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王太子から冷遇され、婚約破棄をしたら記憶を失い、君の記憶に彼は存在するのだろうか?  作者: 猫又 マロ
王立学園

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私のうさぎ

騒動がおさまらない中、侍女と一緒に街へ行くのだが…


※刺激の強い描写がございます。気分が悪い方はお読みになるのをお控えください。

 

 高い窓から春の光が差し込む、王立学園の長い廊下をざわめきの中、マリエットは静かに歩いていた。ロキシーの結婚宣言から、ひと月。学園ではいまだにその話題が消えることはない。

 すれ違う生徒たちの視線や、小さな嘱き声が耳に入るたびに、マリエットの胸の奥がわずかにざわついた。


 ─今は、それどころではないのに。


(自分のこと、行方不明の妹ロゼッタのこと。考えなければならないことが、山ほどある。恋や結婚など、今はとても)


 そんなことを考えて歩いていると。


「フラン嬢!」


 背後から明るい声が響いた。軽い足音が廊下に近づいてくる。振り向かなくてもマリエットには分かる。

 ルーベウス・マクバランだ。彼は手を振りながら、駆け寄ってきた。 その姿に、周囲の女子生徒たちの視線が一斉に、マリエットに集まる。


「ねぇ、あの方って…」


「マクバラン様まで自分のにしようとしてるのかしら?」


 令嬢たちの、囁きにマリエットは落ち着かせようと息を吐いた。


「…ごきげんよう、マクバラン様」


 淑女の礼儀として、軽く会釈をする。しかしルーベウスは、そんな距離感など気にする様子もなく、にこりと笑った。


「ねぇ、今日お昼一緒に食べない?」

「結構です」

「えー!!釣れないなあ。もしかして照れてる?」


 軽い調子でそう言うルーベウスに、マリエットは歩みを止めてゆっくりと、振り返る。そして、氷のように冷たい瞳を向けた。


「ほかのご令嬢の目もあります。それと私は、一人で過ごす方が好きですので」

 マリエットが淡々と告げる。


「どうぞ、ご自由に他の方をお誘いください。それでは」

 丁寧に会釈をすると、そのまま腫を返してマリエットは歩き出した。その背中を見送りながら、ルーベウスは肩を震わせていた。


「…くっくっ」


 ルーベウスが笑いを堪えている。その様子を横で見ていた従者のベランが、小さく咳いた。


「懲りない主は、嫌われますよ」

「それもまた、面白いのさ」


 ルーベウスは口元を歪める。その時、近くを通り過ぎたロキシーが鋭い視線を彼に向けたが、ルーベウスは気にする様子もない。


「うさぎってさ、追いかけると逃げるだろ?」

「……」

「でもさ、逃げれば、逃げるほど追い込むのがさ、楽しいんだよね」


 くつくつと喉の奥で、ルーベウスが笑う。

 彼は最近この学園に転入してきたばかりだった。だがその正体は、十六歳にして領主を務めるほどの才覚や剣技、魔法の才を持つ人物。そして隣国では"手の早い王子"とまで噂される男でもあった。

 気に入った"うさぎ"は、どこまでも追い詰める。 それが彼の、危うい遊びだった。


 学園から屋敷へ戻ったマリエットは、 本を読んでいた。窓辺の椅子に腰を掛けていたが、ページをめくる手は止まりがちで、 視線も字を追っているようで追っていなかった。


「マリエットお嬢様、お疲れでございますか?」


 控えめな声とともに、侍女のルリが紅茶を運んできた。陶器のポットから静かにカップヘ紅茶が注がれ、 ソーサーの上に、丁寧に置かれる。

 

「お嬢様、ため息ばかり漏れていますよ」

「そうね…」

 マリエットは本を閉じ、カップを手に取った。琥珀色の液体から、ほのかな香りが立ち上る。


  「最近、ずっと考え事をしているせいかしら…」


  紅茶を口に含む。 温かさが喉を通り、胸の奥へ落ちていく。


「明日は天気も良いそうですよ」


  ルリは穏やかな笑みを浮かべた。


「気分転換に、街へ行ってみてはどうでしょうか?」


 マリエットは普段、休日でも屋敷からほとんど出な い。本を読んで過ごすことが多いからだ。少し考えるマリエット。


「…そうね」


 マリエットがふっと息をついた。


「少し、気分転換してみるわ。ありがとう、ルリ」

「では、馬車の手配いたします」


 ルリは丁寧に一礼し、部屋を下がった。窓の外には、夜空に瞬く星。マリエットはその光をぼんやりと見つめながら、自分の胸の奥にある気持ちが揺れていることに気付いていた。


