CASE2 副会長
CASE2 副会長
タイタニックから落ちて、極寒の北大西洋で溺れているような心持だった。寒い。凍えてしまいそうだよローズ。ちなみにローズというのは映画タイタニックのヒロインのことだ。
咲が些細なミスで手帳を盗まれたと知らされたときは、すこし喜んでしまった。これで自分がすでに手帳をとられていたとしても許される。そう思った。
だが、冷静になって考えてみると、いよいよ恐ろしい運命が待ちうけていることに気づいた。
咲が手帳を奪取されたときの状況は、とても詳しく報告されていた。つまり副会長も同じだけ詳細な報告を求められるということだ。
真実はなにがあっても打ち明けられない。となると、嘘を付くしかないのだが会長をはじめとして探偵同好会の部員達を騙しきれるような嘘をつけるはずもなく、ごまかせば疑われるだろう。
さらに決定的なのは怪盗同好会の会長である氷川美保の存在だ。
副会長から生徒手帳を盗んでいったひとは、もちろん氷川にそれを伝えるだろう。どうやって盗んだのか、そういったことがむこうの耳にはいると非常にまずい。
氷川と会長は本人いわく犬猿の仲であるが、副会長が見たところ結構仲は良い。イベント本部では会長に揺さぶりをかけるためこのことを伝えることもありえるだろう。
たとえそうなったとして、しらを切っていれば言い訳を考える時間は稼げる。終盤戦になればどうしても混乱が起きるだろうから、そのどさくさで盗まれたことにしてしまえばいい。
氷川がどう会長に真実を話したところでそれを否定し続ければ問題ない。
「……はぁ」
どんなに都合のいい未来を考えたところで、事実は変わらない。
これから副会長を待ちうけているであろう未来と同じように真っ暗な空間を、じっと見つめる。いつまでたっても希望は浮かんでこなかった




