君を守ると決めた剣
メルとロキシーの目の前に現れたのは、黒づくめの刺客たち。ロキシーは木剣を手にし刺客たちに立ち向かうが、果たしてメルを助けれるのか?
※残虐的な描写が含まれますので、苦手な方はお控え下さい。
ダルの店を出て、家路へと歩くロキシーとメル。前方を歩くメルが、満足そうにお腹を撫でながら、夜道を歩いていた。家に着く頃、様子がおかしいことに気づいたロキシーが、メルに声をかけようとしたが、間に合わなかった。木の陰から、黒づくめの男たちが三人現れ、その姿はまるで闇から抜け出た死者のような冷たい気配に、ロキシーの喉が鳴る。顔は覆面で隠され、目だけが鋭く光って見えた。
「誰だ!」
ロキシーが叫ぶと、三人いた一人の男が、目の前にいたメルの口を塞ぎ取り押さえると、冷たい声で発した。
「対象者、確保」
「嫌!離して!ロキシー!」
「メル!」
ロキシーが木剣を腰から抜き、地を蹴った。
「メルを離せ!」
向かってくるロキシーに先頭の刺客がそれを察知し、素早く真剣を抜いた。金属音と木剣の嫌な音が鳴り響き、殺気を伴った斬撃がロキシーに迫る。ガンッ!激しく木剣を、ロキシーが刺客の肩に振り落とした。
「ーー グアッ!」
一人は倒せたが、もう一人の攻撃を避けられずに、ザシュッと嫌な音と共に、ロキシーの右肩から溢れ出した血が、服を染め、地面に鮮血が、地面に落ちる姿を見たメルが、泣き叫んだ。
「やめて!もうやめてえっ!」
泣きじゃくるメルの姿にロキシーは、立上がろうと歯を食いしばる。
(⋯⋯今、倒れる訳には ――)
脈打つような痛みが絶えず意識を濁らせている。肩の傷を押さえながら、残った刺客を睨んだ。真剣を逆手に構え、ロ元に薄い笑みを浮がべている。勝利を確信した者の、冷たい笑みだ。
「―― これで、終わりだ」
そう咳くと同時に、刺客の腕が上がる。振り下ろされた剣が光り、ロキシーの顔に影を落とした。ロキシーは、左手を地面へ滑らせ、乾いた砂を握りしめる。
「まだ、倒れるわけにはいかないんだ!」
握っていた砂を、力の限り刺客の顔めがけて放つ。視界に飛び込んできた砂が目を襲い、その両手が思わず顔を応うように動く。
「⋯⋯目がぁ!」
ロキシーは、その一瞬の隙を逃さなかった。力を振り絞り、木剣を握り直して、大きく息を吸った。ロキシーは、目の前の敵を倒すために、再び立ち上がった。残された力をすべて込めて――
ロキシーの放った一撃が、刺客の脇腹に突き刺さるように打ち込まれ、体が仰け反り、足がよろめくのを見たロキシーは間髪を与えず、木剣を刺客の後頭部、目掛けて木剣を振り落とした。
「⋯⋯ガッ!」
ドサッと、地面に倒れて動かなくなった刺客を見て、あと一人だと、ロキシーが振り返る。
「残りはお前だけだ!メルを離せ!」
「素晴らしいですねー」
喉を鳴らして笑う最後の男。隙がない、異様な冷たさと、寒気が体中に巡るとロキシーの手が震える。
(―― どうする⋯⋯こいつには、隙が見えない)
────⋯⋯『メルを頼んだぞ!ロキシー』
オルハートたちの言葉が脳裏に宿ると、ロキシーの瞳から、迷いが消え、覇気を纏い残り一人の刺客を鋭い眼光で睨みつけた。
「おや、顔つきが変わりましたか?んーそうですね。じゃあ、これならどうしますか?」
「―― んんーっ!!」
口を塞がれたメルの首元に短剣が突きつけられ、ナイフの先が浅くメルの首に刺さると、首元から血が少し流れ落ちる。メルは、恐怖のあまり暴れようとしたが刺客がメルの耳元で囁く。
「しー。暴れたら深く刺さりますよー。そう、いい子はジッとしていて、ねっ」
隙が見えないなら、どう立ち向かうか⋯⋯ロキシーの額から、汗が頬を伝い考えていると、メルが刺客の掌を思い切り噛み付いた。
「―― いっ!」
