セフレ
読んで戴けたら倖せです。(o´▽`o)ノ
この作品は半年前に書いた物です。
身体から迸る若さと言う欲情は誰かを傷付けずにはいられないほどとても鋭利でそしてとても純粋だった。
海翔にとって風真はただのセフレに過ぎない。
孤立したゲイの彼らは巡り逢えたと云うことが奇跡だ。
彼らはお互いの情報は極力伝え合わなかった。
いつか離れるその時、後腐れが無いようにと。
それが愛の無いセックスを交わすルールだと信じていたから。
職場近くの公園で昼食を取っていた海翔は夏の空を見上げた。
気温が30℃を越え湿度の高い空気は湿り気を帯びて、肌に不快に絡み付いてくる。
汗ばむ首に湿った風が掠め、風真の愛撫を彷彿とさせる。
手を伸ばせば届いてしまいそうな低く白い雲が形を変えながら空に溶けるように消えて行く様を眺めた。
海翔は風真に逢いたいと思った。
風真にLINEした。
今日は逢ってくれるだろうか。
以前からそうだっただろうか。
よく憶えていない。
近頃風真は忙しいらしく、連絡を取ってもその日に逢えることがない。
訳も無く不安になる。
もしかしたらこのまま風真とはフェイドアウトするかもしれない。
身体だけの関係なのだから2年も経てば飽きて当然なのかもしれない。
そう思うとお互いで取り決めた互いの情報を交わさない約束が呪わしく思える。
セレクトショップに勤める海翔は自分に、この仕事は合っていないと言う自覚があった。
初めの頃にあった仕事への情熱はこの数年で完全に枯れていた。
だからと言ってこの職場を去って別の仕事に着く勇気も気力も無い。
個人売り上げはいつも最下位。
上司に嫌みを言われるのも日常茶飯事だった。
同僚の目はいつも冷笑が混じっている。
そして今日も仕事は終わり、スマホを開くが既読さえついていない。
帰路に着く。
家に帰ると両親は相変わらず揉めてるようだ。
玄関を開けた途端、罵声が聞こえる。
海翔は真っ直ぐ二階の自分の部屋に直行した。
殺風景な自室で扇風機を回してベッドに腰掛け、帰る途中で寄ったコンビニのおにぎりをパクつき大きな溜め息が出る。
総てが自分から背を向けている気がした。
何もかもが必要の無い自分を嘲笑っていると思える。
その内、おにぎりを食べる手も止まった。
生きているのが辛い。
そんな繰り言が最近では癖になっていた。
無心に泣けるならどんなにか楽だろう。
バイブルに気付いてスマホを見ると風真からだった。
「週末なら逢える」
少しだけ気持ちが和らいだ。
せめて感情の無い温もりだけでも得られたら何かを満たすことができるかもしれない。
海翔はスマホを握ったままベッドに倒れ込んだ。
週末、青海橋で2時に待ち合わせて2人は昼間からいつものラブホにしけこんだ。
部屋に入った途端、筋肉質な体格の風真は 見るからに華奢な海翔をお姫様抱っこしたので海翔は面喰らう。
「ちょっ!
もう? 」
風真は海翔をベッドにそっと降ろして言った。
「1ヶ月の禁欲生活でたまってるんだ」
「あ?
あれから誰ともしてないの? 」
「うん」
風真は海翔の首に口唇を這わせる。
「ちょっ、待ってよ
来る時汗かいたからオレはシャワー浴びたいよ」
風真の身体を押し退けてシャワールームへ行こうとする海翔の手首を掴んで引き戻す。
「そんなのいいよ、我慢できない」
屈託の無い顔でそう言う風真に海翔はイラつく。
「オレはダッチワイフじゃ無い!! 」
そう怒鳴ってシャワールームに入った。
無数の雫に打たれながら海翔は怒り浸透だった。
何かと負の感情をぶつける上司、離婚寸前の無関心をぶつける両親、性欲だけを不躾にぶつけて来るセフレ。
希望など期待できない現実にうんざりした。
八方塞がりでどう行動するべきか冷静に考える余裕など無い。
やりきれない感情だけが迸る。
目に入った安物のカミソリ。
前の客が置いて行った物を清掃員が回収し忘れたカミソリを手に怒りを破裂させた海翔はシャワールームを飛び出した。
ベッドに座る風真を前に、手首にカミソリを当てると思い切り引いた。
『オレなんか消えてしまえ!! 』
傷口から血が溢れて床に滴る。
それを目の当たりにした風真はみるみる青ざめて海翔に駆け寄った。
風真は海翔の手を掴み硬く握られた指をほどいてカミソリを取り上げるとできるだけ遠く思い切り投げた。
「何バカなことしてんだよ! 」
風真は周りを見渡して止血に役立つ物を探す。
期待できるものが見当たらず着ていたTシャツを脱いで、放心状態の海翔の手首に巻き付けきつく縛った。
「どうしてこんなこと!? 」
思考を取り戻した海翔は風真を睨み付け叫ぶ。
「さあ、やれよ
たまってるんだろ!? 」
「何言ってんだよ、バカ
それ処じゃないだろ!! 」
風真は海翔の肩を抱きゆっくりとベッドに誘導した。
「何かあったのか? 」
ベッドに座り俯く海翔の顔を覗き込んで風真は言った。
「オレでできる事あったら、何でもするよ」
海翔は顔を背け風真の視線から逃れようとした。
「オレが嫌になったの? 」
風真は不安げに言う。
海翔は暫く黙ったまま姿勢を崩さない。
ベッドについた風真の手が、きつくシーツを握るのが目の端から見えた。
「どうしてこんなこと.......
