名前を君に贈ろう
エルフの子供との生活をする、レオハートたち。日に日に、表情も柔らかくなったエルフの子供だったが船の旅も終わりに近く、レオハートたちがエルフの子供を引き取るか悩んでいた────
朝日が船室に差し込み、船室の窓を開けると窓から潮風と静かな波の音が、レオハートの朝の知らせを伝えるようだった。
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後、数日の航海で、目的地のハーバンドに到着すると船員からの知らせを昨夜聞いたレオハートは、どう手がかりを探していくか、船室の椅子に腰をかけ、本を読みながら考えていた。
「⋯⋯レオ兄、おはよう」
エルフの子供が、寝室から裸足で床板をぺたぺたと歩いて、船室で本を読んでいる、レオハートに朝の挨拶をした。エルフの子供は、眠そうに目を擦る彼女の頭を撫でながら、朝の挨拶を返した。
「おはよう。よく眠れた?もうじき、食堂で朝食だから、顔を洗って、着替えてきなさい」
レオハートに言われ、エルフの子供が小さく頷くとぺたぺたと、裸足のまま洗面所まで歩いて行く姿にレオハートは、彼女に靴がないことに気がついた。
「おはようさん」
「おはようシュゴ、今朝は船酔い大丈夫なんだ」
パラっと本のページをめくるレオハート。
「今日は、波がまだ穏やかだから、平気だ」
シュゴも何だかんだと、面倒を見てくれているのは、幼い時に母上の執事だったからだろう。
「おっ、ちゃんと着替えてきたな」
「シュゴおじちゃん、おはようございます」
「おじちゃんではなく、お兄ちゃんだぞ」
エルフの子供が、シュゴの顔をジッと見つめ首を傾げたが、すぐに首を左右に振る姿にレオハートが、本で顔を隠し笑いを堪えて見ていた。
「ほら、その椅子に座れ。髪をとかしてやるから」
食堂に行く前に、エルフの子供の長い髪を、シュゴが毎朝、ブラシでとかし、髪を結う朝にいつの間にか、賑やかな朝になったなと、レオハートが本を閉じ机に本を置いて、椅子から立ち上がった。
「さて、食堂に行こうか。」
食堂に向かうと、コック長が、今朝のメインは、オムレットだとエルフの子供に、お皿をテーブルに置くと、エルフの子供の瞳が輝く。その他のメニューは、ソーセージ、サラダ、焼きたての白パンに、今朝のジャムはママレード。エルフの子供の飲み物は、牛乳を出してくれた。
「嬢ちゃん!いっぱい食うのが、子供の仕事だから、早くおっきくなれよ!」
レオハートたちの食事も運ばれると、皆で食事を食べ始めた。エルフの子供は、特に焼きたての白パンが好きになり、ふかふかでほんのり温かく、香ばしい小麦の香りを、楽しむように食べていると、肘がグラスに当たりテーブルにミルクが、零れてしまった。
「⋯⋯レオ兄、ごめんなさい⋯⋯ごめんなさい⋯⋯」
さっきまで、笑顔だったエルフの子供がワンピースの裾を掴んで、怒られると思ったのか、俯いて震えていた。レオハートが、椅子から立ち上がると、屈んでエルフの子供に手を伸ばした。ビクッと体を強ばらせる、彼女の頭を優しく撫でるレオハート。
「ミルク、服にかかってない?」
隣に座ってたシュゴが、配膳係に、布巾や新しいテーブルクロスを取りに行くと、零したミルクを布巾で綺麗に拭いて、汚れたテーブルクロスを外すと、綺麗なテーブルクロスが、バサっと広がりさっきまで、並んでいた、お皿が綺麗に、彼女の前に並ぶのを、エルフの子供が、目を見開いて見ていた。
「おじちゃん、魔法使いなんだよ」
「シュゴおじちゃん、魔法使い?」
「魔法使いではないからな!子供は、少しくらい、やんちゃが、丁度いい。レオのお母さん見たいには、なるなよ!じゃじゃ馬で────⋯⋯」
食べ終わると、少ししてから、服や靴を売っている店で、立ち止まった。
「この子が、履ける靴を何足か見繕って欲しい」
「あいよ。さあ、お嬢ちゃんこっちに座って」
ぺたぺたと裸足で床を歩く姿に、ずっと抱いて移動してる癖で、靴のことを忘れていたレオハートは、エルフの子供に靴を、プレゼントしようと思っていた。
「レオとりあえず、ハーバンドに着いたら、エルフの子は、どうするんだ?」
「奴隷商人に売られていたなら、親もどうか分からないし、彼女がどうしたいか、買い物が終わったら聞くつもりだよ」
「そうか。あまり甘やかしすぎると、離れるのが辛くなるぞ。お前も、あの子も」
レオハートが、小さく頷いた。店主に、エルフの子供の名前を聞かれたが、名前を決めてしまったら、情が湧いてしまうと思って戸惑っていた。店主が、何足かの靴を見繕ってくれて、それを包んでもらってる間に、ワンピースや下着も何着か買い足し、レオハートたちは、一度、船室へと戻った。
船室のドアをシュゴが閉めると、レオハートが、椅子に座り、エルフの子供を座らせ、真剣な顔でエルフの子供の顔を見つめた。
「君の親は?」
椅子に座ったエルフの子供が、小さく反応をし、首を左右に振って、小さな声で分からないと答えた。
「住んでる街や、国の名前とかも分からない?」
頷くエルフの子供。小さくため息をついたレオハートが、重い口を開いた。
「俺たちは、ハーバンドに用事がある。ずっと君の面倒を見るのは、正直厳しい。だから、ハーバンドに到着したら、街の協会で、君を孤児として引き渡そうと思ってるんだ────⋯⋯」
レオハートがそう伝えると、エルフの子供が俯いて、体を震わせながら、泣いていた。
「⋯⋯いい子にし、ます⋯⋯捨てないでくだざい⋯⋯」
声を出して泣かず、ただただ俯いて泣く姿にレオハートが、シュゴの顔を見上げた。エルフの子供が座ってる椅子の前でシュゴがしゃがむと、頭をワシワシと強めに頭を撫でた。
「一人で留守番になるし、寂しい思いするかもだぞ?いいのか?」
小さく頷くエルフの子供に、シュゴが立ち上がり、レオハートの肩に手を置いた。エルフの子供も一緒にハーバンドを旅をすることが決まった。
「まずは、お前の名前を決めなきゃな。前の名前とか覚えてるのか?」
シュゴに聞かれるが、首を横に振るエルフの子供。男二人が悩みに悩んで、レオハートが、ぽつりと海にちなんだ名前『メルリアーナ』と呟いた。一方で、『サリー』と名前を口したシュゴだが、名前を聞いたエルフの子供は、首を大きく左右に振って嫌がっていた。
「メルリアーナって名前はどうかな?メルって呼べるし」
レオハートが、彼女に聞くと顔を上げて、嬉しそうに笑うので、メル呼ぶことにし、二日後の昼ごろ、目的地の『ハーバンド』に到着予定だ。
船の航海を、小説の描写にしたことがなくいろいろと調べたりして執筆してきましたが、楽しんでいただけたでしょうか?次回から、ハーバンドの旅を執筆していけたらと、思っています。
描写の表現不足、誤字脱字、漢字変換ミスなどまだまだございますが、生暖かい気持ちで読んでもらえたら嬉しいです。
読書の皆様に作者からのお願いごとです。
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