王の謁見
王城に向かうことが決まり、カール国王陛下と謁見をするオルハートたち。二人が不在のなか、不穏な影が、メルとロキシーに⋯⋯
オルハートたちは、あれから宿屋を離れ、広い家を借りて、ノワール国王陛下の呪いの鍵の手がかりを探す中で、王城に書簡を出していた。
「手紙が届きました!」
ロキシーに手渡された手紙の封を切って、手紙の内容に目を通すオルハート。『3日後の夕刻に、迎えの馬車を――⋯⋯』と記されていた。
「王から許可が降りれば、禁書を読めるかも知れない」
「それまでに、まずは用意をしないとな」
✧ ─────────── ✧
そして、三日後の夕方、ロキシーが家を尋ねると、オルハートとシュゴのいつもとは違う服装を見て、目を輝かせるロキシー。
「実はオルは、オリエンダ王国の王太子なんだぞ。そんで俺は、近衛騎士の隊長で、オルの護衛もしている」
ロキシーの顔が、『えっ?』と驚いた顔をして、後ずさりをする。
「王太子殿下とは知らずに、僕はご無礼を⋯⋯」
ハンチング帽を外して頭を下げる、ロキシーにオルハートが肩をポンッと叩いた。
「ロキシーは、俺たちや、メルの面倒もよくやってくれている。いつも通りに接してくれ」
「はい!」
✧ ─────────── ✧
絹の白いシャツを中に着ると、重い上着を羽織る。上着の襟元には、金糸の刺繍と金具が繊細に輝き、肩章を肩にかけて、その周りには飾金具が幾つもぶら下がり、細かい紋章が描かれている。右胸には、王家の紋章、獅子が輝いていた。王族礼服を纏うと、襟元の金具をオルハートがパチッと止めた。シュゴも騎士服に着替え、白いシャツに袖を通し、上着を羽織ると襟元の銀糸の細かい刺繍が施され、肩章と幾つもの勲章バッチが、オリエンダ国の騎士の功績を物語っていた。腰には、儀礼用の柄剣を革ベルトに差して、柄を軽く握るシュゴもまた、オルハートの護衛騎士としての顔つきに、変わっていた。ロキシーは、二人の姿を何度も回るように見ては、目を輝かせる。メルは、階段に座って、頬を膨らませていた。
「メルもお城に行きたい!」
「今日は、大事な用事だ。メルは留守番だ」
シュゴに言われて、足をバタバタさせて怒るメル。
「えー!嫌、嫌!メルも行く!」
駄々をこねるメルに、オルハートが屈んでメルの頭を撫でながらメルに話をした。
「いい子にしてたら、王室のお菓子をお土産にして持って帰ってこよう」
「えっ!甘いお菓子?メルは、ケーキとキャンディーと、クッキーに、マカロンも!」
「おいメル、流石に虫歯になるぞ」
シュゴの突っ込みに、その場の皆が笑う。準備が整うと同時に、王城からの馬車が到着した。御者が家の扉を叩くと、オルハートが白の手袋を装着し、父から譲り受けた大事な剣を革ベルトの腰に差し、外へと歩み出た。
「メル、遅く寝ずにちゃんと早く、寝るんだよ」
「ロキシー後は任せたぞ」
「はい!シュゴ様、オルハート様、お気をつけて!」
オルハートとシュゴが、迎えの馬車に乗り込む姿を、部屋の窓からジッと見つめるメル。ロキシーが、夕飯の買い物に行こうかとメルを誘った。
「そうだ!今日は、何か作ろうかと思ったけど、せっかくだし、メルの好きなダルさんのお店で晩御飯を食べに行こうか?」
不機嫌なメルの顔がパッと明るくなり、椅子から立ち上がると、まだ夕飯時じゃないに、ロキシーの腕をグイグイと引っ張っていた。
✧───王の間── ✧
馬車が王宮の前で止まると、執事が馬車の扉を開けた。
「ようこそおいでくださいました。レオハート王太子殿下、シュゴ様。王の間へと、ご案内致します」
広い王宮の長い廊下を歩くと、重厚そうな扉の前で執事が立ち止まり、振り返るとお辞儀をした。
「こちらで、カール国王陛下がお待ちでございます」
執事が扉がギギッと開くと、高い天井には、幾つもの大きなシャンデリア、装飾品や調度品などが煌びやかに輝き、オルハートたちは、赤い絨毯の上をゆっくりと歩く。玉座の近くで、オルハートが先に、右膝をつき頭を下げ、その後ろでシュゴも同じように右膝をつき頭を下げると、カール国王陛下が
「よく、我が城へ来たな。オルハート」
「カール国王陛下にご挨拶を申し上げます。オルハート・アバンド・オリエンダ、月が輝く今宵の謁見をお許し抱き、大変嬉しく思っております」
オルハートが、スっと立ち上がり、左胸に右手の掌に触れるようように、礼拝をする姿に、カールが声出して笑う。
「はっは!そう固くなるな。して、ノワールの調子はどうだ?」
