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第六十話 奇襲と取引

今回は短いです

楽観的に考えていたわけではないが見積もりが甘かった事を認めなければならない。

自分にしては不用心にも程があったが反省も後悔もこの場を凌いでからだ。



 イエルテェは槍を投擲する。重さを感じさせない直線的な緩やかな軌道であり本命ではなく牽制である事に疑いようがない。

最小の動きで回避知ろうとするが……

動くことができなかった。原因は足に巻き付いた黒い糸だ。

魔力で薙ぎ払う事も考えたが迫る槍の対処を優先する。傘を突き槍の軌道を変える。軌道が変わった槍だが、その先にイエルテェが待ち構えていた。滑らかに緩やかに槍の柄を掴むと流れるように大教授に向けて刺した。


「チェック」

「……」


 胸を貫かれ血が流れる。人の身であれば死を避けることの出来ない致命傷であるが竜の血を引いてる事で死を避けた。


「メイトだね……っ!」


 視線をそのままにイエルテェに向かって傘を振る。槍を深く刺していたから抜くのを諦めて後方に避ける。


「やれやれ、雑と言うか駄目な戦い方をするね。まあ、忠告するけど諦めて欲しいかな。出来ればというか……お婆様から君を殺さ……」


 言葉は途中で途切れる。胸に違和感があった。確認すると手が生えていたのだ。背後から貫かれた事に気づいた時には遅かった。


「あ、お揃いだね。さて、お久しぶりシェーヌ嬢、吸血鬼の……君の隠蔽能力を見誤っていたよ」

「お褒め預かり光栄です。それからお久しぶりです。テルレイア公」


 貫いた相手を認識し挨拶する。命の危険が迫るほどに追い込まれていても礼儀を忘れてはいけないのだ。


「さて、抜いてくれないかな? 結構痛いんだよ」

「それは難しい相談です。離した瞬間に私は貴方に始末される。二度目は成功しない奇襲だもの……だから取引をしましょう」


 スエレが攫われた事に気づいた大教授はシェーヌと話して計画していた。自分が囮になるから隙を見てイエルテェを攻撃して欲しいと言ったのだ。

勿論、それだけで終わりではない。本題は取引を持ちかける事だった。

分が悪い賭けになるが手段を選んでいられなかった。また、大教授は新しい友人に心の中で謝罪する。約束を守れないかもしれないからだった。

いつも最後まで読んでくださりありがとうございます。

次回は水曜日の18時〜20時の更新になります。

また、不定期に過去の話の修正と加筆を行う予定です。


誤字脱字報告や感想、評価などいただければ今後の励みになりますのでどうかよろしくお願いいたします。

また、ここが分からないやここがおかしいなどの疑問もあれば気軽に質問ください。

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