紫苑の秘密
次の日も遼平は連といっしょに下校し、遼平のアパートで長い時間を過ごした。暗くなり、いったん家に帰った連は泊まる準備をして、またアパートにやってきた。そうして土日の二日間、語り合った。
話題のほとんどが美菜のことだった。
遼平はアルカディアから始まる美菜と遼平の物語をすべて、連に話した。
ナポリタンの奇跡、観覧車、コウノトリさんの話には声を上げて笑ってくれた。
ミートソース事件、強姦未遂事件の件では、心配そうに遼平の顔を見上げながら聞いていた。そして、動けない美菜を抱いて風呂に入れ、その後結ばれた話をすると、連は遼平に抱きついて、涙を流しながら言った。
「よかったね。ほんとによかったね。それに母さんを助けてくれてありがとう」
「うん、そこまではよかったんだけど、次の日、角刈りに襲われたからね。ミーナさんを守れなかった」
「母さん、どうなったのかな。生きてるよね」
「うん、生きてて欲しい。だけど俺が死んじゃったからね。ミーナさん、悲しんでるだろうな」
遼平を失った美菜がどれほど悲しんでいるか。それを思うと胸が締め付けられる。こうして元気に過ごしていること伝えたかった。
「マスターの伯母さんが言ってくれたんだ。俺とミーナさんが出会えたのは奇跡だけど、これからは運命だって。必ず出会える。パラレルワールドでも来世でも、必ず出会えるって」
「うん、そうだね」
「俺はいい、こっちのミーナさんに出会えたから。だけど、ミーナさんは……。俺がいなくなるとどうなるんだろう」
「うん、心配だね」
遼平は連を見た。自分と同じようにひとりになった美菜を心から心配してくれている。そのことが無性に嬉しかった。
「もしかして、遼平さんかなあ」
「遼平さん?」
「あ、そうか。遼平さんの説明しないと」
遼平はVRの夢の中での遼平と美菜の話をした。
意識不明者のVR治療の夢の中で、遼平が美菜と交わったこと。30年間美菜を想い続けた遼平に感動して、美菜の方から望んで結ばれたこと。遼平に頼まれ、16歳の遼平を救うために、美菜が遼平に会いに来てくれたことを。
「VR、30年間……、もしかして……」
連が考え込んでいる。
「もしかして、その遼平さんって、適合率82%の人?」
「え、なんでそれを知ってるの」
「やっぱりそうなんだ。そのミーナは僕の母さんなんだ。そうか相手の人は遼君だったんだ」
「うん、30年後の俺……、え? ということは連君も30年後の人? 連君、今何歳なの」
「連は15歳だよ。中身の紫苑のことだよね。紫苑は30歳」
「30歳、大人なんだ」
「うん、でも訳あって、周りの人とほとんど接触なかったんで、精神的には高校生くらいかな。遼君と話しててちょうどいい感じ」
「そうなんだ。それで、ミーナさんは目覚めたの?」
「だめだった。でも指が動いたんだよ。僕の手を握り返してくれた。だけど、それだけだった」
「そう」
「でもね、遼平さんは目覚めたんだよね」
「うん、そう聞いてる」
「母さんもね、もう少しだと思ったんだ。だからもう一度遼平さんと繋いで欲しいって頼んだんだよ。もちろんその時は、遼平さんだとはわかっていなかったけど」
「うん、それも聞いてる」
「でも、だめだった。母さん、目覚めてくれなくて……、だから、僕が助けようと思って、VRに繋いでもらったんだ」
「そうなんだ。それで?」
「母さんには会えなかった。目覚めたら島崎連になっていた」
「ふーん、不思議だね。それもVRが原因なのかな」
「たぶん。そして、今もVRの夢の中にいるんじゃないかって思ってる」
「……」
