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探偵同好会がいつまでも続きますように

「さて、夜10時ということだったが、誠くんは自転車で帰らなければいけないんだったな。後輩を法の網に引っ掛けるわけにはいかないということで、もうすぐお別れの時間だ」

 副会長が腕時計を見ながらいった。

 未成年はあまり夜遅くまであたりをほっつき歩いていると補導される恐れがあるのだ。

「みなみも言っていただろう。明日も学校があることだし、そろそろ帰ったほうがよさそうだ」

「おれだけ自転車ですか」

 神崎が恨めしげに自分のママチャリを見つめる。

「これじゃ折りたためないしね。これからは電車で来られるよう精進しなさいな」

 会長があっけからんと言う。

 咲たちが姿を現したあと、しばらく5人で満天の星を見上げていた。そうしているうちに時間は流れ星のように過ぎていき、気付けば帰らなければいけない時間になっていたのだ。

「会長たち、このあとカラオケ行ったりしませんよね」

「いいこと言うね誠くん。行こうかしら」

 意地悪な笑みを浮かべる会長。

「そんなぁ」

「冗談に決まってるじゃない。さすがにそこまで鬼じゃないわよ」

「ならよかったです」

 神崎は安心したように微笑んで自転車にまたがる。来るときは周囲に目を凝らしながらの運転だったため3時間はかかったが、帰りは一直線に進むのでその半分の時間で行けるとのことだ。

 どちらにせよ電車を使うより圧倒的な時間を食うのには変わりないが。

 人影も、街灯の明かりさえもない河川敷を、ライトをつけた自転車が遠ざかって行くのを見送ってから、残った4人が歩き出す。

 見事なくらい、あたりには明かりがない。

 副会長がリュックサックから懐中電灯をとりだし足元を照らす。咲たちが来たときにはまだ月が残っていたが、もうすでに地平線の彼方へ姿を消していた。

「結衣ちゃんたちにはあの暗号、楽勝だったでしょう?」

 会長が尋ねる。

「ええまあ。そんなに難しくはなかったです。帰ってからパソコンで検索するほうが難しかったくらいですね」

「情報収集能力も探偵に必要なスキルのひとつだからね、それも訓練よ」

「みんなで星空が見たいから、わざと簡単な暗号にしたんですよね会長」

 咲が横から口をはさむ。

「神崎はあぶなかったみたいですけど」

「まあ咲ちゃんあたりが手助けしてくれるのかなって思ってたから、たいして心配はしてなかったよ」

「アイス奢ってもらうって約束がなければそんなことしませんけどね」

「でも、神崎先輩が来てくれてよかったです」

 首からデジタルカメラをさげた結衣が笑顔をみせる。

 そのカメラのなかには探偵同好会の5人でとった写真が収められている。光源がほとんどないのでうまく写すのは難しかったが、なんどかの試行錯誤を経てなんとか成功した。

「来年も来たいですね、ここに」

 結衣がつぶやく。

「僕らは大学生になってるけどね」

 と副会長がいった。

「それでもいいです。また七夕の日に集まればいいじゃないですか」

「そのときはしっかり周囲を捜索するからね。隠れても無駄だよ」

 会長が睨みをきかす。主に咲にむかって。

「このへんに物影が少ないのが残念です。すいとんの術でも練習しましょうか」

「忍者かあんたは」

 会長がつっこむ。

「児玉さんたちがちゃんと探偵同好会を存続させていてくれたら、僕らも来年行くことにしようかな」

「大丈夫でしょ」

 答えたのは咲ではなく会長だった。

これにて7月編はお終いです。

今年はこれでかきおさめになると思います。よいお年を!

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