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王太子から冷遇され、婚約破棄をしたら記憶を失い、君の記憶に彼は存在するのだろうか?  作者: 猫又 マロ
王立学園

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マクラバン邸

マックバラン邸に着いたマリエット。知らせを聞いたロキシーが慌てて、彼女を迎えに行くのだが…

 

 馬車の中でも、ルーベウスはマリエットを腕に抱いたまま離さなかった。

 揺れる車輪の振動が伝わっても、その腕はまるで落とすまいと、しっかりマリエットを支えて いる。


「…あの、もう大丈夫ですので…」


 マリエットは遠慮がちに声をかけた。だがルーベウスは、どこか上機嫌な顔で首を傾げる。


「うん?でもまだ顔色が悪いよ」


 未婚女性に触れるなど、普通は紳士としてありえないのだけれど、当人はまるで、自覚がないかのようだった。この様子では、屋敷に着くまで降ろしてもらえる気配はない。


(この状況、どうしたらいいの…)


 そんなことを考えているうちに、馬車は大きな門をくぐり、やがて石畳の広い中庭へと滑り込んだ。屋敷の扉が開くと、数人の侍女と執事が整列して、ルーベウスを出迎える。


 ルーベウスはマリエットを抱えたまま馬車を降りる姿に、周りも少し驚きを見せていた。


「お帰りなさいませ、ルーベウス様」


 執事長の、セバスが声をかけると、一斉に頭を下げる。


「うん。ただいま」


 軽く答えながら、彼はそのまま屋敷の中へ歩いていく。

 マリエットは慌てて声を上げた


「あの!そろそろ、お、降ろしてください!」

「もうすぐだから」


 そう言いながら応接室へ入り、ようやく彼女をソファーに座らせた。ふかふかのクッションに沈み込み、マリエットは呆然と辺りを見回す。その間にもルーベウスは振り返り、てきぱきと侍女たちに指示を出していた。


「湯浴みの準備を。すぐに」

「かしこまりました」


 侍女たちは素早く動き出す。 執事は静かに領き、廊下へ消えた。


「もう少し待ってね。僕も湯浴みするから」


 さらりと言われた言葉に、マリエットは目を見開い た。


「えっ、ちょ、ちょっと待ってください!!」


 思わず、立ち上がりかけた彼女に、傍にいた従者が丁寧に一礼する。


「フラン様、言葉足らずで申し訳ありませ ん」


 落ち着いた声で続ける。


「"一緒"ではございませんので、 ご安心ください」


「そ、そういう意味では…」


 従者─ベランは穏やかな笑みを浮かべたまま、さらに言葉を添える。


「それと、学園では"私"と申しておりますが、屋敷では"僕"に変わります。どうかお気になさらずに」


 深々と、マリエットに一礼する。

 何が何だかわからないまま、ただ瞬きを繰り返すしかなかった。

 やがて湯浴みの準備が整うと、侍女たちがマリエットを浴室へ案内した。温かな湯気が満ちる大理石の浴室。 香りの良い石鹸と花の浮かんだ湯。侍女たちは慣れた手つきでマリエットの髪を梳き、 汚れを落としていく。湯から上がると、新しいドレスが用意されて、淡い色合いのシルクのドレス。 サイズまでぴたりと合っていた。


(サイズなんで、分かったのかしら?)


 マリエットは、少し身震いをする。あまりの手際の良さに、驚きを隠せなかった。応接室へ戻ると、湯浴みを終えたルーベウスがソフ ァーに座っていた。

 髪はまだ少し湿っていて、それでもどこか楽しそうに笑っていた。マリエットはスカートの裾をつまみ、 カーテシーをする。


「マクラバン様、ルリと私を助けてくださり、感謝いたします」


 頭を下げると、ルーベウスクッションを叩きながら隣に座ってと案内をする。


「フラン嬢、こっちに座って」


「隣には、さすがに座れません」


 マリエットは即答だった。 マリエツトは対面のソファーへ静かに腰を下ろすと、侍女が紅茶を運び、カップをソーサーに静かに置いた。その香りが立ち上る中、ルーベウスが何気ない口調で答える。


「あ、君のお屋敷には連絡入れといたから。今日はゆっくり泊まるといいよ」


  マリエツトの手がぴたりと止まる。 口に運びかけていたカップをそっと戻した。


「…すみませんが、馬車で帰りますので」


  きっぱりと、マリエットが答え首を横に振る。


「え一!もう帰るの?もう少しゆっくりお茶しようよ」


 ルーベウスは子供のように不満そうな顔をした。その時だった。コンコン、と応接室の扉がノックされる。

 執事が入ってきて、べランに何かを告げとルーベウスの耳元へ顔を寄せて小声で伝えた。

 バンッ!勢いよく扉が開く。飛び込んできたのは─ロキシーだった。息を切らし、肩で荒く呼吸している。 額には汗が滲んでいた。部屋を見渡し、マリエットの姿を見つけた瞬間、その瞳に、安堵が一気に広がる。今すぐ駆け寄り抱きしめたい衝動を、ロキシーは必死に抑えた。ここは他家の屋敷。 そして何より、彼女を救ったのは目の前の人物だ。副団長として、ロキシーは胸に手を当て、静かに頭を下げた。


「彼女の救出、感謝を述べる…」


顔を、ゆっくりと上げ、マリエットを見つめるロキシー。


「お迎えに参りました」


 ルーベウスは不満そうに頬を膨らませた。


「僕は、まだ彼女と一緒に─」

 

 とても穏やかな笑みをロキシーが浮かべるが、部屋の空気がぴりと張り詰め、静かな闘気が、まるで刃のように漂った。ルーベウスはしばらく黙り、ふっと肩を すくめる。


「…仕方ないな」


 カップをソーサーに置き、マリエットに笑顔見せて挨拶をした。


「またね、フラン嬢」


 マリエットは静かに立ち上がり、ルーベウスに一礼し部屋をあとにした。馬車の中には、目を覚ました侍女のルリが座って待っていた。ルリはマリエットの手を握りしめ、ぽろぽろと涙を流した。


「お嬢様にお怪我がなくて…本当によかったです…」


 ルリの震える声。


「どうか、私を首にしてくださいまし…」


 懇願するように、ルリが頭を下げる。マリエットは慌てて彼女の手を握り返した。


「そんなこと言わないで」


 マリエットがゆっくり首を横に振る。


「ルリが居なければ、もっと危かったわ」


 馬車の中で二人が言葉を交わす間、ロキシーは黙ったままだった。やがて馬車は屋敷に到着し玄関の扉が開けると、お父様とお母様が駆け寄ってきた。


「マリエット!」


 強く抱きしめられるマリエット。


「マリエット、無事でよかったわ…」


 心配そうな両親たちの声に、マリエットの胸もようやく、ほどけた。その後ろで、ロキシーが静かに一礼すると、何も言わず、そのまま王城へ踵を返した。


 渡せなかったネクタイピン。それを握りしめたまま、マリエットは静かに自室へ戻るのだった。

ルーベウスは、見た目はすっごいイケメンなのに軽いんだよね軽い。女性から言い寄られてきたせいか、自分から何かを追いかけることがなかった。そんなキャラクター設定です。で、ちょっと抜けてる天然キャラぽく、剣を握ると雰囲気がガラリと変わる青年です。


次回のお話は、マリエットの涙。お楽しみに!

エンジンが少しあったまったかな?たぶん(*´°∀°`)

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