それを聞いて遼平は、美菜も自分が48歳の美菜の夢の中の存在ではないかと疑っていたことを思い出した。夢から覚め、遼平やあかりと引き離されることをひどく怖れていた。
「だとしたら、俺は連君の夢の中の存在? 連君が作り出した架空の存在?」
「うん、そうじゃないかって疑ってる。だってあまりにも都合が良過ぎない。あんなに会いたがっていた母さんに会えた。遠くから見てるだけだったけど。本当は遼君みたいに抱きつきたかったけど、『母さーん』って」
「いや、それは」
「それにね。遼君に会えた」
「……」
「衝撃だった。こんなかわいい人がいるのかって。一目惚れだった」
「でも、男同士じゃ結ばれない」
「そんな…体の結びつきより、心が欲しかった。ああ、違う、そんなこと考えてなかった。僕はただ、僕という人間がいることを遼君に知ってもらいたかっただけなんだ」
「連君……」
「あのね、遼君。実は僕、アルビノという病気なんだ。紫苑の方」
「アルビノ?」
「生まれつきメラニンという色素がほとんどないんだ。だから日光に当たると火傷みたいになっちゃうし、皮膚がんになる恐れがあるんだ」
「じゃあ、外に出られないの?」
「うん、日中に外に出たことない。だから小学校も中学校も行ったことない。高校は夜間高校に行ってた。でも日が落ちてから行くから、いつも遅刻」
「そうなんだ。なんだか可哀そう」
「でも、それなりに充実してたよ。ゲームしたり、本を読んだり、映画を見たりして。母さんのアイドル時代のビデオなんか、それこそ何百回見たかわかんない。なにより大好きな母さんがそばにいた」
そう言って涙を滲ませる連の顔を見たとき、遼平は心が連と繋がった気がした。
眠り続ける美菜のそばで30年という月日を過ごした連の、紫苑の心が遼平の心に流れ込んできた。
なんと甘美な、そしてなんと悲しい光景だろうか。
「遼君」
「ん、何」
涙声で遼平は答えた。
「母さん、きれいだよね」
「うん、世界一きれいだ」
「世界一かあ。そうだよね。僕、母さんが好きで好きでたまらなかった。母さんの顔を見てるだけで幸せになれた。でもね、でも母さんは僕を知らないんだ。意識不明のまま僕を産んだからね。僕の存在さえ知らないんだ。母さんにとって僕は幻なんだ。そう思うと悲しくて悲しくてたまらない」
「うん、うん。そうだね」
嗚咽を噛み殺しながら遼平は答えた。その時、自分が連に惹かれている理由を理解した。
連の外見に惹かれたんじゃない。紫苑の孤独な魂が、美菜と出会う前の遼平の心と響きあっているんだ。そして二人の間に美菜がいる。
「でもね、遼君に会えた。好きになった。母さん以外にこんな気持ちになったの初めてだった。そして、遼君が僕に笑いかけてくれた。僕は幻なんかじゃない。ここに確かにいるんだって思わせてくれた。だから、遼君には感謝してる」
「紫苑君……やっぱり紫苑君って呼ぶね」
「え? うん、いいよ。そのほうが嬉しいかも」
「俺は……俺も」
遼平は一瞬躊躇したあと続けた。
「紫苑君が好きだ。ずっと一緒にいたいと思ってる。だけど、ミーナさんも好きなんだ。ミーナさんを諦めるなんてできない。ミーナさんを助けなきゃいけない」
「うん、そうだね。母さん、ひどい目に遭ったからね」
「紫苑君、知ってるの?」
「知ってる。母さんの日記、読んだから」
「ミーナさんの日記……なんと書いてあったの」
「詳しいことは何も。ただ一言、祐美に失恋した。菊井に強姦されたって。菊井って、高校の先生だよね」
「うん、名まえは初めて聞いたけど」
「母さんを救えるのは遼君しかいないと思う。だから、遠慮なく母さんにアタックして恋人になって欲しい。僕とはときどき会って話をしてくれるだけでいいから。僕が勝手に片想いしてればいいから」
