突然の告白
ルーベウスが、動き出す。
どれほどの時間が過ぎただろうか。
肩を震わせて泣き続けるマリエットを、ルーベウスはただ黙って、抱きしめていた。 マリエットが泣き止むまで、腕を緩めることもなく。
彼女の額が胸に押し当てられ、細い指が服の裾をぎゅっと掴んでいる。
やがて、鳴咽が少しずつ小さくなり、震えが落ち着いていった。マリエットはゆっくりと体を離し、慌てて目元を拭った。ルーベウスは何も言わず、ポケットからハンカチを 取り出して差し出す。そしてぽん、ぽん、と子ども をあやすように彼女の頭を軽く叩いた。
「目、真っ赤だよ。うさぎみたい」
からかうようで、どこか優しい声色。俯くマリエットを見て、ルーベウスは突然ぱっと表情を明るくした。
「よし、決めた」
「え?」
「午後から早退して、僕の屋敷でお茶会にしょう!」
言った次の瞬間だった。 ひょい、と軽々とマリエットの腰を抱き上げた。
「きゃっ!」
突然体が浮き、マリエットは小さく悲鳴をあげた。
「お、降ろしてください!」
「大丈夫、大丈夫。もう授業始まってるし、誰もいな いし」
ルーベウスはまるで気にした様子もなく、廊下を歩き出す。その歩き方は軽やかだが、腕はしっかりと彼女を抱えていた。
「それより、ちゃんと掴まってないと落ちちゃうよ?」
体勢がぐらりと揺れ、マリエットは慌ててルーベウスの首に腕を回す。マリエットは、半ば強引に連れていかれて、この間と同じ気がすると、諦め半分だった。鼻歌まじりで、ルーベウスは馬車乗り場へ向かって歩いて行く途中で足が止まる。
中庭に立っていたのは─ロキシーだった。
どうやらマリエットを探しに来ていたらしい。
一瞬、空気が張り詰める。
「少しだけ目、閉じてて」
「え?」
「いいから、閉じて」
言われるがまま、マリエットがギュッと目を瞑るとルーベウスが小さく指を動かした。
「…」
短く咳かれた魔法を唱えると、周囲の音が消えた。
完全な静寂に、
「あの…?マクラバン様?」
不思議そうにマリエットが言う。しかしルーベウスは答えず、ただロキシーを見たその視線は、先ほどまでの軽い雰囲気とはまるで違 っていた。
冷たく、そしてまっすぐにロキシーに答えた。
「僕、彼女のこと本気だから。遠慮はしない」
そう、告げると歩みを進めた。ロキシーの手にはマリエットが落としたサンドイッチが入った袋と、ネクタイピンの青いベルベット生地の箱を手にして。魔法を解除すると、周囲の音が戻った。何事もなかったように、マリエットに 話しかける。
「そうだ。フラン嬢って呼ぶのやめて、マリーって 呼んでいい?」
「嫌です」
マリエットは即答だった。
「えー、じゃあ僕のことルーベウスって呼んでいいからさ」
「婚約者ではないので、駄目です」
きっぱり言い切るマリエット。
ルーベウスは少しだけ考えてパッと笑う。
「じゃあマリエットって呼ぼ!」
「マクラバン様 !」
抗議の声を上げるマリエットをよそに、ルーベウス は楽しそうに笑った。馬車の中でも、前と同じマリエット を腕の中に抱えたままだった。
「そろそろ降ろしてください…」
「んっ?抱き心地いいから、駄目」
結局そのまま屋敷へ。到着すると、前と同じように屋敷の使用人たちが慣れた様子で迎えた。もうこの光景に、マリエットは少し慣れてしまっていた。それから、本当にお茶会が始まり、紅茶と菓子が並ぶ。
最初はぎこちなかったマリエット時間が経つに つれ少しずつ表情が柔らいでいった。気づけば、小さく笑っている。
それを見て、ルーベウスがふっと微笑んだ。
「マリエットってさ」
彼は手を伸ばし、彼女の髪を一束取った。 風に揺れる柔らかな髪。 そこへ、そっと唇を落とす。
「笑ってる方が、可愛いんだね」
突然の距離の近さ。 マリエットの頬がほんのり赤く染まる。ルーベウスはそれを見て楽しそうに笑った。
「今日は、泊まるといいよ」
「未婚女性が男性の家に泊まるなんて…」
当然の反応だった。
しかしルーベウスはあっさり言った。
