騎士の道
すれ違ったままの親子。早い反抗期を迎えたレオハートは城を出ると、騎士の道へ進もうと決心するのでした。
第13話 始まります。
あれから2年の月日が経って、僕は7歳になった。
お城に住むようになってからは
僕の毎日はガラリと変わった。
父上と呼んでくれと、呪いのように
毎日飽きもせずに、言いに来たり
毎朝、剣の稽古にいの一番に訓練場で
仁王立ちで待ってたり、勉学の時間にはノックもなしに扉をバーンッと開けて、家庭教師の先生はビクビクしながら小声になるし、とにかく四六時中僕の目の前に現れては、父上だぞアピールにうんざりしていた。
「さあ、レオ!父上と呼ぶといい。何なら、ノアでもいいぞ!」
目を開けると、この人は凝りもしないで
また僕の勝手にベッドに潜り込んで
ニコニコと人の寝顔を見てご満悦なんだろうか…。
「...い、い、い、」
「んっ?」
「いい加減しろぉぉお!!!!」
バタバタと執事たちが走って
僕の部屋の扉を開けると怒り狂って
息切れをしながら怒鳴り散らす
レオハートを見てオロオロしながら宥めてると
誰かの靴音がカツカツと鳴らしながら
ベッドでご満悦なノワールの首襟を掴みながら
「陛下、いい加減にしてください。」
ロイが首襟を掴んでズルズルベッドから
引きずり下ろすと、ノワールが
「あーもう少しで、父上と呼んでくれたのに!離せロイ!」
「駄目です。王子に嫌われていいのですか?」
「ぐっ…。それは嫌だな。」
「さっ、朝も昼も公務が溜まってますので、早く着替えて仕事してください。」
ズルズル引っ張られるノワール。
ノワールは、手を前に出して我が息子よと
嘆きの声を出しながら部屋の扉が閉まった。
「何だ何だよ。毎朝、毎朝...。毎朝だけじゃない、どんだけしつこいんだよ!」
椅子にドカッと座るとシュゴの笑い声が
聞こえて部屋の扉を見るとカートを押しながら
「そろそろ、坊っちゃまも観念してみては?」
「絶対、嫌だね。あんなのが父上とか絶対呼ばない。」
フンッと鼻を鳴らして腕を組んでプイッとすると
シュゴがクックと笑いながらレオハートに
「陛下の剣技は、お認めでしょ?」
「悔しいけどね。」
チッと舌を鳴らしながらも照れくさそうに
言うレオハートに、クックと喉を鳴らして
笑うシュゴに、レオハートが怪訝そうに咳払いをした。
そんな日常が続いたある日
「レオ!今日こそは、父上と呼んでみるといい!」
自室のソファーで本を読んでると
またノックもせずに部屋の扉をいきなり
勢いよくバンッと開けて部屋に入ってくる
ノワールに、パタンと本を閉じると
レオハートが大きなため息をついて
「まだ、公務の時間でしょうに。お帰りください陛下。」
冷たい瞳と口調で言われてもニコニコ笑いながら
レオハートに、熱弁してくるノワールに
苛立ちを覚えてバンッと机を叩くと
「いい加減にしてください!貴方を父とも家族とも、思ってもいません、認めていませんし、これから先も認めるつもりもありません。母上とこれまで通り慎ましく、この城を1日でも早く出て、母上の屋敷に戻って平穏に暮らして行くつもりなので。」
シンッと静まり返る室内。これだけはっきり
言えば、ノワールも大人しく引き下がると
レオハートは思った。
「そうか...。すまんな、読書の邪魔をして。」
呆気なく部屋を去るノワールの後ろ姿に
ようやく、明日から静かに勉学や剣技の稽古が
出来ると思っていたが...。
「何で、馬車にお前が乗ってるんだ!!」
母上が街に行くと言うから心配で馬車に乗ると
まさかノワールまで行くとは思わず
怒りで馬車の中で怒鳴り散らす、レオハートに母上が
「レオ、いずれ国の王になるんですから、今のままだと立派な君主には慣れないのです。」
「興味なんかありません!」
「レオ!」
コンコンと馬車を叩くと、御者が馬車を止めると
レオハートが扉のドアノブに手をかけた。