「遅いよ。もう好きになっちゃった。今、紫苑君を抱きしめてキスしたい。でも、ミーナさんを裏切ってるような気がして、必死で我慢してる」
苦しかった。紫苑の心の内を知れば知るほど紫苑に惹かれてしまう。美菜を想う気持ちと匹敵してしまう。
それ以上何も言えなかった。何かを口にしたり、紫苑が遼平を気遣うような言葉を言ったりしたら、衝動的に紫苑を抱きしめてしまうような気がしていた。
数分後、紫苑が沈黙を破った。
「好きな人って、一人じゃないとだめなのかな」
唐突な気がした。頭の中が真っ白になった。
「いや、それはだめでしょ」
「そうかなあ。たとえお付き合いしてても、ほかに好きな人ができることって結構あるような気がするんだけど」
「好きになったとしても、行動に起こしたらそれは裏切りだよ。いや、好きになった時点で心が裏切っている」
言いながら、自分の言葉が心に刺さった。自分は行動に起こしてしまっている。
「うん、パートナーに隠れてこそこそやるのはだめだけど、関係者全員が納得してたらどう」
「どういうこと」
「例えば、遼君は母さんと僕が好き、僕は遼君と母さんが好き、もし、母さんが遼君と僕を好きになれば問題ないんじゃない?」
目の前が急に明るくなった気がした。だけど……
「だけど、紫苑君のミーナさんへの気持ちって、母親への愛情じゃないの?」
「違う。僕にとっての母親は、住み込みのお手伝いさんの雪さん。雪さんが、僕を生まれた時から育ててくれた。母さんは理想の女性」
「紫苑君……ミーナさんとエッチしたいの?」
紫苑はすぐには答えなかった。言葉をさがしているように見えた。
「遼君、僕は五歳の頃から母さんの介護をしてるんだ」
「あ、うん」
「介護ってどんなことをやるかわかる?」
「そうか。下の世話?」
「そう、それに毎日体を拭いてた。母さんを裸にして濡れタオルで全身を拭くんだ」
「はだか……」
動けない美菜を抱いて風呂に入った場面が鮮やかに蘇った。素手で美菜の全身を洗った感触も覚えている。美菜のことが最も愛しく思えた瞬間だった。
同じ想いを紫苑も美菜に対して持っていたのだろうか。
「遼君も母さんの裸、見たんだよね」
「うん、凄くきれいだった。特におっぱいと脚」
「そうだよね。僕も大好きだった。母さんのおっぱいと脚。だから、母さんの体拭くのがすごく楽しみだった」
こんなこと恥ずかしくて誰にも言えないのに、紫苑に対しては何の抵抗もなく言える。そのことが嬉しかった。
「あのね、遼君。ちょっと恥ずかしいんだけど、遼君に秘密を持ちたくないんで思い切って言うね。僕のこと軽蔑しないでね」
「紫苑君を軽蔑するなんて絶対ないよ」
「僕、五歳から母さんの介護をやっていたって言ったでしょう」
「うん」
「10歳頃までは雪さんがメインでやってて、僕はお手伝いって感じだったんだけど、その後は僕ひとりでやってたんだ」
「そう」
「それでね、八歳くらいの時だったと思うんだけど、僕、母さんのおっぱいを吸っちゃったんだ。雪さんの目の前で」
「ええっ、そうなの?」
「うん、あんまりよく覚えてないんだけど、我慢できなかったんだと思う。でも、その後雪さんに言われた言葉ははっきり覚えてる」
「何」
「うん、坊ちゃんは、あ、雪さんは僕のこと、坊ちゃんって呼ぶのね。坊ちゃんはお母様のおっぱいをもらえてないから仕方がないですね。でも脚の付け根を素手で触ってはいけません。それから交尾は絶対だめですって言われた」
「交尾!」
「雪さん、昔の人だから、セックスなんて言葉、使えなかったんだと思う」
「それで、紫苑君どうしたの」
「もちろん、そんなことしてない。というか、交尾の意味も知らなかったし、たとえ知っていたとしても、八歳だからね、そんなこと思ってもいない」
