ただいま。
ノワと2人だけで森へ。
第7話始まります。
リシェール曖昧な記憶の混濁から暫くして
私の本当のお父様、お母様が来てくれた。
2人は私を見るなり泣いて抱きしめてくれて
我が家には、いつでも帰って来ていいから
リズの気持ちが決まったらでいいからと言われて
どう答えるべきかも分からなく黙ったまま
お父様たちは、隣国オリエンダに帰って行き
マーブルお姉様、お義父様、お義母様も
どこに居ようと、誰と居ようと、私の気持ち次第だと言われ、離れてもリシェールの家族だからと。
考えれば考えるほど、
自分がどうしたいかの答えなんて見つからなかった。
私は、数日悩みに悩んで、自分の家に一度帰って
何か思い出す、きっかけになるかもと
話をすると、お義父様たちに行っておいでと
言われて、自分の家に数週間泊まることに。
ー母国 オリエンダー
「さあ、リズの部屋よ。開けてみて。」
お母様がそう背中を押すと私は部屋の扉の
ドアノブに、手で回すとカチャッと鳴り
ドアが開くと、初めてなのに初めてじゃない部屋に
私は、部屋の周りをキョロキョロ見渡す。
「ずっと、リズがいつでも、帰って来ていいように、当時のままなのよ。」
ソファーに置いてある、テディベアを手に持った
お母様が私の手に渡す。ふわふわのぬぐるみを
抱きしめると、何故か涙が止まらなくなった。
「あ、あれ?」
手で拭っても拭っても、涙が溢れて止まらない
私を見たお母様がソッとハンカチで私の涙を
拭いながら、頭をふわっと包み込むように
私を抱き寄せ抱きしめると優しく頭を撫でると
「記憶はなくても、心は覚えててくれたわ。それだけで、いいのよ。」
「お、お母様…。」
小さい頃の話や、リズの時の私の話や
わがままで頑固でお転婆だったのに
妃教育で、すっかり元気がなくなったときに
助けてくれたのが、ノワール王太子殿下だと。
いっぱい話をお母様と話していると
部屋の扉がノックされ侍女が
「王城より、王太子殿下が我が家に来ます。」
「まあ、リズが帰宅したから急いで。ふふっ。」
お母様は微笑むと、また明日続きはと
用意でパタパタと走り扉がしまった。
応接室でノワール王太子殿下を待って居ると
扉がコンコンとノックされ執事が扉を開けた。
「リズ!」
ノワール王太子殿下が慌てて部屋に入ると
私はスッと立ち上がりカーテシーをし挨拶をした。
「ノワール王太子殿下、ご機嫌よう。」
「リズ帰って来たんだね?」
嬉しそうな笑顔で、私の手を握ると
膝をついて、手の指にキスをしてくれて
少し照れくさいような感覚に。お母様が殿下に
「まあまあ、とりあえずおかげになってください。」
その後、まだ記憶は完全には蘇ってはないことを
殿下に話をしたり、滞在期間は数週間。
記憶が戻ったらどうするかは
まだ決まってないことを、ノワール王太子殿下に
話すと、逢えただけでいいと言われたけれど
少し寂しげな、殿下の笑顔に胸がズキッと痛みが。
「リズ、明日森に行かない?」
「森ですか?」
「そう。僕たちが出逢った森に。」
「殿下がよろしいのでしたら。」
「よし、じゃあ明日また迎えに来るね。」
翌朝、殿下が馬で私を迎えに来てくれて
2人だけで森に向かった。殿下の気遣いと優しさが
痛いほど感じて、どうして、記憶を思い出さないんだろうと
殿下の顔を見るともどかしい気持ちに溢れた。
「さあ、着いた。少し休憩にして、魚釣りしに行こうか。」
殿下とお茶を飲んだり
本を一緒に読んだりしてると
お昼時になり一緒に川で魚を釣りながら
彼と2人だけの、不思議な時間だけが流れた。
出来たてを2人でお腹いっぱいに。
「すっごく美味しかったですわ。」
「僕も、昔食べたことなくてリズが持って来てくれて、食べた川魚がこんなにも美味しかったんだって感動したんだ。」
何気ない殿下との会話に笑顔と笑いが溢れた。
森の草の上で寝転がってる殿下の隣で
また本に集中してると、ウトウトとリズは
眠ってしまった。
(リズ!待って!僕そんな早く走れないよ?)
(ノワ、早く、早く!)
2人で森を駆け抜けてる夢?
とっても懐かしい夢。ノワって…?
『リズ、大人になったら僕のお姫様になってくれる?』
『うん!いいよ!ノワが王子様になってくれるの?』
『王子様になって、リズを迎えに行くから。』
『約束!』
『約束!』
涙が頬を濡らし、場面がザザッと変わった。
『元王太子妃、もうお前には用はない。』
(ノワ!助けてっ!)
ドンッ!と体に衝撃が伝わり体の骨が
バラバラになるような激痛に、涙が溢れ
ノワに逢いたい、最後に逢いたかった…。
『ノワ…あい…てる…。』
ハッと、目が覚めると懐かしい匂いと
懐かしい温もりで目を開けると
魘されてる私をノワが、ずっと
私の体を抱きしめ続けてくれた。
「ノワ?」
彼の体がピクッと動いてソッと体から
リズを離すと、泣きそうな笑顔で
「お帰り、リズ。」
懐かしい声、逢いたかった人、温もりを探して
あの冷たい雨の中、手を伸ばして探したノワが
目の前にいることにリズは、嗚咽を零しながら
震えて泣き崩れた。
「ノワ!ノワ…。ノワ…。」
「ああ、僕はここに居るよ。」
私の瞳からポタッと大粒の涙が溢れだした。
「…うぅぅぅ…わああああっ!」
ノワの首にしがみついて子供が泣きじゃくるように
泣き叫ぶように泣き崩れた。
ノワの身体も震えていて私の髪を頭を優しく
引き寄せるように抱きしめてくれていた。
どれくらいの時間、あなたの胸で泣いたのだろう
どれくらいの時間、あなたの頬を触り
温もりを探すように、あなたに縋り付いたのだろう。
「リズ、愛してる。」
ノワの手が私の頬を優しく撫でると
私の唇に優しいキスをしてくれた。
震えるノワの唇は、陽だまりのような
優しいキスを私は受け入れた。
「ただいま…ノワ。」
記憶が蘇るとこんなにも世界が色をついて
キラキラ輝く世界があるだなんて思わなかった。
もう、二度と逢えなくなると思ってた。
ノワの優しい声が、私の記憶の眠りから
目覚めさせてくれたんだと。
少しずつ、体調が戻りつつあるのですが
小説を書いてないと頭の中の、ストーリーが
やはり抜け落ちたり、人物像の名前を忘れてたりと
体はやっぱり大事にしないと駄目だなと痛感しました。