「僕は、王にはなりたくもなければ、父も要りません。どうしてもと仰るなら、母上、僕は騎士の寮に入りに行きます。」
馬車から下りるとスタスタと歩いて城に戻る
レオハートをシュゴが追いかけた。
「頑固さは、私に似たのかしら...。」
額に手を当てて項垂れる悲しげなリズを見た
ノワールがリズの肩を優しく抱き寄せると
リズはノワールの肩に頭を持たれかけ手を握りあった。
「こんな城、1秒たりとも居たくない!」
バンッと自室の扉を乱暴に開けると
クローゼットからトランクを引っ張り出して
服や下着、靴下など必要そうなものを詰めて
執事に馬車の用意をさせるとシュゴが部屋に入って
「本当によろしいのですか?」
「いいんだ!もう、こんな生活は嫌なんだ!」
苛立つレオハートの姿を見てシュゴは
小さく肩を落とし、馬車に一緒に乗り込むと
シュゴと一緒に、騎士寮まで一緒に向かった。
「君が、レオハート王子かな?」
部屋の扉の前で深くお辞儀をし挨拶をする
レオハート。
「はっ!イネル・ハンス閣下、突然の訪問失礼します。」
「いやいや、構わないよ。さあ、掛けてくれ。」
イネル・ハンス閣下は、国で一番の剣士で
騎士に対しての志も信念の熱い男なら誰でも、
憧れる職の一つだ。
閣下は歳からして、あの大嫌いな人と歳が
変わらないのに落ち着いた雰囲気、物腰柔くて
何より背がスラッと高く、白い騎士服には
金色の称号のタイピンが幾つも右胸に輝いていて
金色の細い絹糸のように、長い髪を赤いリボンで
一つにまとめていて、瞳の色は モスグリーン。
その瞳や眼差しは優しさと獅子が眠るような闘志が瞳の奥に燃えていて、隠れた気迫にずっと僕は憧れていた。
「しかし、君はまだ7歳だ。訓練は15歳からしか受けられない、騎士学校で8年学問、騎士寮では、雑務や下積みをしながら通ってなるが、異論はあるかな?」
ソファーの椅子に深く座る、イネル閣下が
レオハートの目を見て、話すと
僕はスッとソファーから立ち上がり
イネル閣下の前で両足をビシッと揃え
握った右手の拳を右胸に添え、左は後ろに組みながら
「はい!異論はございません。8年間、若輩者ですがよろしくお願いします!」
自分の信念を伝えるとイネルは
レオハートに優しく微笑みながら
僕の肩に、手を置いて微笑む姿を見ると
こんな人が父ならよかったのにと憧れも抱きながら、レオハートの胸は熱くなっていた。
「して、イネル閣下!一つ、お願いが...。」
レオハートの身分を明かさないようにして欲しいと
伝えると、イネルがレオハートに
「分かった。明日は、規律や訓練所など見学するといい。」
「はっ!では、明日からよろしくお願いします!」
レオハートが深くお辞儀をしながら部屋を後にすると隣に繋がった部屋から、ドアが開く音がすると
「よかったのか?」
「ああ、レオがやりたいようにやらせるよ。」
「まだ7歳だぞ?大人ばかりなのに、大丈夫なのか?
」
隣のソファーに腰を下ろすのはノワールだった。
ノワールはフッと笑うと
「可愛い子には、なんとやらだよ。」
「はぁー。とりあえずは預かるよ。」
「すまんな。持つべきなのは、よき戦友だ。」
ハハッと笑うノワールに、似た者親子だと
イネルは苦笑いしながら
ノワールを見つめるのでした。
ー第1章完ー
少しずつエンジンがまたかかって来たかな?と
執筆活動に意欲を持ち出した作者です。
まだ、もう少し親子のわだかまりが残りつつも
いつか、レオハートが父上と呼ぶ日が来ることを
願ってる作者でもあります。
これにて、第1章編は終わりになりますが
第2章からは、レオハートの成長した姿、また
ハラハラした場面や、ドキドキストーリー
リズとノワールも登場したりしますのて
ブックマークへ投稿まだの方や、新しい仕様に
なりましたが、いいね評価、☆評価などよろしくお願いします!(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”




