんをお呼びするときは、なるべく経験者どうして集まったほうがいい。一度でもこっくりさんを目の当たりにすれば、次からは疑おうなんて馬鹿なことを考えなくなるはずだから。

 全員が指を乗せ終えたら、あなたは代表して質問しなければならない。

「こっくりさん、こっくりさん、あなたの好物はなんですか?」って。

 こっくりさんは狐の神様だから好物はお稲荷様だと答える。あるいはあぶらあげ。それはそのときの気分次第。でも、もしあなたがこの質問を忘れてしまったら気分なんて関係ない。あなたはこっくりさんに乗り移られたまますぐに一生を終えるのだから。

 こっくりさんは憑依したときにあなたの意識と深く交わり合う。だからこっくりさん自身が、自分が誰だったのか忘れてしまう。こっくりさんはあなたを自分だと認識してしまう。

 だからこっくりさんの好物を尋ねて、ちゃんとこっくりさんが自分のことを思い出せるようにしないと、こっくりさんはあなたから離れられなくなる。

 もちろんあなたもこっくりさんから逃れる術はない。

 そして、あなたが質問を終えると、4人の指が乗せられた10円玉が動きはじめる。

 4人もの人間が10円玉を制御しようとしているのだから、誰の意思とも関係なく勝手に10円玉が動くなんてありえない。でも、奇跡さえもこっくりさんなら朝飯前。なにせ神様だから。

「こっくりさん、こっくりさん」

 今度はあなたの本当に聞きたいことを質問する順番。

 こっくりさんはありとあらゆることを何でも教えてくれる。神様は全部を知ってるから、あなたが知りたいことをすべて伝えてくれる。はい、いいえ、で答えられないことは紙に書いてあるひらがなを指して会話する。

 こっくりさんを呼び出す方法は基本的にはこれだけ。ひとつだけいい忘れたけど、途中で指を離したら絶対にダメ。もしも指を離したらすぐに依り代となっている人に謝らなければならない。こっくりさんは10円玉に指を乗せている人たちの力を使って会話しているから、一人でも離反するとすごく怒ってしまう。それを鎮めるためにはお稲荷さんがいちばんなんだけど、もしも近くにない場合はただ謝罪することしかできない。

 それを怠ったら、こっくりさんは怒って指を離した子に呪いをかけるから。その子は一生今いる場所から離れられなくなって、衰弱死した魂をこっくりさんと一緒に連れ帰るという運命をたどることになる。

 あなたの質問がすべて終わったら、あなたはこっくりさんに深く感謝しなければならない。

 あなただけじゃない。参加者全員がこっくりさんにお礼の言葉を述べなければならない。

 そして儀式を終えるときには必ずこう尋ねて。

「こっくりさん、こっくりさん、お離れしてもよろしいでしょうか?」って。

 さっきもいったけど、こっくりさんはあなたの体に憑いているから、こっくりさんに帰っていただくにはあなたから離れてもらわなければいけない。本当なら、指が勝手に動いて「はい」のところを指し示すはずなんだけど、もし4人のうちの誰かが少しでも裏切るようなことをしていたら、こっくりさんはすぐお気付きになる。

 もしこっくりさんがあなたの質問に対して「いいえ」と答えたら、あなたたちはもう助からない。その場にいる全員に呪いがかかってしまうから。動けず、助けも呼べず、あなたたちはこっくりさんに縛られ続けて、やがては魂を持っていかれこっくりさんに使役され続ける。

 そうして、次にこっくりさんが誰かの魂を連れてくるまで地獄のような苦痛を味わうことになる。

 こっくりさんが無事にあなたから離れたら、その10円玉はすぐに神社のお賽銭箱に投げ込んだほうがいい。こっくりさんの霊的な力がまだ少し残っているから、神聖な場所に置かないと、不幸を呼び込んでしまう。

 あなたはいくつかの手順を守りさえすれば、簡単にこっくりさんを呼び出すことができる。だけどそれは、一歩間違えると死と隣り合わせの儀式だということを覚えておいてほしい。

 こっくりさんは狐の神様。でも、その本性は獣。すぐにしびれを切らして、あなたを喰い殺そうと牙をむき出しにして待ち構えているのだから――。


1月編、はじまりです。

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