表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

プロローグ

 目が覚めると、見知らぬ部屋にいた。ベッドがあり、机や本棚、ファンシーケースがある。ごく普通の勉強部屋。机の上は散らかっており、床にはマンガ本やごみくずが散らばっている。自分の部屋ではないという確信があった。

 外から「レン、起きなー」という豪快な女の人の声がした。パジャマのままドアを開けて階段を降りて行くと、その声にぴったりの体格のよい女の人がいた。

 どうしたらいいかわからず、リビングの入り口に佇んていると、

「どうした、具合でも悪いのか」と聞かれた。

 黙っていると、「頭痛いのか」「腹が痛いのか」「なんか悪いもの喰ったか」と、マシンガンのように尋ねてくる。

「あなたはだれですか」と言うと、マシンガンが止まった。

「ここはどこなんですか」「僕はだれなんですか」と畳みかけると、彼女は慌てだして電話をかけまくった。服を着替えさせられ、タクシーに乗せられ、病院に連れていかれた。そこで診察を受け、様々な検査を受けたあと、もっと大きな病院に拉致され、再び検査、検査。

 その結果つけられた病名が『解離性健忘』つまり記憶喪失だった。

 そんなもん、最初からわかっとるわいと突っ込みたくなったが、隣にいる豪傑女に殴られそうな気がしたので、神妙に承った。

 夕方家に帰ると父親らしき人物に迎えられた。意外にも細身で高身長のいい男。その男から「頭でも打ったか」「なんか嫌なことでもあったのか」「俺がなんかしたか」と、一言一言が重いショットガンのように尋ねられた。

 答えようがなくて黙っていると、豪傑女と、マシンガンとショットガンの撃ち合いが始まった。

 夕食の後、腫れ物に触るような両親の様子に耐えきれず、早めに風呂に入って寝た。

 これからどうなるのだろうという不安はもちろんあったが、意外に冷静だった。たぶん、これは夢だ。


 目が覚めると自分の部屋にいた。まだ記憶は戻っていなかったが、きれいに整理整頓された机や、埃ひとつ落ちていない床に心が馴染んだ。机の上の本立てからノートを取り出して名前を確認した。

石谷紫苑。そうだ、これが僕の名前だ。そしてすべての記憶が一気に押し寄せた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