「ああ、そうだね」
「問題なのは思春期。それはもうセックスしたくてたまらなかった」
「交尾したかったんだ」
「あはは、その言葉やめて。生々しすぎる。だってあんなにきれいな人が目の前に裸でいるんだよ。それにその頃も毎日おっぱい吸ってたし」
「毎日! うらやましい」
「うん、だけど地獄だった。やりたくてたまらないし、やろうと思えばいつでもできた。雪さん、夜中は絶対部屋に来なかったから。でも必死で耐えた」
「それは……母親だから?」
「うーん、どうだろう。さっきも言ったけど、母親は雪さんだと思ってる。母さんは母さんと呼んでるけど、僕にとっては理想の女性なんだ。たぶん眠っている大好きな人を犯すことに抵抗があったんだと思う」
「だったら、もしミーナさんが目覚めて、いいよって言ったら?」
「エッチを?」
「うん、交尾」
「遼君、その言葉、気に入ったみたいだね」
紫苑は少し考えて言った。
「そりゃ母さんがいいと言ってくれたら……、ずっと望んでいたことだから喜んですると思う。でも、母さん、そんなこと言うかな。どう思う」
「うーん」
遼平は思った。美菜だったらいいと言うかもしれない。30年間美菜のことを想い続けた遼平に絆された美菜だったら。紫苑も物心ついてから25年ほど美菜に恋焦がれている。美菜が紫苑を受け入れるかもしれない。
そう思ったとき、遼平は、自分が美菜と紫苑が結ばれることを願っていることに気づいた。
一瞬戸惑ったが、すぐに思い返した。
三人がそれぞれと愛し合い、結ばれれば、自分が今、美菜を裏切っているという思いから解放される。
さらには、大好きな美菜と紫苑とともに、これからの人生を歩いて行けると思うと、未来が明るく開けていくような思いがした。
「うん、きっと大丈夫」
遼平は言い切った。
「本当? 僕は全然自信ないんだけど」
「もちろん簡単じゃない。まずは俺がミーナさんの恋人にならなきゃ。大変だけど、自分のためでもあるし、紫苑君のためと思えばがんばれる」
「遼君……ありがとう。でも、それから? 僕が母さんの子どもだって言うの?」
「言うよ。ミーナさんに秘密は持ちたくないから。というより、それがポイントになりそうな気がするんだ。紫苑君が物心ついてから25年間、ミーナさんを想っていたということが」
「なんで」
「遼平さんも、テレビで見ただけのミーナさんを30年間想い続けたんだ。それがきっかけで遼平さんを好きになって俺に会いに来てくれたんだ。だから、ミーナさんが紫苑君を好きになるためには、それは言わなきゃいけない」
「そうなんだ」
それから、紫苑が続けて言った。
「だけど、たとえ母さんが僕のことを好きになっても、エッチしようと思うかな。親子の交尾はタブーだよね」
「普通はそうだけど、ミーナさんと紫苑君は親子という感覚が薄いよね」
「そうだね。母さんは僕の存在さえ知らないし」
「それに、ミーナさんは世間の常識をあまり重視してない気がする」
「常識がないってこと?」
「ちょっと違う。なんと言えばいいのか、タブーをあまり気にしないというか」
「例えば?」
「例えば、俺に女装させたり」
「ああそうか。遼君、それまでは女装しなかったの?」
「してないよ。幼稚園までは母親が女の子の服を着せたりとかしたこともあったけど、小学校からは一度もしてない。そんなの変態だと思ってた」
「えー、もったいない。こんなにかわいいのに」
「そう言われるのが嫌だったんだ。かわいいはまだしも、女みたいとかおかまとか言われていじめられてた」
「そうなんだ。ひどいね」
