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新たな力の目覚め

エルフの真の力を使ったメル。ロキシーは果たして目覚めるのか?


メルは振り返らず、ただ前だけを見て、地面を蹴り続けた。銀の髪が風になびき、足音は、やがて石畳を駆け抜ける。メルの頭の中は、ロキシーを助けなければと、それだけがメルの歩みを進めた。木の扉を全力で押し開いた。 「バンッ ! 」一瞬、店内が静まりかえる。カウンターの奥で、皿を運んでいたバルが、様子を見にカウンターから出てみると、入口で息を切らし、座り込むメルをの姿を見たバルが


「メル、 忘れ物か?」


首を大き振りながら、震える唇でメルが一―


「· · · · ·シーが、ロキシーが、死んじゃう!」


ワッと泣き崩れるメルの異常さに、バルがメルの肩にソッ手を置くと、説明を聞いたバルの眉間が(しわ)を寄せていた。


「分かった、すぐ助けに向かうから、メルは俺の(かみ)さんと、店で待ってくれ」


「私も行く!」


「駄目だ!メルが狙われたなら、尚更ここで待つべきだ!」


バルの声と、メルの声を聞いた客たちが、静かに聞いていたのだ。


「すぐに動ける客は、俺に着い てきてくれ!緊急事態だ!」


客のざわめきが店中に広がる。


「メルちゃんの頼みでもあるしな!」


「マスター、エールは一杯だけじゃねーよな?」


「お前、どんだけ酒が好きなんだよ」


「あはは!ちげーね!」


メルの姿を見た数人の客が、席を立つ。ダルは店の奥から、大きな戦斧を取り出し肩に担いで戻って


「さあ、急げ!カルエラ後は、頼んだぞ」


「ダル、店は任せとけよ!ほら!皆、行っといで!」


カルエラの掛け声で、客とダルが店から走ってメルが伝えた方角へ走って行く。数人の客が閃光弾をかき集めて店の外で何発か、空へ打ち上げた。パーン!パーン!と、空に響く閃光弾は、緊急信号として騎士団に届く。あと数分で騎士団が馬に乗って店に来るだろうと、客同士が話しているのを聞いたメルは、顔を少し上げた。


「メルちゃん立てるかい?暖かい飲み物をだすからね」


カルエラがメルに伝えると、震える彼女の姿を見て、カウンターで飲みを作るカルエラ。少しして、カップを持って、メルに差し出した暖かい飲み物。


「熱いから、気をつけて飲むんだよ」


メルは震える手でカップを受け取る。一口飲むと、熟さがふうっと体を包み、冷えた心に一瞬の安らぎがもたらされた。その時だった・・・・・




『──────────· · · · ·メル』




小さく(かす)かに、メルを呼ぶロキシーの声が聞こえた。メルは、ビクッと体を飛び起こす。カップが手から滑り落ち、床へと音を立てて落ちると、カルエラが慌てて布巾を持って、メルの膝を拭いた。


「メルちゃん、火傷してないかい?」


ただ一言、震える声でメルが咳いた。


「· · · · ·ロキシーが、私を呼んでるの」


メルは椅子から、ガタッと立ち上がり、肩に掛けてあった毛布が、床にバサっと落ちて、そのまま店の外へ飛び出していった。


「待って、メルちゃん!」


カルエラが叫びながら、店の外に出て呼びかけるが、メルの耳には、既に届かなかった。 今は、ただロキシーの所まで走ることしか、考えられず家の方へ走るメルは、見慣れた道、見慣れた家の屋根が見えてくると、メルは、大きな声で彼の名を叫んだ。


「ロキシー!」


· · · ·言葉では言い表せないような、衝撃的な 光景が広がっていた。ーーダルたちが、刺客と応戦中の中、駆けつけた客たちの何人かが、既に地面に倒れて血を流していたり、目を背けたくなる光景の先に、メルの足が、ピタッと止まった。心臓の、鼓動が激しく波打つのが、メルの耳にだけ届いた。刺客がメルを見つけ、剣を構えた。


「対象者、みーつけた!」


「メル! 逃げろ!」


ダルの大声が(とどろ)いたが、間に合わなかった。 剣は、メルの背後に向かって振り下ろされーー

次の瞬間には、刺客は体ごと弾かれた。メルは何も考えられないまま、大粒の涙を流しながら、 彼の元へ歩み寄る。そして目の前で、メルは崩れ落ちるように膝をつき、ゆっくりロキシーの体を腕に抱いた。


「ロキシー?」


メルは血だらけのロキシーの体を揺り動かすように、声をかけるが、彼の体は氷のように冷たい。メルはそれでも、何度も名前を呼び、体を揺すり続ける。


「ロキシー!死なないって、約束したのに!何で!何でよ!嘘つき!」


メルの叫び声に、バルたちの心臓を鷲掴みにした。


「いや、いやあああああっ!」


泣き叫ぶメルの周囲に、突然、ブワッと眩い青白い光が立ち上ったー。その声と光は、エルフ族に伝わる(いにしえ) の歌。 光が弾けると、周囲に見えない光のベールが展開され、メルはロキシ 一をしっかり抱き寄せ、メルが歌い始めた。悲しく、痛く、 ーーその歌声は、戦場を凍えるような、静寂で包む。刺客は、苦痛から耳を塞ぎ、地面に膝をついて苦しむ姿に、ダルたちは驚きを隠せず不思議な光景に見入るばかりだった。



『癒せ、癒せ、森の精霊たちよ。我が願いをこの声に· · · · ·』


(だれ· · · · ·とても悲しい声で、僕の名前を呼ぶのは· · · · ·)



