祐美の不安
昼休み、いつものように祐美といっしょに中庭に行くと、既に遼平が待っていた。
美菜に気づいた遼平が立ち上がり「ミーナさーん」と叫んで駆け寄ってくる。
美菜も「りょうくん」と叫んで駆け寄った。そしてひしと抱き合った。
「あーあ」呆れ声で祐美が言う。
「キスはだめだぞ。噂が学校中に広まってしまう」
「しないよ。したいけど」美菜は言った。
「昨日散々やったんでしょ。もう離れて離れて。くっついてるとエッチが始まりそうで怖い」
そう言って、祐美が二人を引き離した。
「遼君おめでとう。想いを遂げたね」
「ありがとうございます! 祐美さんのお陰です」
「で、どうだった。ミーナのおっぱい、美味しかった?」
「な!」
美菜は慌てて遼平を止めようとしたが、一足早く遼平が答えてしまった。
「はい、とっても美味しかったです」
「遼君……」美菜は恥ずかしさのあまり両手で顔を覆った。
「あれ、祐美さんには全部話してるんじゃないんですか」
「エッチしたことは言ったけど、細かいことは話してないから」
「あれー、えっと……夢でも見ちゃったのかな」
「とぼけなくていいよ。エッチしたのならそんなの普通のことだから」
祐美が言った。さらに
「それでね、遼君。ミーナがね、遼君のアパートでいっしょに暮らすって言ってるんだけど、どう思う」
「え、ほんとですか、ミーナさん」
「うん、そうしようと思ってる。だめ?」
「だめなんてそんな。大歓迎です。うわ、やった」
やっぱり手放しで喜んでいる。祐美を見ると『ほらね』という顔をしている。
「でもね、祐美が賛成してくれないのよ」
「え、どうしてです。応援するって言ってくれたのに」
「いや、二人が付き合うのは大賛成なのよ。ただ同棲となると、なんだか不安なんだよね」
そう言われてもピンとこないような顔をする遼平。
「祐美は心配してくれてるの。私たちがお互いに夢中になりすぎて、危険が迫ってるのに気づかないんじゃないかって。私もよくわからないんだけど」
「私もね、漠然とした不安だけで、なにがどうだめなのかわかってないんだけどね」
と祐美、続けて
「ひとつだけはっきりしてるのは、同棲してることを先生や生徒に知られるとまずいってことかな」
そうか。確かにそれはまずいかも。
「退学になる?」美菜が言った。
「それか、呼び出しを受けてやめるよう説得されるか。それでも従わないと退学かなあ」
そんなこと少し考えればわかることだった。それに気づかないということは、それくらい遼平に夢中になっていたということか。
「どうしよう」と美菜。
「どうしようって、同棲をやめるつもりはないんでしょう」と祐美。
「うん、ばれないようにするにはどうしたらいいかな」
「そうね」
そう言って祐美は少し考えた。
「まず、登下校いっしょというのはだめかな。それから、ミーナが制服で遼君のアパートに出入りするというのも避けた方がいいと思う」
「つまり、一旦私の家に寄って着替えてから遼君のアパートに行けってことね」
「うん、朝もね。でもそうすると通学に倍くらい時間かかっちゃうかな」
「大丈夫、近道がある」と美菜。
「近道?」
「ほら、遼君のアパートの横の路地」
遼平の方を見て美菜が言った。
「ああ、あのほそーい路地」と遼平。
二人並んでは歩けないほど細い路地。人とすれ違う時は体を斜めにしなければならない。
その路地が美菜の家の近くに繋がっている。大通りを行けば20分ほどかかるが、その路地を行けば10分くらいで行ける。
「昨日その道を帰ったの。人通りほとんどないから生徒には会わないと思う」
「じゃ、そういうことで。くれぐれも気をつけて。ミーナはどのみち赤ちゃんができたら辞めるつもりなんだろうけど、遼君が被害受けるからね」
「うん、わかった」
「それから学校でいちゃいちゃしないこと。遼君が男の子だってことは学校中に知れ渡ってるからね。抱き合うのも禁止」
「えー、そんなあ」つい情けない声が出た。
「そんな顔しないの。その代わりアパートに帰れば、出し入れだろうが入れっぱなしだろうが好きにしていいから」
「いやー、祐美。そんな言い方しないで」
「自分で言ったんじゃない」
「そうだけど……違う、入れっぱなしなんて言ってない」
思わず言ったその言葉がとんでもなく卑猥に響いた。顔が火照ってきた。
「あのー、出し入れって何ですか」
あどけない顔で遼平が言う。こんなかわいい顔して、セックスの時は一人前の男になって美菜を責め立てる。昨日の出来事が夢だったのではないかと思ってしまう。
「エッチのこと。説明は後でするから」
「エッチ? 出し入れ? うわ」
気づいたようで遼平も赤くなっている。かわいい。抱きしめたいけど我慢。




