嵐の馬車
結婚破棄が叶いようやく、ノワールとの
新たな生活が始まる矢先に、とんでもない事件が。
第2話 始まります。
────正式な手続きを済ませ、エドワード王太子殿下と私の婚約破棄が決まり手続きも、問題なく終わった。呆気なさすぎて、怖いくらいに思ったが
明日、王城を出ることに。何の未練もない清々しい門出に胸が踊るリズに、そんな不安さえ忘れるほど、明日が楽しみで浮き足が立って喜ぶリズを見て、侍女のミルティーも、シュゴも私を見て喜んでくれた。
王城を離れる翌朝、目が覚めると、雨音が部屋まで聞こえるほど、土砂降りにリズは少し落ち込みながら、ベッドから起き上がった。晴れなかったのが、残念だったけど、早くエドワードに逢いたくて、身支度が終わり、部屋から出る間際に、リズが振り返り頭を下げた。
「数年間お世話になりました!」
クルッと振り返るとミルティー腕を掴んで、笑顔になるリズを物陰からマリアがニヤッと笑って見ていた。リズたちが、先に馬車に乗り込んで出発。シュゴは、用事後から早馬で行くと言われて、馬車の扉が閉まり出発して暫く馬車のガラガラと馬車の音が響いていた。
『ガタンッ!』と何かが外れた音がし、リズの体のバランスを崩してミルティーが私の体に覆いかぶさるように、身を呈してリズを守ると、ミルティーは頭を強く打ったのか気を失ってしまっていた。リズが慌てて小窓を開いて御者を呼ぶが反応がない。早馬で追いついてるはずのシュゴの姿もない。リズは、ギュッと手を握りしめると声を出した。
「だ⋯⋯誰か、居ませんか?」
馬車のドアが、カチャッと突然開くと黒ずくめの男が3人リズの前に立っていて、殺気を感じたリズの背中に、寒気が走り身を縮めた。
「さっさと、出ろ!」
「キャッ!!」
リズの手を強引に掴んで引っ張り『バシャッ』と無理やり馬車から引きずり出すと、水たまりに御者が倒れていて護衛の騎士もいない、シュゴも居なくて、リズは混乱した。
「護衛の騎士になりすまして、あんたらを孤立させたんだよ。」
「今頃、馬車の中を、確認してそうだな。」
「本人が乗ってない、空の馬車を見てな。クック。」
手を掴まれ引きずられながら、恐怖のあまり声が出せないリズは、どうすればいいのかと戸惑っていると、目の前には、崖が見えて、ヒュッとリズの喉が鳴った。
「元、王太妃様、ご苦労さまでした。」
「アリア様が、ゴミはゴミらしく、華やかに散ればいいとのことです。」
「あの世で、アリア様の幸せを拝むんだな」
一人の男がリズの首をガッと掴むと、宙に浮いた体は崖の下だった。下を見たら真っ暗でどれだけ深い崖なのか
分からず、リズの体が強ばった。次の、首を掴まれた手を男が躊躇なく、彼女の手をパッと放した。私の体は崖下に真っ逆さまに落ち走馬灯が走った。
(ノワに最後⋯⋯逢って本当の気持ちを伝えたかったな。)
「ノワ⋯⋯」
『ドンッ!』と言う音と体に強い衝撃が走り痛みを感じる前に、リズの呼吸は浅くなり薄れゆく中の記憶で、リズの耳に聞こえたのは、崖の上から薄気味悪い声で笑う
刺客の声を聞きながら、私の意識は途絶えた。
ーノワール邸ー
「はっ!リ、リズ!」
自室のソファーでリズを待ちながら、いつの間にか、うたた寝をしていたノワール。ハッと、リズに呼ばれた気がして半身を起こすように飛び起きた。嫌な冷や汗がじんわり額に滲み、カツカツと靴音を鳴らし自室の窓の外を見ながら
「リズ、もう着いていいはずなのに。」
懐中時計を見るともう夕刻をすぎようとしていて、あまりにも遅い到着に胸騒ぎを覚えていたノワール。
『ドンドンッ!』