ただのセフレには話せない?」
あまりにも風真の言葉が優しくて、心が溶けて行く。
海翔の目から涙が溢れ出した。
その内嗚咽が止められなくて、風真にしがみつき声を上げて泣き出していた。
子供のように泣きじゃくる海翔の背中に手を回し風真は宥めるように海翔の背中を撫でた。
背中を撫でる風真の手はゆっくりと海翔の興奮を治めて行った。
泣くと云う行為は次第に気持ちを素直にさせる。
「オレ、もう駄目だ」
その言葉を皮切りに海翔の思いは溢れ出す。
「会社でも家でも、オレだけが孤立していて別の生き物にでもなったみたいだ
周りは動いているのに、オレだけが止まってる」
俯いていた海翔はそれに対してなんの応えもない風真の沈黙が恐くてゆっくりと顔をあげ風真を見た。
風真は微笑んでいた。
海翔の怒りが振り返す。
「何故、笑う? 」
海翔は不快感を風真にぶつける。
「オレが弱ってるのは、そんなに楽しいかよ! 」
風真は慌てて微笑みを消して弁解する。
「違う違う!」
海翔は興奮して言った。
「何が違うんだよ、今嘲笑ってたろ! 」
風真は焦って言葉を繋いだ。
「バカにしてない、嬉しかっただけ」
「嬉しい?
オレがひどい目に遇うのがそんなに嬉しいのかよ! 」
「違うって!!
落ち着いて聞けよ! 」
風真は続けた。
「嬉しかったのは海翔が初めてオレに本音を言ってくれたから
オレが聞くから、抱えてる不満全部吐き出しなよ」
その言葉に海翔は感情が和らぐのを感じた。
風真ってこんな奴だっけ?
困惑する海翔に風真は言葉を続ける。
「もうさ、オレたち2年もセフレやってるじゃん
そろそろバージョンアップしてもいいんじゃない? 」
「バージョンアップ? 」
海翔は目を丸くする。
風真は声を出さず口唇を動かす。
「こ・い・び・と」
と読み取れる。
「もう随分前から、オレはそうゆう気持ちだった
海翔もそうだろ?
だってオレ、そう伝わるように海翔を抱いてた」
海翔の身体中を過去に感じた風真の愛撫の感触が優しく這い回る。
風真とのセックスに満たされていたのは、その愛撫が本気だったから。
海翔も気付いていた。
風真の何かを伝えようとする深い愛撫。
「さっきはごめん、海翔に逢えたのが1ヶ月振りだったから嬉しくて待ちきれなかった」
海翔の瞳に不安げな風真の笑みが映る。
海翔は思う。
ああ、そうだ..........。
風真はいつも本気だった。
海翔の胸に温かな何かが広がり、気付けば海翔は自然と笑みが溢れていた。
風真の胸に頭を垂れて海翔は目を閉じる。
風真はTシャツに巻かれた手に口付ける。
「とにかく病院行ってそのキズどうにかしなくちゃ」
.........ああ、そうだ.......。
風真が居てくれるならもう少し頑張れる。
一瞬身体を離した風真は全裸の海翔に毛布を掛け海翔の身体を抱き寄せる。
海翔の目から、別の意味の涙が零れた。
風真はその涙を指先で拭った。
海翔は風真の優しい表情に安堵する。
ひとつの救いがあれば、オレは生きて行ける。
そう......思えた..........。
fin
読んで下さり有り難うございます。<(_ _*)>
なんと❗
昨年は小説は夏に書いたホラー作品一本だけ。
めちゃインターバルが空いて小説の書き方忘れてしまい、この作品はウォーミングアップに書きました。
なんの捻りも無くのほほんと書いた作品なので、お気軽に読んで戴けるんじゃないかと思います。
なろう活動を始めて8年目。
1年近いインターバルは破滅的に小説の書き方を解らなくしました。。゜(゜´Д`゜)゜。
やれやれ、書いて行けば戻りますかね。笑




