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CASE3 副会長

CASE3 副会長


「……まだ、ひとつ足りない」

 地獄の底からとどいたような声でつぶやくと、女子中学生らしきグループが泣きながら逃げていった。お化け屋敷にすっかり溶け込んでしまった副会長の背筋はおれ曲がり、顔色は死を目前にした老人のように青白い。

 何度目かわからない時計の確認。

 タイムリミットは近づいている。みんなはポイントが有利であると信じているだろう。当然だ、とっくに手帳が盗まれてしまったことを報告していないのだから。

 引き分けに終わるなら、まだいい。

 問題なのはもし誰かに逃げられたり、手帳をもうひとつでも盗まれてしまったりした場合だ。ほかのみなは引き分けだと悔しがるだろう。そして、生徒会の審査によって探偵同好会の負けが発覚する。

 副会長はいとおしげに自分の髪をなでた。

「この髪ともお別れだな。しばらく寒い日が続きそうだ」

 もし生きていれば、の話だが。

 あれだけイベントがはじまる前に会長から注意を受けていたのだ、それが報告もせずに失敗しましたでは取り返しがつかない。けれども、時間がたてばたつほど会長に知らせる勇気もうせてしまって、逃げ出すわけにもいかず、どうしようもない悩みばかりが募っていった。

 あんな女の子に惑わされるんじゃなかった。

 いやたしかに可愛かったのだけれども。足もすらりとしていて綺麗だったし、小動物のような脅えたしぐさも愛らしいし、なによりありがとうといってもらえたあのときの感情が忘れられない。

 ――それでも、つかの間の至福を蹂躙するには十分なくらい暗黒の未来が広がっている。どうしようもない未来だ。つと、副会長は気が遠くなっていくのを感じた。

 貧血だ、どうにかしなくては。そう思って立ちあがると、逆らえないめまいが襲ってきて副会長は崩れ落ちた。

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