 翌日。 空は澄み渡り、柔らかな陽気に外の空気を吸うマリエット。青いリボンのついた帽子をかぶり、水色のドレスに身を包んで馬車へ乗り込む。 ルリと共に街へ向かった。 本屋で新しい本を買い、露店を見たり、気になった小物をいくつか手に取る。 久しぶりの外出は思っていた以上に楽しかった。 そろそろ馬車へ戻ろうとしていた時、通りすがりで見た、紳士服店のショーウィンドウの前で、マリエットの足が止まった。


「このネクタイピン…」


 ガラス越しに飾られていたのは、真ん中に青く透き通る小さな宝石のネクタイピンだった。


「お嬢様?」

「ルリ、少しこのお店に寄るわ。待っていてちょうだい」


 ルリにそう告げて、マリエットが店の中へ入る。

 店主に声をかけると、ショーケースからそのネクタ イピンを取り出してくれた。掌の上で光を受け、宝石がきらりと輝く。


「とても綺麗…」

「こちらは、アクアマリンでございます」


 店主の説明を聞きながら、マリエットの頭に浮かん だのは─ロキシーの顔だった。思わず小さくマリエットが微笑む。


「お嬢様の想いを贈られる殿方は、お幸せでしょう 」


 その言葉に、はっと我に返った。頬がほんのり赤くなる。


(やっぱり…私はロキシーのことが…)


 オルゴールのお返しというわけではない。 けれど、このネクタイピンに想いを込めて渡せたら。そう思いマリエットは購入を決めた。丁寧に包装してもらい店を出る。ルリと並んで歩いていると、曲がり角で誰かにぶつかった。ドンッ!


「いってぇ!どこ見て歩いてるんだ!」

 大柄な男が怒鳴る。

 その背後には、同じような男が二人。

 三人とも、粗野な空気を纏っていた。


「申し訳ありません」

 マリエットはすぐに謝罪した。だが男たちは視線を上下に動かし、マリエットとルリを品定めするように見ていた。


「その高価そうなドレス…貴族様か。じゃあ、手当してもらわないとなぁ」


 男が手を伸ばしてくる。マリエットはその手を強く振り払った。


「淑女に触れるなど、紳士として恥ずかしいと思いなさい!」


 その声が路地に響く。一瞬にして空気が静まった。

そのすぐ後、男たちは、大声で笑いだす。


「気の強い女も悪くねぇな」


 男がマリエットの手首を強く掴む。


「じゃあ、こっちの女は俺が」

「おい。俺の分も残しとけよ」


「お、お嬢様の手を離してください!」

 ルリが男の腕を掴む。しかし次の瞬間、振り払われた手が彼女の頬を強く打った。鈍い音とともに、ルリの身体が石畳ヘ叩きつけられる。


「ルリ!ルリ!」

 マリエットは叫んだが、返事はなく男たちは下品な笑みを浮かべている。マリエットが男の頬を打とうとした。しかし反対の手も掴まれる。 力の差は歴然だった。 手首がきしむように痛む。


「少しは静かになったか?」

「納屋に行くぞ」


男たちが動き出した、その瞬間─


「ぎゃああ!!!」


 突然、男の悲鳴が響いた。 一人が、地面に倒れるともう一人も、続けて地面崩れ落ちた。


「他に、いないか探せ」


 低い冷たい声が響くと、マリエットを掴んだままの男の目の前に立つと、男にしか聞こえない声で言い放つ。


「汚い手で、私のうさぎに触るな」

 剣が閃く。次の瞬間、マリエットの手を掴んでいた男の腕が斬り落とされ血が、地面に飛び散ると男は膝から崩れ落ち、絶叫し倒れていた。


「危なかったね、フラン嬢」


 振り返ると、そこにいたのは笑顔のルーベウスだった。彼は軽々とマリエットを抱き上げる。いわゆる"お姫様抱っこ"だった。片手で剣を鞘に収めながら、にこにこと笑っている。


「な、何故、貴方がここに?」

「んー、なんでだろ?」


 軽い口調で、ルーベウスが首を傾げる。


「とりあえず、私の屋敷においでよ。血がついちゃ ったし」

「私は、大丈夫ですので降ろしてください!」


 マリエットが降りようとするが、ルーベウスの腕はぴくともしない。がっちり抱きしめられているからだ。その横では、 従者のベランが気絶したルリを抱き上


「ルーベウス様、馬車はこちらです」


 マリエットはルーベウスに抱き上げられたまま馬車に乗り込み屋敷へと向かうのでした。

やっと、やっと書けるように´Д`)ヤット‥

これでいいのか、悩みに悩みましたが( '-' )…( ; '-' )フイッ。


次回も、頑張りますのでブックマーク登録、高評価ボタン、リアクションスタンプお待ちしております!

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