「だから前髪伸ばして目を隠してた。人と話すときも下を向いて、顔を見られないようにしてた」
「それで、母さんはどうやって遼君に女装させたの」
「それがね、俺、ミーナさんのパンツ見ちゃったんだよね」
「えー、どういう状況」
「俺たち、アルカディアという喫茶店でバイトしてたんだ」
「うん、それは聞いた」
「そこのウエイトレスの制服、かなりのミニスカートで、当然ミーナさんはそれを着ていたわけ。俺は男の制服でズボン穿いてたんだけど」
「うんうん」
「ある日ミーナさんがテーブルの下のごみを拾おうとして前かがみになったのね。たまたま俺がミーナさんの真後ろにいて、もろに見えちゃった」
「えー、うらやましい!」
「何言ってんの。紫苑君なんか毎日ミーナさんの裸見て、おっぱい吸ってたんでしょう。そっちのほうがうらやましいよ」
「いや、思春期の頃は毎日吸ってたけど、20歳過ぎたらたまにだよ」
「たまになの?」
「えっと、ごめんなさい。ときどきかな。やっぱり眠っている人にこんなことするのは悪いかなっていう気もしてたから。でも寂しくて我慢できないときはやってた。そうすることで母さんと繋がってる気もしてたから」
「うん、しょうがないよ。俺も紫苑君の立場だったら同じことしてたと思う」
「それで、母さんのパンツと女装はどう繋がるの」
「それがね、俺ミーナさんのパンツに目が釘付けになってて、じっと見てたのね。そしたらミーナさんがいきなり振り向いたんだ」
「うわ」
「でも、ミーナさんは怒ったり慌てたりせずに俺にお願いがあるって言うんだ」
「うん」
「俺、焦っちゃって、何でもやるって言っちゃったんだ」
「それで女装?」
「うん、無理やりウエイトレスの制服着せられて、髪も整えられて目を出されちゃった」
「うわあ、見たかったな。遼君のウエイトレス姿。それで、どうだった」
「うん、最初は嫌だったんだけど。鏡の前に連れていかれて、自分の姿見たらびっくりしちゃって」
「どうして」
「いや、あんまりかわいかったから。自分で言うのもなんだけど。え、これがあたしって感じだった」
「そうでしょう。こんなにかわいい人、初めて会ったもの。まあ、僕はあまり人に会ってないけど」
「それでね、なんか自信ついちゃって、喫茶店の仕事も、それまでは失敗ばっかりしてたのが、全然失敗しなくなったんだ。転んだりはしたけど」
「ナポリタンの奇跡だね。それも見たかったなあ」
「うん、それでもちょっと抵抗もあったんだ。それで、ミーナさんに言ったんだ。男が女装するのは変態じゃないかって」
「母さん、何と言ったの」
「世の中の人はそう思うかもしれない。でも本人が充実して、生き生きできるなら何が問題なんだろう。遼ちゃんの可愛さ、美しさに心癒されている人が絶対いる。私がそうだから断言できるって」
紫苑はしばらく何も言わずに、遼平の言葉を噛みしめている様子だった。
「ほんとにそうだね。母さん、素敵だ。それに、遼君と母さんの絆がその言葉に集約されてる気がする」
「ありがとう。嬉しいよ。だからね、ミーナさんは世間の常識とかタブーとかにあまり囚われない気がする。第一ミーナさん自身がレズなんだし、それを身近な人には話してるくらいだから」
「そうなんだ。じゃあ期待してていいのかな」
「うん、だけど焦らないで。俺みたいに焦って失敗すると何にもならない」
「そうだよ。まずは遼君が母さんの恋人にならないと。でもどうするの」
「祐美さんが俺のことを応援するって言ってくれてる。ミーナさんを説得してくるそうだから、それに期待して待つしかないと思う」
そうだ、めげてなんていられない。紫苑のためにも、自分のためにも、そして美菜のためにもがんばらないといけない。