第五十二話 繰り返す事は確かめ合うことです
「吸血鬼、貴女達がね。でも貴女は自分が吸血鬼な事を知らなかったのかしら?」
ソニア様が私に問いかけます。首を縦に振って頷きます。
「然程重要ではなかったから説明していなかった」
「ふーん、隠していたのではなくて」
嘲けるような言い方でした。当然のように旦那様は理解していました。
「悪意は無い筈よ。吸血鬼であるかなんて重要ではないもの。言い出した私が言えた事ではないけれどね。スエレさんごめんなさい。言い出すタイミングを考えるべきだった」
謝罪をされますが頭の中は困惑が占めています。
「吸血鬼のハーフって事ね。そうなるとあの双子は面白い事になるのね。意地汚い竜と」
「穢れた魔女」
ソニア様の言葉に旦那様が続けます。あの、その言い方はどうかと思います。
「それなら出来損ないの吸血鬼と生命の汚点である人間も付け加えるべきね。
創世神話の一節にある四大生命体を表す言葉だけどいつ聞いても酷い話だと思う。
吸血鬼は再生力というより生命力の溢れている。スエレさんは普段は吸血鬼の面が表に出ていないけれど傷が治りやすいとか利点があるわね。それに私と同じで基本的に種族としての欠点はないのが特徴よ」
「流石は真祖ってところかしら。私も実物を見た事は数えるほどしかないけどアンデッドに近い個体もあったわ。陛下曰く下位種って話だわ」
吸血鬼の真祖、上位の吸血鬼になるのでしょうか。
「まあ、あの双子が面白い事になってるのは事実だわ」
「……あの子達は四つの種族の血を引いた特別な子だけど悪いことでは無いわよ」
「種族に貴賤はないからな」
貴賤はない……懐かしい響きです。多分、旦那様がよく口にするからだと思いました。
「旦那様は分かっていて……」
それ以上の言葉は続けられませんでした。言ってしまうと踏み込んではいけない部分に足を向けてしまうと思ったのです。
特別な子供を作れるから私も選んだのではないかと……一瞬でも旦那様を疑う事に自己嫌悪感を覚えてしまいます。
「実験って考えると酷い話ね。愛情ではなく興味を優先したのかしら」
「何も知らない部外者が簡単に触れていい話ではないわね。それに世の中には理由があったとしても娘を長い間放置して、今更都合良く助けようとしている母もいるものね」
「シェーヌさん落ち着いてください。それから私は旦那様は酷いお父さんでは無いと思っています」
お二人が険悪になりかけていました。特にシェーヌさんは大変お怒りでした。
「……そうね。仮にも娘の件で協力を依頼しているのだから、これ以上は口にしないわ。それから一応謝罪するわ」
まさかのソニア様が頭を下げられました。側妃様の行動に驚いて反応が出来ませんでした。
「これの頭に価値はないから無視していい。重要ではないから話していなかったが、それは私の話でお前にとっては違う事を考えていなかった。不快感はあるか?」
旦那様に向き直ると断罪を待つ罪人のような雰囲気をしていました。
「不快感はありませんし、旦那様に事情があることも理解しています。だけど話せる事は話していただけると嬉しいです。……思えば私も旦那様と話す事が足りないと思いました。少しずつでもこれから色々お話ししましょう」
はしたない気がありますが、旦那様の背中に手を伸ばして抱きつきました。
「ああ、済まなかった。お前には苦労ばかりかける」
「多分、慣れています。記憶を失う前も今も変わらないです。でも貴方の事は嫌いではありません。大好きです。愛しています」
「私もだ。スエレ……」
繰り返す事は進歩が無いだけでなく。反復して確かめ合う意味もあると思います。
五感で感じて深め合い溶け合って……
「凄いわ。私達がいるのに」
「二人にとっては普段の光景だもの」
お二人がいる事を忘れてしまう程に旦那様に没頭していた事にほんのり恥ずかしくなりました。
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