少し間を置いたレオハートが、顔を少し上げ、彼の表情で察した、この国の王、カール・マルス・ハーバンド国王陛下の眉尻が、下がった。ノワールより体つきが、がっしりしていて、白い髭と、左目の古い傷、どっしりとした風貌に齢50を過ぎても誰もが、固唾を飲むほどの威圧感に、倒れる者もいるそうだ。ノワールとは、若いときに肩を並べ戦ってきた、戦友の仲間が、床にに伏せっても、何もしてやれない歯がゆさと、海を越えてやって来た倅の姿を、昔のノワールに見せてやりたいとさえ思いながらも、書簡に書かれていた要件を、側近から手紙を受け取り読み返していた。
「我が国の禁書の開示、周辺の捜索、滞在、これは構わないが、エルフ族の⋯⋯とは、なんだ?」
「――奴隷商人から、エルフの子供を行きの船で買いました。その時は、エルフの子供でしたが、ある朝、彼女が目覚めた時には、大人の姿のエルフに変わり、金色の髪色が白銀の髪色に⋯気になり調べた方がよいかと」
「ほう。それはなかなか、奇妙だな。」
カール国王陛下が玉座の肘掛に頬杖をし、髭を触りながら、オルハートの話を興味深そうに聞いていた。スっと手を上げると側近が近づき、何か耳打ちをすると持ち場から側近下がり、暫くして王の間の扉が開くと、中に人が入ってきた。
「国王陛下、お呼びでございますか?」
「キールに、お前に聞きたいことがあってな」
「それは何でございましょうか」
オルハートが、先程の説明をすると、話を聞いたキール︎︎ ︎︎ ︎︎
・ラバンの顔色が変わった。後日、そのエルフの子を連れて王城で会えないかと、聞かれオルハートは、快く承諾をした。それら禁書の鍵を側近から預かり、少し表情が和らぐオルハートに、カール国王陛下が
「さて、大事な話も終わったことだ。今夜は、ノワールの無事を祈り、皆で晩餐にしよう」
「では、晩餐のご用意を」
✧ ─────────── ✧
王の謁見が終わり、晩餐の準備が整う間、客間に案内をされ、部屋の中に入ると、先ずはと、襟元の金具を外し、椅子に腰を下ろすレオハート。すると、 廊下を誰かが走って来る音が⋯⋯シュゴが嫌な予感がし、部屋の扉を開けると、ピンク色の派手なドレス姿の女性が、部屋の中を除きキョロキョロと誰かを探している。指や耳には煌びやかな装飾品の宝石がキラリと輝いて、首元と胸は、大胆に開いているドレス姿に、シュゴが手で顔を覆うと、栗色の巻き髪の女性が、ドレスの裾を掴んで、椅子に座って寛ぐオルハートの姿を見つけると、小走りで部屋の中を走り、彼の頭をがしっと両腕で掴んで、豊満な胸を頭に押付けた。
「オルハート様お久しぶりですわ!お父様に、オルハート様がお越しになられたと聞いて、シェリー嬉しくて、つい来てしまいましたの!見ない間に、また背が伸びましたか?漆黒の髪も長くなり、ますます素敵な殿方に!」
元気すぎる彼女の名は、シェリー・マルス・ハーバンド第一王女殿下。彼女の弾丸トークの後ろで、シュゴはこの光景を何度か見てるので、どうするかと思っていると、オルハートが優しく、シェリー王女殿下の体を引き離すと、椅子から立ち上がり右膝をつき挨拶をした。
「シェリー王女殿下、私もお会いできて光栄です」
オルハートが右膝をついたまま、彼女の右手を取ると手の甲に軽くキスをして挨拶をする彼の凛々しい姿に、左手を頬に当てて、喜ぶシェリー王女殿下。後を追いかけてきた侍女たちが、息を切らして、お支度をと彼女を連れ帰ってくれた。
「相変わらずだよな」
シュゴの一言に疲れが、増すオルハートだったが、晩餐会は、恙無く終わるのでした。
✧ ─────────── ✧
「お腹一杯!」
「あれだけ、食べたら⋯⋯」
メルの食欲の凄さには、ロキシーですら驚いてしまう。
「だって、ダルの作るご飯美味しいんだもん!」
足を上下に揺らし、テーブルに頬杖するメルの言葉にダルが皿を持って、席にやってきた。
「ほら、メルサービスだ!」
メルの好きな木苺のプディング。それも美味しいと食べる姿に、ロキシーは、まだ食べるのかと苦笑いしながら眺めていた。
「ダル、また食べに来るね!」
「次は皆で来いよ!メル!」
「ダルさん、ご馳走様です」
店を出るとメルが、自分のお腹を撫でながら、家路に向かって歩いていた。ダルの店から家は、さほど離れていなく歩いても数分の距離。家の前で突然、黒い影が三人現れ、ロキシーとメルの前に立ち塞がるのだった⋯⋯
少し長く執筆になり、読みづらいかもでしたが、いかがだったでしょうか?服装を細かく描写にして執筆することの難しさと言ったら⋯⋯苦戦したので、それと近しい表現だと読んでいただけたらと。
次回は、少し伏線が変わりロキシー編を執筆していきたいと思いますのでお楽しみに!
アマチュアでの活動の為、描写や表現不足、誤字脱字、漢字変換ミスなどまだまだございますが、生暖かい気持ちで読んでもらえると嬉しいです。
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