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第五十三話 旦那様の弱点

 シェーヌさんから夕食だけでなく泊まって行くように言われました。

入浴した後、寝る為に部屋に入ります。初めて来た時にも利用した部屋です。少し懐かしさもあって安堵感を覚えるところですが、私はそれどころではありませんでした。


「…………ん」

「どうした?」


 旦那様に問いかけられますが、原因は貴方なのです。時間が置いて落ち着くかと思いましたが駄目でした。


「あの、ですね」

「言いたいことは分かった。どうしたい?」


 理解してくれた上に聞いてくれるのは有り難いです。でも、此処は……


「恥ずかしい事を言いますけど火照りました」

「そうか」

「な、ひゃっ!」


 私の手を取って握ってきました。思わず声を出してしまいましたが別に嫌な訳ではありません。


「お前が落ち着かない時に良くしていた。少しは落ち着いたか?」

「は、はい……そ、そうかもしれないです」


 自分の事ながら初心な気がしますが、ドキドキが止まらないのです。

旦那様……髪の色も瞳の色も中性的な容姿、普段の所作、言葉遣いや態度、全てが愛おしいのです。

旦那様の前だと私は女ではなく雌になってしまいます。本能が強い雄を求めているのかもしれません。


「…寝るか」

「は、はい。寝ましょう……………何もしないの?」


 言ってしまってから私は何を言っているのだろうと


「やぶさかでは無いが、今はいいだろう場所が悪い」

「そうですね。失礼しました」

「別に良い。此方こそ不快にさせ……」


 人差し指を立てて静かにするよう促されました。それから扉の方を一瞥します。誰かいる?


「ソニアか?」

「あら残念。子作りでもしてるのかと思ったけれど」


 軽いノック音の後にソニア様が入ってきました。

…………怒りますよ。


「何用だ?」

「怒ってるかしら。埋め合わせに3」

「用件を言え。くだらない内容以外のな」


 あ、旦那様が怒っています。少し嬉しい気持ちが沸きました。


「貴方って本当に噂通りのようね。仮にも皇族相手に不遜な態度を取る。聞いた話だと陛下に対してものようね」

「貴様らに従う必要がないからな」

「あらそう。元帥殿の後ろ盾ありきだものね。その元帥殿に梯子外された訳だけど、別に喧嘩を売りに来たわけではないわ。こんな状況と場所でなければ話したい事があったのよ」


 椅子に座って私達を見ます。手短に済ませる気はないのが受け取れました。

対して旦那様は私の頭に優しく手を置きます。あの、嬉しいですけど恥ずかしいですよ。


「櫻子の件はお願いしたけど他にもお願いがあるのよ。というよりも櫻子の件はあの子と貴方達が会った事によって意味を無くしたわ。だって今更見捨てる選択は出来ないでしょう」


 微笑を浮かべています。言う通りでソニア様が関係なく櫻子さんに力を貸したいと思っています。

だからといってソニア様の別のお願いに協力するかは……


「ヴァルナムシアに戻ったら私を皇后にして欲しいの」


 ヴァルナムシアでは皇帝の妻を皇妃と呼びます。しかし皇妃だと正妻と側妻どちらにも使われます。側室の女性は俗に側妃と呼ぶ事もありますが正式な呼び名ではありません。

だから正妻に当たる女性には皇后の名称で呼ばれます。


「……フォンが正式な皇太子になり数年もすれば次の皇帝になる。現在の皇帝の皇后になって何の意味がある」


 否定ではなく疑問の問いかけでした。私も不可解に思えました。ソニア様は長年側妃でしたが皇后の地位を狙っているようには思えないのです。

それに旦那様が仰る通り皇后になっても次期皇后に内定しているエルシア様がソニア様が権限を持つ事を許すとは思えません。


「今の皇后を排除できるわよ。私が好きではないにしても今の皇后は私よりも嫌いでしょう?」

「力を貸すから力を貸せという話なら他を当たれ」

「ふふ、貴方でないと駄目なのは知っているでしょう。その気になれば皇族全てを始末する事もできる。許されているのだから」


 旦那様は軍の統制権を持ち皇族の処罰も許されている(エルシア様から聞きました)のです。


「それに私に言われずとも始末するつもりだったのでしょう。利害は一致しているわ」

「お前にとってはな。仮に皇后の排除まではいい。その後のお前を皇后にする必要がない」

「愛しているのよ」


 切実な言葉……でした。嘘偽りのない言葉に呆気に取られてしまいます。


「一人の女として一人の男を独占したい。これ以上の理由が必要かしら?」

「お前にとっての理由はないな。私が協力する理由は」

「ええ、貴方に渡せるものはないわ。地位も財宝も私の一晩も貴方には価値にならない。だけど」


 ソニア様は私を見ます。計られたような気がしました。それから旦那様に近づき私に聞こえないように話します。


「これが私の持っている秘密よ。貴方にとってはとっておきの弱点ね。それを墓場まで持っていく事が私が提示する条件よ」

「……分かった。約束を守る限りは協力しよう」


 呆気なく協力する事になりました。地位も名誉も女(私を除く)にも興味がない旦那様ですが一つ弱点があったのです。

それが私でした。


いつも最後まで読んでくださりありがとうございます。

次回は水曜日の18時〜20時の更新になります。

また、不定期に過去の話の修正と加筆を行う予定です。


誤字脱字報告や感想、評価などいただければ今後の励みになりますのでどうかよろしくお願いいたします。

また、ここが分からないやここがおかしいなどの疑問もあれば気軽に質問ください。

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