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正しく想像してください  作者: サモト


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2/11

2‐ロビー

 階段を上り切ると、さっきの部屋よりも数倍は広い空間に出た。

 床は白と黒の市松模様。

 天井は高く、足音がよく響く。


「どこに来たんだ、俺……」


 ピロン、とスマホの通知音が鳴った。

 SOSさんからだ。


『【ロビー】』


『床が白黒のチェッカーパターンのフロアに出た。

 タイルは5×5。歩幅から計算して、1タイル3メートル四方。

 縦横15メートルの空間か』


 詳細な説明。助かる。


『【最初の部屋】は3メートルの立方体だった。

 ……こんな空間は、現実を無視している。

 時空がねじれて、どこか別の建物に連れてこられたとしか思えない』


 完全同意。

 どう考えても、おかしいよな。


『入って、利き手側に案内板があった。

 それ以外は何もない。

 住居としても事務所としても不完全で、奇妙な空間だ』


 スマホから顔を上げる。

 右壁の中央に、銀色のパネルが取り付けられていた。


 縦に細長い建物の図。

 高さは4つに区切られているので、どうやら4階建てらしい。

 それぞれの階から線が伸び、簡単な平面図が添えられている。


 ……が、意味があるようには思えない。


 どの階も同じ図なのだ。

 正方形の上辺に三角形。

 右上隅と、左下隅にはぐるぐる渦巻き。


 階の名称も説明もない。

 案内する気があるのかといいたくなる図だ。


『上辺の▲は方角記号だろう。

 隅の渦巻き2つは、螺旋階段と思われる。

 しかし、フロアに階段は1つしか見当たらない』


 俺の状況も同じだ。

 階段は、今上ってきたものが一つあるだけ。


『どうしたものか……』


 俺が違いを見つけないと、先へ進めないんだな。


「俺とSOSさんで、何が違うんだ……?」


 スマホを見つめ、低くうなる。


 壁の色や、案内板の細部について尋ねてみた。

 既読はつくけど、反応なし。

 SOSさんには読めないようになっているんだろうか。


『どのくらい時間が経ったのだろう。

 右手の腕時計は、ずっと同じ時間を指している。

 ここでは、時が止まっているらしい』


 本当だ。

 建物に入ってから、10分は経っているはずなのに、スマホの時刻表示が一切変わっていない。


「時計……最近してないな」


 俺は左手首をさすった。

 少し前に、奮発して買った時計。

 結局、面倒で付けなくなった。


「……ん?」


 その動作の途中で、違和感が引っかかった。

 俺が時計を左腕に付けるのは、右利きだからだ。


「SOSさんの腕時計って……」


 メッセージを読み返す。

 やはり、右手にはめている。

 ということは――


『SOSさんの利き手って、左なんですか?』


 続けて、打つ。


『案内板の位置、逆ですね』


 空間が波打つような感覚があった。

 下り階段の対角に、今までなかった階段が現れた。

 上へ伸びる、螺旋階段だ。


「……よし」


 当たりだ。


「次だな」


 俺は手すりを掴み、迷わず階段を踏み出した。

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