「僕は、別宅に行くから大丈夫」
あまりにも迷いのない言葉。
その行動の速さに、マリエットは驚くしかなかった。お父様たちにも、連絡していてきちんと外泊の許可を取れたと聞いて驚くばかりだった。そして夜、ルーベウスは本当に別宅へ行ってしまった。
軽い人だと思っていたのに─真面目な部分もあるのかもしれない。そう思いながらベッドに潜り込む。泣き疲れていたせいか、マリエットはすぐ眠りに落ちた。
◇
翌朝、目が覚めたとき。 見知らぬ天井が視界に入った。マリエットは飛び起きた ここは―そうだ、マクラバン邸の屋敷。 ノックの音がして侍女が入ってきた。 着替えを手伝われ、髪を整えてもらっていると―― バンッ! 扉が勢いよく開く。
「マリエットおはよう!」
飛び込んできたのはルーベウスだった。
「って、もう昼だけどね!」
「お、お昼ですか?」
マリエットが立ち上がると、ルーベウスはその手を 掴む。
「今から街に遊びに行こう !」
街に到着すると、賑やかだった。
露店の串焼き、冷たい飲み物。雑貨屋、菓子屋、布の店。マリエットは次々と連れて行かれる。
最初は戸惑っていたが、いつの間にか笑顔になって いた。夕日が石畳を赤く染める。
「そろそろ、帰らなくては…」
マリエットが言うと、ルーベウスはあっさり領いた。
「じゃあ送るよ」
馬車の中、静かな時間が流れる。
屋敷が近づいたころ、突然、ルーベウスがマリエットの手を掴んだ。
「本気で、君を好きだって言ったらどうする?」
「え…?」
マリエットが驚いて顔を上げる。ルーベウスの瞳は、珍しく真剣だった。しかし次の瞬間。
「なーんてねっ」
いつもの笑顔に戻る。
「着いたよ」
馬車の扉が開く。マリエットは降りる直前、振り返った。ルーベウスが手を振って笑顔で見送り馬車の扉が閉まると、別の屋敷をルーベウスは訪れていた。
◇
「あら、こんな遅くに珍しいわね」
フィオーレが微笑み、ルーベルトを屋敷へ迎え入れた。
「やあ、こんばんは」
応接室に通され、ルーベウスがソファーに腰を下ろすタイミングでヴェルディが紅茶を机に置くと、ルーベウスが、静かに言った。
「君の要件を止めようかと思ってさ」
空気が少し止まる。フィオーレがカップをソーサーに置いた。
「理由を聞いても?」
ルーベウスは軽く笑う。
「僕さ、本気であの子に惚れちゃったんだよね。だから、君の要望はなしで」
軽い口調で、答えたが、ルーベルトの目は本気だった。フィオーレがくすっと笑うと、目の瞳がどす黒く変わる。
「へぇ。あんたも、あの女に丸め込まれたの?」
その声は先ほどとは違う。 どす黒い気配が部屋に漂うが、ルーベウスは全く動じない。
「人って面白いよね。遊びが本気になることもある」
肩をすくめ、そしてフィオーレを見た。
「まあ、君は人のおもちゃを欲しがるだけみたいだけど」
部屋の空気が凍り、フィオーレがにっこり微笑む。
バシャッ!熱い紅茶をルーベウスの顔にぶちまけた。
「そう──」
フィオーレの冷たい声。
「なら、もうお話はないわ。お帰りを」
ルーベウスは濡れたまま、席を立つとにっこり笑った。
「では、これで失礼します」
一礼をし屋敷を出ると、べランがハンカチを差し出す。ルーベウスが星空を見上げ、小さく咳いた。
…残るは――ロキシーだけだ。
さあ、ルーベウスくんがフィオーレに僕は本気で、好きになったからみたいなことを言ってのけた!ロキシーとどうなるのやら(°_°;)ハラハラ(; °_°)
次回、ルーベウス君、恋のライバルの所へ行くんだよ的な、お話の予定です!ブックマーク登録まだの方、高評価ボタン(`ω´)☞▦、リアクションスタンプ評価お待ちしております!
お話も中盤戦なりまして、そろそろフィオーレが動くお話を書いていけたらなと。闇の帝王の名前とロキシーの亀井が似てるので変更次第、後書きに載せますのでよろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”




