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鎖に繋がれたエルフの子供

船旅を楽しむレオハート。そんな中、船で奴隷商人がエルフの子供を、競りに出すのだが、レオハートは助けるのか?


船が海を航海して、2週間が過ぎた。レオハートとシュゴが船の外の甲板(かんぱん)に出ると、一面に大海原が広がり、潮の香りと、カモメが鳴いて飛んでいるのを、ブルワークに、体を傾けるようにもたれ、海を眺めるレオハート。隣では、シュゴが酔い中。レオハートが、船酔いに効く薬をシュゴに渡すと、携帯用の水筒で薬を流しこんだ。


「⋯⋯レオ、少し横になってくる」


シュゴは、船の甲板から離れ部屋に戻って行った。


貴族が多く乗船している中で、奴隷を売りに行く奴隷商人や、布、薬、果物などあらゆるアイテムを、隣国『ハーバンド』に売りに行く、商人などが、乗船していて船内は、賑やかだった。


✧─────────── ✧

少し喉が渇くのを感じ、レオハート侍女に葡萄酒を頼んだ。暫くすると、銀のトレーを持った侍女がレオハートの注文をした葡萄酒を運んできた。トレーを侍女が少し下げると、レオハートは、葡萄酒の入ったグラスを受け取り、ブルワークにもたれながら片肘を鉄の縁に乗せ、葡萄酒を飲みながら、心地いい潮風に当たっていた。


✧─────────── ✧


「さあさあ!見ていってくれよ!船の中じゃあ、退屈だろうから、この奴隷を買うやつはいないか!」


大柄な男が、手に持った鎖を引っ張りながら、甲板に出てきて客を引き寄せる。小さな女の子が引きずられ、鉄の首輪が子供の首にくい込み苦しそうにもがいていた。奴隷制度は、レオハートの国では、随分昔に廃止になったが、他の国ではそれを生計にし生きている人間もいることを、知っていたレオハートは、飲んでいた葡萄酒が不味くなり、甲板から離れようかと、足を踏み出した。


「あの子、エルフの子供だ。高値が付くだろうな」


「さて、いくらになるんだろうな」


集まって来た客が、手で顎を擦りながらエルフの子供を、好奇な眼で見るものや、ゲラゲラと笑いながら性的な発言をする男たちに、レオハートはため息を漏らした。


「さあ、さあ、早い者勝ちだぞ!金貨1枚から、手を上げろ!」


「金貨3枚!」「金貨15枚!」「くそ、絶対俺が買うぞ!金貨25枚でどうだ!」


競りのように、金貨が跳ね上がり奴隷商人が、他にはないかと、声を上げていた。


『い· · · · ·誰か、助けて────⋯⋯』


レオハートが、振り返ると、エルフの子供が、俺を見つめ涙を流す姿に、ドアを開ける手を降ろした。


「金貨25枚で、終わりか?」


商人か落札と言いかけた所で、レオハートが、奴隷商人の前に立つと、透明の筒の中に、金の粒が一粒光り奴隷商人に渡した。


「これで、足りるだろ?」


「おい、兄ちゃん金貨って言葉を知らねーのか?」


汚い顔をレオハートに近付け睨むと、レオハートが目線を上げた。


「ヒィッ」


「足りるか?」


「金を貰わなきゃこっちだって、困るんだよ!」


金貨は、必要な時だけ、換金所で金に変えていたレオハートは、手持ちがなくどうするかと悩んでいると、人混みをかき分けるように、眼鏡を掛けた男が、レオハートたちの側まで見に来ると、筒に入った金の粒を見せてもらうように、奴隷商人にお願いをしていた。


「私の名前、ロバートと言います。レアアイテムや、金などの鑑定士をしていますので、こちらの金の粒を見せていただいても?」


金の粒が入った透明の筒を商人から受け取ると、ロバートは、胸ポケットからルーペを取り出し査定を始めた。✧ ─────────── ✧


「こ⋯⋯これは、ただの金の粒ではありませんよ!純金です!これを換金所に持ち込めば、城が買えるほどの金貨になります!」


ザワザワと観客たちが騒ぐ中、目の色を変えた奴隷商人が持ってた鎖を、レオハートの前に投げ捨て首輪の鍵を貰うと、奴隷商人はその場から立ち去って行った。


「所で、貴方は、王族関係の方ですよね?」


ロバートが、耳打ちで話すが、レオハートは何も答えず、床に倒れたままのエルフの子供の首輪を鍵で外すと、フワッとその子を抱き抱え甲板から船内へと戻って行った。


✧ ───船内─── ✧


船員の中には、お手伝いをする侍女も乗っていて、レオハートが、侍女の部屋の扉を叩いた。ガチャっと扉が開くと貫禄のある侍女が、レオハートが抱えている、小さな女の子を見て驚きながら、聞いてきた。


