ノワール
平穏な日々に結婚目前に控えた2人に何かが起きる。
第9話 始まります。
ノワと、一つになれたあの夜は夢の時間のように
感じた。翌朝、ノワと目覚めてずっと抱きしめたままなかなか離してくれず、ロイがドアの扉を何度も叩いてたっけ。ノワが動けない私を湯浴みに連れてってくれて洗ってくれたり。
それから、我が家に帰ったらお父様が
気難しそうな顔していたけど、ノワが結婚しますと
まさかの婚約じゃなく結婚する宣言に
お母様は、「まぁ!」なんて、手で口を隠して
驚きながらも、喜んでくれたわ。お父様は、複雑な顔しながら任せたと言ってたっけ。
それから、私は一度バルバードお兄様の
家に戻って、記憶全て戻った話やノワールとの
結婚の話をしたりした。お義父様やお義母様たちから「おめでとう!」「幸せになるんだよ。」「いつでも遊びに来てね。」
祝福の言葉をもらったけれど、バルバードお兄様の表情が曇った。
「お疲れですか?バルバートお兄様?」
「嫌、少し考え事をしていただけだよ。おめでとう。」
パッと表情が弾ける笑顔の彼女の幸せそうな
想いに私は、奥歯と拳をギリっと噛み潰した。
マーブルがそれを見逃してはいなかった。
「バル、ちょっと。」
廊下を歩いてる私をマーブルが呼び止めた。
「その顔、あんたやばいよ。」
「何が?」
「はぁ。片想い拗れ弟よ。今にも連れ去りたいような顔して、彼女を独占しようとしてる。」
「…。」
姉は、観察力や周りの空気、雰囲気に敏感だ。
人の思考まで読んでいるようで、ある意味怖い存在だ。
「どうするの?」
「どうするも、何もないだろ。」
「今更、言って、何か変わるんだっ!」
バルバートが苛立ち廊下の壁をガンッと殴ると
ビリビリと振動が廊下に響いた。
「ヤケだけは起こさないでよ。」
マーブルが立ち去ると、私の中で色んな感情が
ドス黒いモヤのように胸を締め付けた。
「どうすればいいか分からないんだ…。」
そんな気持ちのまま、リズは彼の待つ国へと
帰って行った。
(バルバートお兄様、何だか思い悩んでた顔をしていたけれど、大丈夫だったのかな。)
帰る道中の馬車の中で考えことをしていた
リズだったが、ノワールに逢えると
そんな悩みもすっかり忘れてしまっていた。
結婚の準備が進む中、いつものように
ノワールと同じベッドで眠って、同じ朝を迎えて
お互いの温もりを感じながら目を覚ます日課が
幸せな時間が流れていた朝に
「殿下!!緊急伝令!」
ロイが部屋の扉をドンドンッと激しく叩く音に
2人はベッドから起き上がるとノワールが
「入れ。」
ロイがベッド前で膝をついて報告をした。
「国境付近にて、ラザール国の軍勢の報告あり。」
バッとノワールがベッドから飛び起き立ち上がると
リズは反射的にノワールのパジャマの裾を
ギュッと掴んで小さく震えていた。
「すぐ行く。全軍にて待機せよ。」
「はっ!」
扉が重く閉まる音が響いた。
リズが、ベッドに座って震え
ノワールがソッとリズの隣に座ると
リズを優しく抱きしめると
耳元でいつもの優しい声色で
「リズ、大丈夫。すぐ帰って来るから待ってて。」
「嫌、一人は嫌っ!」
リズは首を左右に激しく振って、泣きながら
私の手を離さない。けれど、緊張状態の国同士が
我が国に攻めて来たら、王太子が前に出なければ
ならはいのも、未来の王として守らないと行けない責務がある。
「お願い、ノワ行かないで…。」
(こんなにも、泣きじゃくるリズを見たのは
記憶が戻った以来か…。)
