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正しく想像してください  作者: サモト


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5/11

5‐無限通路

 もう、どれくらい歩いているだろう。


 白と黒のタイルが、交互に続く一本道。

 同じ景色が、延々と繰り返されている。


「……SOSさんから、メッセージ来ないな」


 俺は手の中のスマホを、ちらりとのぞいた。

 ちょうど通知音が鳴る。


『【最後の部屋】』


『【最初の部屋】に似た部屋に着いた』


 え? 部屋?


「この通路に出たの……俺だけなのか」


 となると、今回はSOSさんとの比較じゃない。

 このフロア単体で、おかしな点を見つけろってことだな。


「今回は簡単だな」


 俺はすぐにメッセージを打った。


『5マスで終わらない通路は、おかしい』


 この建物は、どの階も5×5マスで統一されている。

 こんな果てしなく続く一本道なんて、ありえない。


「どうだ?」


 きっと次への螺旋階段が出るはず。

 そう期待していたが、空間の歪む感覚はなかった。

 代わりに――


 ドンドン! ドンドン!


「うわっ!?」


 俺は右へ飛びのいた。

 壁の向こうから、誰かが叩いている。


「誰か、いるんですか!?」


 返事はない。

 ただ、叩く音だけが続く。

 必死に自分の存在を知らせるように。


「SOSさんですか!?」


 音は次第に弱まり、やがて消えた。

 まるで叩き疲れたようだった。


「この向こう、部屋があるのか」


 俺は、左側の壁をコンコンと叩いてみた。


 この通路は本来、1×5のはず。

 4×4の空間が隠れているということになる。


「……で?」


 部屋があって、誰かがいる。

 それが何を意味するのか、謎だ。


「ぜんぜん分からないぞ……」


 胸の奥に、不安がじわじわと広がる。


 俺は一度、道を引き返すことにした。

 通路が長すぎると気づいた時点で、戻るべきだったのだ。


 ところが。


 いくら歩いても、上ってきたはずの螺旋階段にたどり着けない。


「……まさか、帰り道がなくなっている?」


 呆然とする。


「進むも地獄、戻るも地獄の、無限地獄かよ」


 出口がない。

 手がかりがない。

 頼れる相手も、いない。


 不安がのど元にせり上がった。


「なあ! 誰か!」


 俺は壁に、ドンと拳を叩きつけた。


「いるなら、返事してくれ!」


 不安を吐き出すように、ドンドン、ドンドンと力任せに壁を叩く。


「助けてくれ!」


 手が痛くなり、今度は足で蹴る。


「――っ!」


 失敗だった。

 つま先を強く打ち、鋭い痛みが走る。


「……落ち着け」


 足先をさすり、深呼吸を一つ。

 痛みのおかげで、少し頭が冷えた。


「大丈夫。大丈夫だ」


 もう一度、進むべき方向を見据える。


「必ず、違和感はある」


 俺は両頬を軽く叩いた。


「一度、この建物を整理しよう」


 これまでのフロア構造を、スマホに書き出してみる。



【ロビー】

  ▲

□□□□昇

□□□□□

□□□□■案内板

□□□□□

降□□□□


昇、降…螺旋階段



【光の部屋】

  ▲

□□□□降

□□□□□

□□□□□

□□□□□

昇□□□□



【回廊】

  ▲

□□□□昇

□■■□□

□■■□□

□■■□□

降□□□□


■…謎の空洞



【現在のフロア】

  ▲

□□□□降

□□□□■

□□□□■

□□□□■

昇□□□■


■…俺が歩いている通路

□…誰かがいる空間



「……何がおかしいんだ?」


 描くほどのこともない、単純な構造。

 途方に暮れてしまう。


 ――ドンドン! ドンドン!


 また通路がうるさくなった。


「静かにしてくれ!」


 無意味だと分かっていて、左壁に叫ぶ。

 ふと、違和感を覚えた。


「……左?」


 俺は、もう一度図を見た。



【現在のフロア】

  ▲

□□□□降↓

□□□□■↓

□□□□■↓

□□□□■↓

昇□□□■↓


↓…俺の進行方向



 ひやりと、背筋が冷えた。


「右から音がするなら分かるけど、左からするのはおかしくないか……?」


 俺は震える手でメッセージを打った。


『建物の外側に、誰かいる』


 完全にホラーだ。

 泣きたい気持ちになったとき――右壁が消えた。

 隠れていたフロアが現れる。


「やった!!!」


 俺は全速力で、斜向かいの螺旋階段に駆け出した。

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