第六十六話 謝罪は許しません
次回の更新は再来週(2/18)予定です。
また、過去の話を更新予定です。
旦那様が放った紺色の魔力が止むと旦那様の敵は下半身を失っているのに宙に浮いていました。
「……しくじった、ね。はあ、かなり削られたかな。でもね」
眩い光に思わず目を瞑ってしまいます。だけど身体を動かします。何故なら──
(前に、剣を)
旦那様の声が聞こえたのです。実際に発声しているのではなく魔力による交信だと理解しています。
視覚情報は役に立たないと判断して聴覚と魔力の共感覚を活用して剣の位置を感知して拾います。そのまま剣を振ります。
金属音が響いたことで防がれたと理解しました。少しの間鍔迫り合い、その間に眩しさが薄れていき視界が戻っていきます。
「重いね……聖剣程度とはいえ適合率が高いと厄介だね」
咲っていました。そして、失っていた下半身が元に戻っていました。
「でもここが終局だね」
槍に込められた力に押され通路の壁に追い込まれます。でも私の頭は冷静でした。この状況で剣の柄から左手を離します。両手で支えていたので右手がキツくなりますが頑張って耐えます。
空いた左手を伸ばして槍を持つ腕に触れます。
「残念だけど君じゃ何も出来」
「私ではありません」
貴方を倒すのは私ではなく……旦那様です。
黒い傘が槍を持つ肩に触れています。ただ触れただけなのに安心感を感じました。
「君、動け、たんだ……」
「限界なのは間違いない。だがイエルテェ」
「いいよ。君たちの勝ちだね」
言わなくても分かっていると伝えてきます。
槍を放り投げこれ以上戦う意志を感じさせません。何故なのかは分かりません。
「スエレ手を」
「あ、はいっ!」
旦那様が差し伸べた手を取ります。
「シェーヌ」
「分かってるよ。後はお願い」
壁際でうずくまるシェーヌさんは言葉少なく言いました。旦那様との間で話はついてるようでした。
「旦那様、何が……」
「今から時を遡る……違うか。正確には一時的に未来に戻る」
……元の時間に戻る? 今までしなかったのは恐らく条件があった筈でしょうか。旦那様の黒い傘が関係していると解釈しました。
今考えても仕方ないのでこれからの事を旦那様に尋ねてみます。
「元の時間に一時的に戻るってことですか?」
「そうだ。あくまで一時的に過ぎないからまた此処に戻ってくる……戻らざる得ないと言った方が正しいか」
旦那様は敵……イエルテェさん? を見ていました。また、転移する時の白い光に包まれ始めます。
その時、私の身体から静かな音を立てて何かが排出されたような気がしました。
多分、私のものではない記憶……今回の始まりであるプリンセスメモリーです。
イエルテェさんは手を翳して受け止めるような素振りをしました。
「……半分だけだね。まあ良いよ。それじゃ待ってるよ楽しみにね。今度は仲間を連れてきなよ」
「……」
旦那様は何も言いません。話したくないからなのか考え事をしているからかは分かりませんが、ただその手が温かく優しかった事だけは分かっています。
旦那様は私をじっと見ていました。
「何度目になるか」
「旦那様」
旦那様はきっと私に謝罪しようとしています。
でも私は許しません。許さないと言っても旦那様に怒っているのではなく謝罪をする事です。
「旦那様、ありがとうございます」
言いたい事と言って欲しいことは感謝です。
私を信じてくれてありがとうございますと私は言いたかったのです。
「そうだな、私こそありがとう」
「はい、よく出来ました」
少しだけバツが悪そうな旦那様を幼子を褒めるように褒めてあげました。
「……転移終わるのまだかなぁ〜」
余談になりますが、旦那様とのやり取りをバッチリと見られていました。
いつも最後まで読んでくださりありがとうございます。
次回は再来週こ水曜日の18時〜20時の更新になります。
また、不定期に過去の話の修正と加筆を行う予定です。
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