「あらまぁ。どうしたんだい?」


「すまないが、この子に湯浴みと、子供が着れそうな清潔な服と髪を、整えてはくれないか」


「旦那様、畏まりました」


レオハートが、代金を払うために腰に着けた巾着から、筒に入った金の粒を取り出そうとした時、侍女が首を振って、銀貨5枚とエルフの子供の服代に、銀貨3枚をと言われ代金を払った。エルフの子供を侍女に任せ、その足で、食堂のコック長を尋ねることにした。


「何か食べやすい料理を、コック長に頼んで────⋯⋯」


コック長に、消化がよく栄養のある料理を注文をし、帰りの廊下でエルフの子供を任せていた侍女に会った。侍女の手を握ったエルフの子供を見て、驚くレオハート。


エルフの子供の髪は灰色に汚れ、ボロ雑巾のような服を身につけいたが、戻ってきた姿に驚くレオハート。エルフの子供の髪は、金色に輝き、青いリボンで髪を結び、肌も白く、瞳の色は、透き通る海のような青色の瞳に、水色のワンピースを着ていた。


侍女にお礼を言うと、レオハートに小さく頭を下げ仕事に戻って行った。エルフの子供の目線に合わせ、レオハートが、屈むと頭を優しく撫でた。


「次は、俺と一緒に食堂で、昼食だ」


エルフの子供は、何も答えないまま、レオハートのズボンにしがみついたまま、動かなかった。

エルフの子供を、優しく抱き上げ、食堂まで歩き出すレオハート。食堂に着くと案内された席に、エルフの子供を椅子に座らせ、レオハートも隣の椅子に座った。


「さあ、お嬢ちゃんたっくさん食べな!」


ドンッとコック長が、皿をテーブル置いた。野菜とお肉がゴロゴロ入ったスープに、隣のお皿には焼きたての白いパンと、木いちごのジャムが添えられていた。エルフの子供は、見たことがない豪華な料理を見て、目を見開いてびっくりしているが、食べようとはしなかった。お腹の虫が鳴り続けているのに────⋯⋯


「パンはちぎって、ジャムにつけて食べるんだよ」


レオハートが小さくパンをちぎると、白いパンから、湯気がふわりと立ちのぼって、木いちごのジャムをパン付けると、エルフの子供の口に運んだ。パンはふわふわで、柔らかくて、ほんのり温かく、甘酸っぱい木いちごのジャムが、口に広がったのか、エルフの子供の瞳が、キラキラと輝いていた。


「スープは、このスプーンを持ってね。熱いから、冷ましてから食べるんだよ」


レオハートが、冷ましたスープを、エルフの子供の口に運ぶと口をまた開けて、スープが喉を通る音が聞こえた。エルフの子供の瞳から、ポタポタと溢れる涙を、レオハートが、ハンカチを取りだし涙を拭った。


「い⋯⋯おいし⋯⋯」


「コック長が聞いたら、喜ぶよ。さあ、続きを食べよう」


エルフの子供にスプーンを持たせると、奴隷として扱われ、満足に食べさせてくれなかったのだろう────⋯⋯

ガツガツと無心で、スープやパンを交互に口の中にほうばりながら、慌てて飲み込んでいた。


「誰もお前のご飯は、取らないから、もう少しゆっくり食べるんだよ」


エルフの子供は、涙を流しながら小さく頷き、さっきよりかは、ゆっくり食事が出来るように。少しむせながらも、追加したスープまで、全部ペロリと完食をしていた。いい具合に、お腹が膨れたのか、エルフの子供は、椅子に座ったまま、コックリコックリと首が項垂れ、夢の中へ。


「嬢ちゃん!最後のデザート持って来たぞ!って、寝ちまったのか⋯⋯」


✧ ─────────── ✧


レオハートは、椅子の上で眠ってる、エルフの子供に近付き、しゃがみこむと、背中と膝の裏に、そっとレオハートが手を回した。ゆっくり立ち上がると、エルフの子供の頭が、コテンとレオハートの胸に寄りかかっていた。起こさないように、自室のドアを開けると、寝室のベッドまで運び、ゆっくり起こさないように、腕をほどいた。レオハートは、部屋の椅子に座り静かに本を読んでいた。


「レオ、入るぞ」


「シュゴ静かに」


シュゴは驚いた顔で、寝室で眠っているエルフの子供を見ていた。


「噂が、流れてきたぞ」


気にもせずに読書を続けるレオハートに、シュゴが聞いた。


「でっ、このエルフの子供どうするんだ?」


「まだ、決めてない」


「レオ⋯⋯お前、まさか一緒に、ハーバンドに、この子供を連れて行く気か?」


シュゴの大きな声で、エルフの子供が起きてしまった。

梅雨のジメジメとする月曜日。第2期も3作目の投稿になりましたが、お楽しみいただけだでしょうか?

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