コムラ
「タカタくん、最近ミミミさんと結構仲が良いみたいじゃない?」
「まあそうだな。これまで関りが無かったけど、二年になって同じクラスになったからじゃないか?特に不思議なところは無いからこれ以上探るのはやめてくれよ、コムラ」
「それはもう探ってくれって言ってるのと同じことだと思うのだけど……」
「いくらコムラ警部が捜査しても、出てくるのは無罪の証拠しかありやせんぜ。だからさあ、とっとと僕とミミミの関係性なんて深掘るのはやめなよ」
「まだ深掘ってないんだけど……というか深掘る以前の問題で、私はそもそもタカタ君とミミミさんの関係がどんなものなのか知らないし。でもさ、タカタ君とミミミさん、同じ中学なんでしょう?これまで同じ中学で関わることが無かったのに、高校二年生になって急に関わりだすって言うのは何かただならぬ関係を感じざるを得ないんだよ」
「良い線を行ってるが違うぜ。俺とミミミは中学の時、少しだけだが関わりがあったんだ」
「………関わりが無かったってタカタ君が言ってたんだけど…」
「そうだったっけ。昔の事は振り返らない主義だから。まあとりあえず、コムラが僕に『教えてくださいタカタ様。私、馬の世話でも豚の世話でも何でもしますから!』って言ってくれるんなら教えてやってもいいぜ」
「そこまでしてタカタ君に教えてもらうんだったらミミミさんに教えてもらうかな………」
「いやいや冗談だ。馬も豚も飼ってないから、何でもするだけでいいんだよ」
「『だけ』って言葉でまとめられるほど小さいことではないよね。まあ、お願いしよっかな」
「そうすぐ断るなって…………ん?あれ、いいの?」
「タカタ君の『なんでも』が常識的な範囲を逸脱しないものならね」
「おいおい、誰に言ってるんだよ。この僕の常識的さを甘く見てもらっちゃあ困る。道路は横断歩道があるところしか渡ったことが無いし、一時停止は毎回しっかり止まる。コンビニで会計した時のおつりは全て募金箱に入れることにしてるんだぜ?」
「それは常識的というより良識的って方だと思うけど……まあそっちの方が良いに越したことは無いね。じゃあ教えて、タカタ君とミミミさんの関係性を」
「ただの幼馴染で、それ以下は無い」
「えー本当にそれだけかな?だって最近、仲良さそうにしてるじゃない?」
「僕が最近仲良さそうにしてるのはお前だよ、コムラ」
「………あれ?」
「きっとコムラは僕と仲良くなったから、僕の人間関係が見えてきたんだろう。そこで僕とミミミの関係を見つけた。コムラが見つけたのが最近だったから、僕とミミミが最近仲良くなったんだと錯覚した。ただそれだけだよ」
「……えー……でも私達、二年になってから結構話すようになったから、最近って程じゃないと思ったんだけど……」
「まあもう七月だからね。でもそう、二年になってから話すようになったんだろ?つまりはそういうことさ」
「………なるほどね。つまりはこれまでの私の視野が狭かったってわけだ」
「間違いも勘違いも誰にだってあることだけれど、それを認めるのはなかなか難しいことだよ。だけどコムラはそれをちゃんと認めた。まあ、そこまで盛大な勘違いでも無かったけどな。胸を張って良いぜ」
「そっか。ありがとね、タカタ君」
「どういたしまして。これからもよろしくな」
「うん」