黒バラ姫の毒の花【前編】
1ヶ月ぶりの登校だが、やはり噂はまだ消えず。そんな中でのフィオーレのお誘いとは?
マリエットの自宅謹慎が解かれてから、一か月が過ぎた。
森でのロキシーのプロポーズ。あのときの真剣な眼差しを思い出すたびに胸の奥が熱をを帯び、けれど同時に不安も膨らんでいた。
本を開いても文字は頭に入らず、ページをめくる 指先だけが虚しく動く日々。そんな曖昧な時間の果てに、再び学園へ登校する朝がやってきた
「おはようございます。マリエット嬢」
いつもと同じ、穏やかなロキシーの声。
けれど今日は、その声を正面から受け止められな い。視線が泳ぎ、指先がぎこちなく制服のスカートの端を摘む。
「お、おはよう…ロキシー」
名前を呼ぶだけで心臓が跳ねる。
侍女たちのきが廊下の端で弾んでいた。
「ロキシー様が、お嬢様にプロポーズなさったとか」
「 おめでたいことですわ!
「でも、お嬢様はお返事を…」
執事長のラスティが咳払いをすると、侍女たちは慌 てて持ち場に戻る。しかし、マリエットの顔は熱を帯び、胸がどきどきと高鳴るばかりだった。馬車から降りるとき、手を差し伸べるロキシ ーの手を触れるだけで、心臓が跳ねた。慌てて視線を逸らし、馬車の小さなステップを降りようとした瞬間、足が滑ってしまった。
「キャッ!」
「マリエット嬢!」
ロキシーに抱き止められ、騎士服の上着を掴んで転ばずに済んだ。ちらっと顔をあげると、ロキシーのブラウンの 瞳が朝日に反射してキラキラと輝いている。
「 …綺麗」
「マリエット嬢?」
「ロキシー、あ、ありがとう」
顔が耳まで真っ赤になったマリエットは慌てて離れる。仲睦まじい二人を見ていた、側近のルカ思わず吹き出しそうになっていたが、なんとか笑わず我慢していた。
そんな中、馬車のそばでは、令嬢たちが小声で噂していた。
「ねぇ、朝から抱き合ってますわ』
「あんなことしていて、謹慎から帰ってきても反省もなさってないとか…」
「フィオーレ様が、お可哀想に」
ロキシーは前に出ようとしたが、マリエットが騎士服の袖口を掴み、首を横に振る。
「いいわ。覚悟していたことだから」
「ですが!」
「ロキシー。周りに翻弄され言い返せば、火の粉が大きくなるわ。それに、叩いてしまったのは事実だから…」
悲しそうに微笑む彼女の姿に、ロキシーは拳を握るしかできなかった。教室まで歩く道ですら、噂はさらに酷くなる一方だった。
◇◇
マリエットが教室の中に入ると、視線や話声が痛いほど伝わっていたが、気に止めることもなく自分の席に向かった。
「ごきげんよう、マリエット様」
たった、一か月会わなかっただ けで、その妖艶さには背筋が寒くなる。
「フィオーレ様」
「はい?」
「証拠もなく、フィオーレ様を叩いてしまい申し訳ございませんでした」
頭を深く下げるマリエット。教室内はざわめき、ロキシーですら驚きを隠せない状況だった。
そんな騒ぎの中、フィオーレが、優雅に席から立ち上がると、マリエットの手を優しく包むように握りしめ微笑む。
「マリエット様。どうか、お顔を上げてください」
マリエットが視線を上げると、フィオーレは微笑ん だ。
「お互いに誤解があった。それだけのことですわ」
再び謝罪するマリエットに、フィオーレはこう提案 した。
「私の屋敷でガーデニングパーテ ィーを開きます。ぜひご参加ください。それでお互いに、区切りにしましょう」
「ガーデニングパーティー?」
「私の屋敷では、今、黒薔薇が満開で見頃なんです。学友の皆様もお招きしようかと。マリエット様は、ご都合はいかがですか?」
「…お父様に伺ってみますわ」
「是非、お待ちしていますわ…」
フィオーレのその微笑みに、わずかな違和感を覚えながらも、 マリエットは小さく微笑んでいた。
(ᐡ _ ̫ _ ̥`)やはり、ロキシーの告白小説が、ダダ滑ったように思えて凹んでますが、次回、後編でまたあのフィオーレが仕掛けます:( ;´꒳`;):ヒェッ。




