表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冷血貴族の婚約拒絶録 ~オレは絶対に、結婚などしない~  作者: 小鈴危一
二章 聖女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/88

――――第39話――――

 そして、顕覧会の日がやって来た。

 王都大聖堂。その荘厳な佇まいを正面に捉える前庭には、多くの人が集っていた。

 快晴の空の下、軽食の載ったテーブルが並ぶ合間で、皆めいめいに談笑を交わしている。

 その全員が、高貴な身分にある者たちだった。


「おや、これは珍しい。かのロドガルド辺境伯がこのような場に顔を見せるとは」

「噂は耳にしておりますよ、ゼノル卿。まさか、あの聖女様を伴侶に選ばれるとは」

「シルラナ殿下との縁談を蹴られてまで教団と距離を縮めるとは、いささか驚きました。ここだけの話……何かあったのではありませんかな?」


 情報や伝手目当てに言い寄ってくる下級貴族たちを、ゼノルは適当にあしらっていく。

 会場を見回すも、ロドガルド家と関係が近い家の関係者は来ていない。ほとんど関わりがないか、もしくは敵対関係にある貴族ばかりだった。明らかに、招待客が選ばれている。

 ゼノルにとっては、完全な敵地も同然だ。


「……」


 ゼノルは、無言で空を振り仰ぐ。

 大聖堂の上空には――――鋼の竜が、悠然と飛行していた。



◆◆◆



「あ、あなたは……!」


 客人の姿を見たスウェルスが、驚いたように目を見開く。

 そこに立っていたのは――――上級神官のダグライだった。

 スウェルスは混乱したように、ゼノルに言い募る。


「ゼノル様、これはいったいどういうことですか? なぜ顕覧会に向けた作戦会議に、ダグライ殿が同席を?」


 名を呼ばれたダグライは応接室に入室すると、混乱するスウェルスを見て、次にテーブルの上の謎の機械と小汚い白衣姿のトレヴァーを見て、眉をひそめて口を開く。


「私は、ゼノル卿に呼ばれて参りましたが……これは今、どういう状況なのでしょうか?」

「騒がしくてすまないな、ダグライ殿」


 ゼノルが口の端を吊り上げて答える。


「まずは気にせずかけてくれ。トレヴァー、調整が済んだならどいていろ」


 困惑気味に、ダグライは応接室の椅子に腰掛ける。

 同様に、ゼノルも長椅子に座った。

 二人の間にあるテーブルには、車輪状の謎の機械が置いてあって明らかに邪魔だったが、ゼノルは気にせず口火を切る。


「先ほどスウェルスがちらと言っていたが、今日設けたのは顕覧会の当日、オレがいかにしてラニスとの婚約を破棄するか、その作戦について話し合う場だ」


 聞いたダグライは、わずかに視線を鋭くする。


「……。それならば、私がいては問題があるように思われますが」

「いいや。逆だ」


 ゼノルが不敵に笑って言う。


「顕覧会での婚約破棄は、貴様らにとっても望ましいものとなる。互いの目的を果たすため、協力し合えると思ったから呼んだのだ。教団とロドガルドとで、わざわざいがみ合う必要などない。手を取り合おうではないか」

「……まるで、我々の目的がわかっているかのようにおっしゃいますな」

「無論だ。その程度の推理、オレには造作もない」

「仮に、その推理が正しかったとして……我々が卿の手を取るメリットはあるのでしょうか」


 ダグライが冷徹に言う。


「ラニス様とゼノル卿の婚姻が成れば、我々としては望みが果たせます。それがまず叶うであろうこの状況下で、わざわざ卿におもねる必要性が見当たりませんが」

「ふっ。すでに望みを果たした気分でいるとは、オレも甘く見られたものだ。さすがに気が早いと言っておこう。それにだ。仮に今回の縁談が強行された場合、今後、オレの教団への態度はそれなりのものとなる。それでも最悪な状況を回避できるならという考えのもと、今回の策に踏み切ったのだろうが……ここは再来年には大教会が建つ地だ。その領主と良好な関係を保てるのならば、保っておきたいのではないか?」

「……たしかに」


 ダグライが目を閉じて言う。


「おっしゃるとおりです。我々は決して、卿と敵対したいわけではございません。最初の訪問でラニス様との婚姻を快く受け入れてくださることが、一番望ましい形でした」


 ダグライが視線を上げて問う。


「一つお聞かせください。本日、私一人を呼ばれたのは……ゼノル卿の協力できる相手が、あくまで教団だからということでしょうか。ラニス様と利害を一致させられる見込みはない……と?」

「ふっ……やはりあの女の目的は、貴様らとは別のところにあるようだな」


 ゼノルは不敵に答える。


「奴とも協力できんことはない。だが……事情を考えると、教団よりもあの女の方が必死であろうからな」

「……!」

「まだオレが大きく不利なこの状況下では、交渉にならんと思っただけだ。話し合いの成立しそうな相手を呼んだにすぎん」

「……そう、でしたか」


 ダグライは静かにそう呟くと、ゼノルに正面から告げる。


「それでは、ぜひ聞かせていただきたく存じます」

「ふっ」


 ゼノルは軽く笑う。


「ならばまずは、ことの起こりから整理していこうではないか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