遼平の魅力
ほぼ同時に四人が正門に揃い、いっしょに正門を出た。
遼平と紫苑が前、美菜と祐美が後ろを歩いた。
祐美が「ミーナと紫苑君入れ替わって」と言うので、美菜は遼平と並んで前を歩いた。
美菜が遼平と手を繋ぐと
「こらこら、手なんか繋ぐんじゃない」すかさず祐美に言われた。
「いいじゃない。遼君、どう見ても女の子なんだし」と美菜。
「まだ知ってる顔がちらほらいるから、もうちょっと我慢しなさい。アパートに着けば出し入れだろうが…」
「わー! 祐美、もうそれやめて」
祐美の言葉を遮った。ほんとにもうやめて欲しい。
「遼君、もう入れっぱなしはやめようね」
遼平の耳元で小声で言った。
「えー、俺、入れっぱなしが気にいっちゃったんですけど」
「あ、こら。声が大きい」
紫苑がくすりと笑った。
「嬉しそうだね。ふたりに嫉妬したりしないの」
祐美が言った。
「そんな感情は全くないです。母さんが幸せそうでほんとに嬉しいです」
「遼君のことも好きなんだよね」と祐美。
「はい、大好きです。でもどっちみち男同士だし、結ばれませんから」
「だったら遼君が女の子だったら?」と祐美。ちょっとしつこい。
「女の子だったら……そうですね、襲っちゃってたかもしれません」
「え!」思わず声が出てしまった。
「聞いてください。遼君ったら、僕の目の前で着替えたりするんですよ。遼君のブラとパンティだけの姿が目に焼き付いてしまって離れないんです」
「まあ」
山小屋でのパンティ一枚の遼平の姿を思い出していた。かわいすぎて呼吸するのも忘れるくらい見入ってしまっていた。
「それに、知ってます? 遼君、制服以外はミニスカートしか持ってないんですよ」
「はあ? そうなの?」
祐美が驚いている。
「私、前に聞いてた。私も驚いた」と美菜。
「別に、凄く似合ってるし、めっちゃかわいいんでいいですけど。困るのは時々パンツ見えてるんです」
「まあ、ミニスカートだからそういうこともあるだろうけど、どんな時」と祐美。
「畳に横座りしてるときとか、脚の間に白いものがちらちらしていて目のやり場に困るんです。それにアパートの階段を登るときも。遼君が先に登るんですぐ目の前に……」
これ以上言えないとばかりに言葉を切った。
「遼君!」
祐美と美菜が同時に声を上げた。
「は、はい」
祐美が『どうぞ』と、目で合図を送ってきたので美菜が続けた。
「ミニスカートだからそりゃ見えちゃうってことはあるけど、極力見えないように努力するの。階段登るときなんか、普段より姿勢よくしてないと。ちょっとでも前かがみになると後ろから丸見えよ」
「はい。気をつけてるんですけど、紫苑君とは男同士だから別にいいかなって。それに喜んでくれるかなって」
「じゃあ、わざと見せてたの」と祐美。
「違います。違います。わざとだなんて。見えてもいいかなくらいの気持ちだったんです」
ふーっとため息をついて祐美が続けた。
「なんだかなあ。遼君、女の恰好してるから中身まで女のいやらしさが身についちゃったのかな。それって気になる男を落とすために女がよく使う手よ」
「祐美、大っ嫌いだもんね。そういうの」
「そうよ。色仕掛けで男を落とすなんて最低よ。そんなのにほいほい引っかかる男も最低だよ」
「ごめんなさい。気をつけます」
遼平がしょげている。なんだか可哀そうになってきた。
「私もね、遼君が大好きなんだ。純粋で真っすぐで見てて気持ちがいいのよ」
祐美も同じ気持ちだったようでフォローに入っている。さすが祐美。
「おまけにかわいいし、脚も恰好いいからミニスカート穿いても別にいいと思う。だけどパンツはだめ。パンツ見せてもいいのはミーナだけ」
最後はいらないような気もするけど祐美の言う通りだ。
「あのー、祐美さんやミーナさんも女の人にパンツや裸を見せたりしないんですか」
遼平がおずおずと尋ねた。
「え? そりゃ女同士だから……そうか、遼君と紫苑君も男同士か」
「はい、だから別にいいかなって」
「うーん、だめだめ。遼君、見た目完璧な美少女だもの。実際、紫苑君困ってるし」
「半分くらい喜んでましたけど……」と紫苑。
祐美が余計なこと言うなとばかりに紫苑を睨んだ。
「あ、ごめんなさい」
「うーん、だったら女にパンツ見せても問題ないのかな」
困ったように祐美が言った。
「だめ、絶対だめ」
力を込めて美菜が言った。
「そうだよね。裸なんて論外だし……、遼君、着替えとかトイレとかどうしてる」
「着替えは進路指導室でやってます。トイレは職員用の女子トイレで」
「そっかあ、やっぱり遼君は特別なんだよ。トランスジェンダーは男にも女にもパンツ見せちゃだめ。はい、反論ある人」
誰も何も言わない。
「ということで決定。いい? 遼君」
「わかりました。気をつけます」




