第六十二話 最愛の為の剣
今年最後の更新です。
今年は進捗があまり良くなかったですが来年も引き続きよろしくお願いします。
あったかい……安心するような気持ち良さを感じながら目覚めます。
「起きましたか。おはようございます」
「あ、はい。おはようございます」
水を人の形にしたと形容できる綺麗な女性でした。黒い執事服を着ていることから高貴な人に仕える立場なのでしょう。私はレティシアお嬢様に仕える侍女なので似ている立場そうです。
それから今の私は入浴していたみたいです。お湯が気持ち良い……
「っ! ……どういう状況ですか!?」
「平たく言えば捕虜です。入浴させているのは汚れていたからです。主様とお嬢様は清潔を好みますので」
「それはご丁寧にありがとうございます」
説明に納得して入浴させてくれたことに感謝しますが、素直に感謝できる状況ではありませんでした。
「あの、それで私はどうなるのでしょう?」
「主様の考えは分かりません。新たな命令を受けるまでは客人として扱うだけです」
そう言いながら私の髪を丁寧に洗っています。……あ、すごく極楽です。
「着替えは此方をお使いください」
浴槽から出るとタオルを渡されます。身体を拭き終わると用意された下着とネグリジェを身に付けます。
サイズが丁度良い感じです。
「お嬢様よりも少々上のサイズにしましたが合っているようですね」
「はい。ところで先程から口にされてるお嬢様とは?」
「案内した後、お嬢様に危害を加えない限りは私は何もしません。その事を覚えておいてください」
女性がついてくるように促してきます。ついていくと大きな部屋には入りました。
「あっ、吸血鬼娘だ」
車椅子に乗った女の子が私を睨んで威嚇しています。でもその姿は可愛らしいと思いました。女の子の隣には執事と思われるお爺さんがいます。
「もしかして私の事を知ってるのですか?」
「忘れないわよ。だって、わたしの事を後ろからスバって刺したもの」
「え………すみません記憶にないです。でも本当ならごめんなさい」
「嫌よ。許さない。痛かったもん」
記憶が無いとはいえ罪悪感を覚えます。
「いやいや、悪いのは君の方だから」
部屋の奥に座っていた私と同じ年頃の男の子が立ち上がりました。理知的でインドアな雰囲気があります。
「なによリゲル、わたしが悪いって言うの!?」
「だから悪いって言ったんだよ。それと攻撃するのは無しだ。主人殿の決定はまだだからね」
「むぅーーイラつくーーー」
女の子は癇癪を起こしていますが執事のお爺さんが宥めます。お爺さんの対応が手慣れているのかすぐに女の子は落ち着きます。
「はじめまして……って訳ではないか。僕も君に刺されたからねー」
「えぇ……」
突然のカミングアウトに声が漏れてしまいます。記憶を失う前の私は何をしていたのでしょう。人を刺すのが趣味……ではないですよね?
「戦ってたんだから後ろめたく思う必要はないよ。あの子……エルチェイズって名前だけど、あの子を刺したのも君の子どもを護る為だったんだよ」
「双子ちゃん…」
「それから僕を刺した時は君が言う『お嬢様』を護るためだね。君の剣は誰かを……大切な人を救う為に振るう」
傷つけるよりも護る……そう考えると納得します。
「さてと行きなよ。今度は君の最愛を護る為に」
部屋の出口を指します。この人はなんで……
「僕は君たちの敵だけど借りがあった。だから一度だけ手を貸す」
「……ありがとうございます。貴方の名前は?」
「リゲル、イエルテェ・テルレイアに造られた針のレプリカ武器の担い手……言うのは二度目だね」
リゲルさんにもう一度感謝して私は駆けます。ドアを開けようと手を伸ばしますが触れる前に扉はゆっくりと開きました。
「どうぞお帰りを、次に会う時は敵になります」
執事服の女性が丁寧な仕草で見送ってくれました。
ほんの僅かな不思議な邂逅でした。彼女達に心からの感謝をして最愛の元に向かいます。
いつも最後まで読んでくださりありがとうございます。
次回は水曜日の18時〜20時の更新になります。
また、不定期に過去の話の修正と加筆を行う予定です。
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