屋敷の扉を激しくノックする音が響いて執事が対応していると、ノワールは慌てて、自室の扉を開け階段を急ぎ足で下りると、びしょ濡れのシュゴが、青ざめた顔で拳を握って佇んでいた。
「君は…?」
「リズお嬢様の従僕のシュゴと言います。無礼を承知で、ノワール様に、火球の知らせを。」
ポタポタと雨の雫が落ちる音と一瞬、シンッとなる。屋敷の状況と空気にもう、答え分かっていた。ノワールは唇を噛んだ。
「リズ様が、行方不明です。」
ドーンと落雷がどこかに落ち、ノワールの血の気が一気に引いて目の前が真っ暗になると同時に、シュゴの胸ぐらを掴んだ。
「どいうことだっ!護衛の貴様が何故、リズと居なかったんだ!」
「申し訳ありません。侍女のミルティーと、一緒に乗る予定の馬車でしたが、王城からの呼び出しに、後から行くと伝えたのですが、それ全てが罠でした。馬車に追いついた頃には、意識を失った、侍女しか居なく、リズお嬢様を探しましたが、今現在、見つかってません。」
扉をガンッと拳を打ちつけるノワール。怒りで、頭がどうにかなりそうだった。大方、あの女しかいないと殺してやりたい思いがあったが、今はリズの捜索が優先的だとノワールは悔しさで、唇を噛み締めると血が滲んだ。
「我が、近衛兵を全軍総員で、リズの捜索に当たれ!」
シュゴも行こうとしたが、ノワールが少し休めと言われ申し訳なさそうに、歩いて別室に案内をされた。執務室に戻ると椅子に腰を下ろすノワール。静かに口を開いた。
「ロイ、ギイ、居るか?」
「「はっ。主、ここに。」」
ノワールの従僕であり影として、暗部、護衛、密偵、何でもこなせるロイとギイを呼び出し、ノワールは、小さく息を吸うとモスグリーンの瞳色が漆黒の闇夜の瞳色に変わりギラッと、二人を見上げた。
「アリアの身辺調査、リズの行方不明先を至急、調べろ。」
「「御意にて我が主。」」
手を右胸に軽く添わせて、一礼をするロイとギイ。執務室の書斎テーブル椅子に座って、殺気立ってるノワールを見たロイとギイは背筋が凍る感覚を、久しぶり感じて、(主、本気で切れたな。)ロイたちは、足早に部屋を出た。
アリアの証拠を探したり、リズの行方を探したり
数日かかったギイたち。屋敷に戻って、ノワールに報告を述べた。
「靴跡から察するに、男が三人⋯⋯」
ロイが報告書を手渡すと、ノワールの体が小刻みに震えだしワナワナと大きく震えバンッと、机をノワールが、拳で叩いた。
「絶対に、この世の地獄を見せてやる。」
(この、報告書見たら切れるよな)
(久しぶりに、アレ出来るなら、何でもいいや。)
ギイの嬉しそうな顔を横でチラッとロイが見ると
(こいつも、やばかったわ。)と、小さくため息をついた。
「崖下を捜索しました。別の足跡が、一つ、後を追いましたが、途中馬に乗ったのか、向かった先までは、分からずで、申し訳ありません。」
「引き続きリズの捜索、情報、些細なことでも、いいから、必ず俺に報告しろ。」
「「御意にて、我が主。」」
執務室のドアが閉まると、ギッと椅子から、立ち上がり、ノワールは窓の外を見ながら
「――必ず探して見つけて、助けるから⋯⋯お願い無事でいて、リズ⋯⋯」
窓ガラスにトンと、拳をあてると、マリアやその関わった人間全てをなぶり殺しにしてやると、誓った夜でした。
こんにちわ、猫又 マロです。めっきり寒さが増して鼻風邪引いてるマロでございますが、読者の皆様は、お変わりないでしょうか?
第2話、お楽しみいただけたら嬉しいです。
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あるので、応援よろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”