刺客がメルの体を突き飛ばし、襲いかかろうとしたのを、ロキシーは、見逃さなかった。逆さまにした木剣の柄で刺客の顎に打撃をお見舞いすると、そのまま地面に倒れ、ロキシーがスッと深く息を吐いた。
「メル怪我は?」
「大丈夫。ロキシーの傷が⋯⋯」
体が震えるメルの頭を撫でると、ロキシーが手を差しだし、メルを立ち上がらせた。
「メル、よく聞いて。俺が時間を稼ぐから、ダルの店まで振り返らずに、走るんだ」
「嫌!ロキシーも一緒に、逃げよ?」
「メルを守りたいんだ⋯⋯だからお願い」
首を左右に振り泣きながら、ロキシーの服を掴むメル。ロキシーは、唇を噛み、片腕でメルを抱きしめた。
「ダルを呼んできてくれるだけで、いいから。ねっ?」
「ロキシー死なない?」
「ああ、俺は絶対に死なないよ。さあ、時間が無いから、行って」
メルの背中を軽く押すと、メルが不安げな顔のまま、ダルの店まで走って行く姿を見送ると、じゃりと砂を踏みしめる靴音が鳴り、ロキシーは木剣を構えた。
「―― 酷いなー痛いなー。あーあ、対象者が、逃げたじゃん!それにしても、君のその目、すっごーく嫌いだなっ!」
シュッと刺客が、暗闇に消える。どこから仕掛けてくるか分からず、周りに注意をするが男の速さには着いていけず、肩以外にも膝や脇腹、頬に刀傷が入りロキシーの顔が痛みで歪むが、ロキシーの瞳は諦めではなく、負けない闘志が漲っていた。
「―― これなら、どうかな?」
刺客が、ロキシーに何か魔法を使うと全身が固まり指ひとつ動かなくなった。動こうと藻掻く姿を見ながら、刺客がロキシーの前に立つと、喉元を片手で掴み、体が宙に浮く。
「苦しい?助けて欲しい? 」
「⋯⋯ 誰が⋯⋯お前に⋯⋯命乞いをするか⋯⋯」
「ふぅーん。じゃあ、もう少し遊びたいから、付き合ってね!」
目だけしか見えない刺客の顔は、狂気に満ちた顔のまま、真剣で、ロキシーの体に何ヶ所も切り刻んで楽しむ刺客の目尻が下がり喜ぶ。動けないはずのロキシーが、顔をゆっくりと上げ、口の中の血を刺客の顔に吐き捨てた。
「お前なんかに、命乞いするぐらいなら死を選ぶ」
「へぇー。じゃあ、遊ぶのは、もういいや⋯⋯」
その瞬間、パンッと夜空に閃光弾が何発も弾け飛んだ。ロキシーは口角を上げ刺客を睨みつけ笑う。
(メル無事に、ダルの所に⋯⋯よかった⋯⋯)
――ザッシュッ!!
ロキシーの心臓に、刺客が刺した。柄を握り直して捻りながら、ゆっくりと、剣がめり込み、背中まで剣が貫通する。
「────⋯⋯ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!」
その刺した剣を、刺客が力任せに引き抜くと、血の雨が地面にびちゃびちゃと、降り注いだ。そのまま地面に力無く倒れるロキシーの頭を踏みつけながら、刺客が苛立つように吐き捨てた。
「あーあ。任務失敗したじゃん!―― 怒られるんだけどなっ!」
ロキシーの体を、思いっきり蹴りあげると、ゴロゴロと体が転がり、仰向けのまま薄れゆく意識の中、ロキシーは空を見た。不思議なことに、さっきまでの痛みも感じなければ、声すらも出なくなっていた。握ったままの木剣の感触が残るだけで、瞼が重く感じると、ロキシーは思うのだった。
(守れる力が――あれば⋯⋯もう少し僕が強かったら、こんな奴に負けなかった。悔しい――メルの泣き顔が最後────か⋯⋯)
ロキシーの目から一筋の涙が頬を伝い、満天の星と月明かりの夜空を見上げ愛しい人の名を呼んだ。
『────⋯⋯メル』
ロキシーはそのまま、目を閉じた。
夕方ぐらいに、投稿した小説はボツにしたことをお詫びいたします。再度、書き直し訂正し上げ直しましたことをご了承くださいませ(*・ω・)*_ _)
次回は、眩い光と真の力の目覚めを書いて小説に出来たらと考えていますので、ブックマーク登録や、高評価、リアクションスタンプなどなど、皆様からの応援お待ちしております(*^^*)