ノワールがグッと喉がなるのを飲み込むと
リズにキスをした。
「リズ、聞いて、俺は死ぬんじゃない。
国や民を、愛するリズを守りに行くんだ。
王太子妃として、待ってていて欲しい。」
「絶対に、死なない?絶対、帰って来る?」
「ああ。約束しょう。リズを残して死なない。
帰って来たら結婚式をして、リズの傍からもう離れない。」
「ノワ、待ってる…。」
リズの瞼に、頬に、唇に、指や手の甲、首筋に
ノワールが約束のキスをすると足早に部屋を出た。
帰って来ると約束したとは言え、本当に戻る保証も
なければ、国同士の戦争はリズでも恐ろしいと
思うほど悲しい涙がすすり泣く声や不安で溢れる。
リズは声を押し殺すように泣いて、ノワールの
温もりが消えそうなベッドの隣をさするように
シーツに顔を埋めるように泣いた。
どれくらい時間が過ぎたのか
気が付けば、出陣前の軍や騎士たちの慌ただしく
廊下を王城を走る足音にリズは今できることを
考えると侍女のミルティー従者シュゴを呼び出すと
国民を王城の地下に避難誘導、炊き出しや必要な
支援を優先するよう王太子妃として命令を出し
リズなりに国をノワールや騎士や軍が
命をかけて守ろうと出立した思いを繋げればと
リズは涙を拭いて彼を待つことにした。
ラザール国との戦争が半年続き
ノワールの安否もまだ聞こえてこないことに
リズは王城の教会で毎朝誰よりも早く祈りを捧げていた。侍女ミルティーがリズに
「王太子妃殿下、王太子殿下の報告が。」
電報が早馬で王城に届くと伝令騎士のサイルが読み上げた。
「国境付近の交戦は、ラザール国撤退、我が国が勝利。」
ホッと胸を撫で下ろすリズに空気が変わった。
「ノワール王太子殿下の安否不明、消息不明。」
一瞬で目の前が真っ暗に変わり
リズの体中の血が全て無くなるよう感覚に
リズがスッと立ち上がり、ふらつく足取りで
サイルの元に歩くとトンッとリズがぶつかった。
「ノワは?」
「王太子妃殿下…。」
「行方不明って?」
半年我慢していた不安や、いつ戻るか分からない
いつ死んでもおかしくない戦火の中に
ノワールが帰って来ない、どこにも居ない
緊張と不安でザワつく気持ちを半年押し殺していた糸がプツリと切れたリズが
「今すぐ馬を…。」
「王太子妃殿下、まだ安全が保証された訳では…。」
「いいから、早馬を!用意せよっ!」
大声でリズが叫ぶと、城の外まで走った。
いつでもノワールの元に行けるように
男の服装をし髪を短く切り、リズなりに動けるように準備をしていた。早馬に跨るとリズは国境付近の
野営場所まで馬を走らせた。
「リズ様!」
ロイが駆け寄りリズが馬から降りると
「殿下は?ノワは?何処?」
「それが…。」
ロイがテントで説明をした。
野営地に戻る道中に負傷した
騎士たちを指揮する中、降伏したはずの
敵国ラザール国の兵士が崖の上から待ち伏せし
ノワールの右胸に矢が刺さると馬に乗っていた
彼がバランスを崩し、濁流に落ちたと。
咄嗟に従者のギイが川に飛び込んだ姿を
ロイが見たのが最後だと。
リズの目の前が真っ暗になり
震えが止まらなくなっていた。
「ノワ…。」
膝から崩れ落ちるリズを見てロイや
リズの従者シュゴがリズを支えた。
「ノワの馬鹿!帰るって、帰るって約束したのに…。」
ずっと我慢していた想いが溢れ出し
一筋の涙が頬をつたうリズの涙に誰もが
ノワールの無事を願うのだった。
投稿が遅くなりました(*ᵕ ᵕ)"
仕事も始まり、どんなストーリーにするか
数日悩みました。