『ロキシー、お願い死なないで· · · · ·』


メルの髪が青く輝くように、強い光が、カッと爆ぜ、ロキシーの体を包んだ。何度もロキシーを助けようと、(いにしえ)の歌を歌い続け、だんだんと、メルの力の光が消えかかった瞬間ーー


「──────· · · · ·メル」


ロキシーが、小さくメルの名を口にし、ゆっくりと目を開けた。彼を強く抱きしめ、涙が溢れるメル。


「口キシー!」


包んでいた青い光が、小さくスッと消えゆくその瞬間、刺客がゆらりと立ち上がり、すぐさま剣を握り、メルたちに振りかざした。次の瞬間、静かな緊張とともに、二本の剣が交差し、刺客の首を掴む、シュゴとオルハートだった。


「一歩でも動くと、お前の首はない」


「ロキシーが、ほとんど片付けたとはな」


オルハートの冷たく、殺気の籠った声に、刺客は戦意を失い、剣を地面に落とす。 オルハートがシュゴに刺客を任せると、メルたちに駆け寄りながら叫ぶ。


「メル! ロキシー、助けに来るのが、遅くなってすまなかった· · · · ·」


ロキシーは、小さく掠れた声で唾くようにオルハートに


「謝らないで· · · · ·ください」


ロキシーの服を掴んだまま、不思議な力を使い果たしたのか、はたまた安堵したのか、ロキシーの体に覆い被さるように気を失ってしまっていた──────────


✧───────── ✧


目覚めたメルは、柔らかな光に包まれるベッ ドの中だった。


「お父様、お母様· · · · · ―― お兄様· · · · ·」


朧気(おぼろげ)に淡く浮かんでは消えていく、不思議な夢を、見たメルの口から小さく漏れた、声だった。「ガチャッ」と、部屋の扉が開く音がして、木の床を踏みしめる軽い足音。メルのベッドの傍にしゃがみ込むようにして、優しく彼女の顔を覗きこむ人影。


「· · · · ·メルちゃん?」


その声の方へ首を傾け、メルの目がゆっくりと焦点を結ぶ。


「カルエラさん· · · · ·? 」


バルの奥さん、カルエラの瞳には、涙が滲んでいた。メルの体をそっと優しくメルを抱きしめた。温かな腕の中で、メルは 小さく息を否む。


「怪我もなくて· · · · ·どれだけ、心配したか」


震える声でそう伝えるカルエラの温もりに、メルの心も揺さぶられる。こんなにも多くの人に、心配をさせてしまったのだと、気づき、メルは申し訳なさが胸に満ちた。


「ごめんなさい· · · · ·」


謝るメルだったが、 息を飲んで顔を上げた。


「あの、ロキシーは?」


「ロキシーなら、隣の部屋にいるわ。今は―― 」


カルエラの言葉の続きを、メルは最後まで聞かないまま、ブランケットを跳ねのけ、ベッドから飛び降りた。床の冷たさが足の裏に伝わるが、そんなことに構っている余裕はなかった。――なにか、胸騒ぎがする· · · · ·勢いよく部屋の扉を開けて、裸足のまま駆け出す。隣の部屋のドアに手をかけると、迷いなくその扉を開け放った。


「ロキシー?」


しかし、そこにロキシーの姿はなかった。


(· · · · ·夢だったの?)


メルの胸の奥がギュッと締めつけられるように、苦しく、胸を掴んだ。メルの心臓の鼓動が速くなる――

カーンカーン、カーン· · · · ·何処からか、剣がぶつかるような鋭い音が、昼を裂いて聞こえてきた。メルは窓のほうへ駆け寄り、カーデンをかき分けて 外を見ると、庭の中央 で、二つの影が剣を交えていた。メルは、部屋から飛び出し、階段を駆け足で下りると、息を切らして、オルハートに駆け寄る姿を見て、慌てて木剣を下ろす二人。メルは、裸足のままオルハートの前に立ち、怒りに震える声をぶつけた。


「ロキシーは、やっと息を吹き返したのに、何故、鍛錬なんてするの!」


オルハートは、メルの剣幕に、後ろにたじろんだ。メルに、どう答えるか、焦るオルハート。


「いや、メル、これは。.違うんだ」


「違う? どこが、違って?今は、そんなことをしてる場合では、ないでしょ!」


鋭いメルの語気に、オルハートは言葉を失ったように黙りこむ。そんな一人のやりとりを、少し離れた木陰で見ていた シュゴは、ふっと鼻で笑った。


「· · · · ·懐かしいな」


思い返すのは、オルハートの母リズに言われたこと。オルハートに、厳しく剣術教えたら、リズがめちゃくちゃ怒ってたなと。それが、今じゃ似たような光景が、まんま見てるようで、口元が緩くなるシュゴ。


「ロキシーの傷は癒えても、まだ臓器には負担かけたら駄目って、オルハート(にい)様は何故分からないのですか!」


怒るメルを宥める、オルハートとロキシー。すると、後ろから声が聞こえた。


「―― 昔と、変わらずだな。」


その声が庭に響いた瞬間だった。サクッ、サクッーー。

芝生を踏みしめる、落ち着いた声と靴音が静寂の中に鳴り響き、聞き覚えのある声に、メルは振り返るのでした。

少し更新が遅くなりました。次回から物語が佳境に入ります。次回は、懐かしい声と家族を小説にできたらなと思っていますので、お待ちください(*^^*)


描写の表現不足、誤字脱字、漢字変換ミスなどまだまだございますが、生暖かい気持ちで読んでもらえると嬉しいです。


読書の皆様に作者からのお願いごとです(*.ˬ.)"


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