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第五十四話 髪色の夢を見ました

 お嬢様とフロマージュちゃんが私の部屋で本を読んでいました。先程からお嬢様が私を見ています。私と言うよりも……


「お姉ちゃんの金色の髪綺麗で良いなぁ」


 大きな瞳を輝かせて私の髪を見ていたのです。


「私はお嬢様の真紅の髪色も素晴らしいと思いますよ」

「そうかなぁ? お母様やお姉さんと違って私には似合ってないと思うよ」


 お嬢様の髪色はフリングル家特有のもので公爵様やエルシア様と同色です。


「いいえ、姉さんに似合ってるわ」


 本を読む手を止めてフロマージュちゃんが言います。基本的に本を読む事が好きなので手を止める事が無いのですが重要な時だけ手を止めている事に最近気づきました。


「でも髪色を変えたいのなら変えられるわ」

「えっ、本当に!?」


 黒い杖を取り出すとくるくると降ります。様になっています。

 

「一時的だけど」


 杖の先から青い光が広がりお嬢様を包みました。お嬢様の髪の色が……黒に染まりました。


「……ごめん。色の調整は出来なかった」

「あ、うん。ありがとう」


 感謝を口にしていますがお嬢様は金色が良かったと思っているのが見て取れました。でも少しだけ嬉しそうではありました。

ほんのり気まずい空気が流れましたが、アイリッシュちゃんとソルカさんが来ました。


「……何してるの。モポ姐の髪、マージュ?」

「失敗した。髪色の調整が出来なかった」


 呆れているアイリッシュちゃんです。ソルカさんは状況を理解した上でお嬢様を見ます。


「ほう、儂とお揃いじゃな」

「そうだね。黒髪って結構珍しいのかな?」

「此処ではそうじゃな。南の方には黒髪の一族が居る。それから儂らアリカの家も黒髪じゃ。昔は髪の色による差別と瞳の色による差別があったそうだ。差別から逃れて集まったとも言われておる」


 目線を合わせてお嬢様に説明する姿にソルカさんの面倒見と人柄の良さが出ていました。


「まあ、今は時代が変わってきているがそれでも髪色と瞳の色の差別は根強い。お前が背負う話ではなくとも覚えておくがいい」

「普通の話し方をする時は大概真面目なのね」

「うるさいわっ!! 儂も真面目に話す時もあるわぁ!! 父親に似て生意気な餓鬼じゃなっ!!」


 フロマージュちゃんは旦那様に似ているですか……私と違って聡明なので頷けることです。


「あんなのと似てるのは心外だわ」

「確かにのぉ、奴なら髪色の調整が出来ないヘマはしないからな。まだまだ半人前の餓鬼に過ぎん」


 フロマージュちゃんがソルカさんに飛びかかる勢いだったので抱っこします。


「そんなに旦那様は凄いのですか?」


 問いかけたのは私自身が知りたかったからです。皆さんの話を統合すると旦那様が凄まじい魔導師であると理解しますが、具体的な事はあまり分かっていません。


「儂と姉者が奴と会ったのはその餓鬼と同じ位の齢じゃった。規格外の怪物だと一目見て理解した」

「規格外の怪物ですか?」

「それすらも生温い表現からもしれんな。今は社会に迎合したのか大人しいが昔の奴は天災そのものじゃった。

お前も魔術を齧っているから多少は分かる筈だ。一つの属性の上級魔術を扱える領域に到達するにはどれ程の時間を要すると思う」


 質問を投げかけられ考えてみます。でも記憶を失っている点を除いても魔術の分野の知識は乏しく、あまり分かりません。


「大体十年くらいだね。一から始めた場合の過程だけど」


 アイリッシュちゃんが代わりに答えてくれます。


「それは一般的な天才の場合じゃな。確かにお前ぐらいなら数年後に上級魔術へ到達するだろう。

だが奴は一晩で到達した。しかも既存の魔術ではなく新規の魔術を編み出した。大教授の称号を受けたのも納得ではある」


 呆れと畏怖を混ぜた感情でした。私としてはあまり凄さを実感していません。でもアイリッシュちゃんとフロマージュちゃんの反応から普通では無い事だけ分かります。


「うん。師匠は状況に合わせて新しい魔術作るんだよ。私は凄いなぁって思ってたけど、お兄さんやイーギアさんが少し引いてた意味が今なら少しだけなら分かるかも」

「初級や中級程度なら並の天才でも可能だろうが、上級魔術をポンポン生み出すのは天才ではなく天災だ。まあ、儂的に引いたのは敵の上級魔術を初級魔術で打ち破った時じゃがな。魔人共が気にいっているのも頷けるというよりもあからさまにあっち側に立っているな」


 ……少し複雑な気持ちになりました。お嬢様が私を覗くように見ました。お嬢様に見抜かれていました。

旦那様の事を怪物扱いされて少し不機嫌になっていた事をです。


「でも私は師匠の事が好きだよ。髪の色もお姉ちゃんの金色の次に師匠と同じ紺色が好き。黒髪だと師匠に似てるかな?」

「姉さん似てないわ。紺色にならなくて良かった。私はあまり好きじゃないの」

「叔母さんの色だから?」


 双子ちゃんの言う叔母さんだから旦那様の妹でノルカさんの親友であるリロ君の事ですね。まだお会いしていませんが頼りになる方な気がしています。


「あ、ママぁ、戻ったでござるよー!」


 遠くからノルカさんの声が聞こえました。振り向くと……天井がありました。



 フロマージュちゃん、アイリッシュちゃん、お嬢様達がいた夢を見ていました。


「どうした?」


 ベッドの上から手を伸ばしていて旦那様の手に触れていました。優しく握られていて少し暖かく感じます。


「夢を見ていました。双子ちゃんとお嬢様とソルカさんと旦那様の事を話していました」


 夢ではありますが、実際にあった出来事です。舞踏会の二日前の話でした。


「会いたいなぁ」

「スエレ…」


 罪悪感と喪失感から呟いていました。

 

「ごめんなさい。弱気になってました。あの子達にまた会うまでは弱音を吐きません」

「そうか。別に良い」


 全部は言わなくても弱音を吐いても良いんだと旦那様は伝えてくれます。

夢の内容を思い出すと旦那様の髪を見ます。


「紺色ですね」


 好きな色です。でも一番ではありません。何故かと考えると答えはすぐに出ました。


(旦那様の本当の髪色は別の色だからですね)


 思い出した大切な記憶、そして私の自慢でもある旦那様と共有している秘密でした。



いつも最後まで読んでくださりありがとうございます。

次回は水曜日の18時〜20時の更新になります。

また、不定期に過去の話の修正と加筆を行う予定です。


誤字脱字報告や感想、評価などいただければ今後の励みになりますのでどうかよろしくお願いいたします。

また、ここが分からないやここがおかしいなどの疑問もあれば気軽に質問ください。

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