第五十一話 メイド服の皇妃様
※9/15加筆更新しました
今日の放課後はシェーヌさんのお屋敷に旦那様と一緒に御呼ばれしました。
来るのは二回目ですが圧巻の手入れ庭園です。シェーヌさんはガーデニングが趣味のようですが一人でするのは大変じゃないかと思いました。
家の中に入ると夕食もいただくことになったのですが、気になる事がありました。それはメイド服を着た給仕してくれる人がいた事です。前に来た時には居なかった人ですね。……いえ、居ました。
「あの、ソニア様ですよね?」
「……そうよ」
不機嫌そうに答えられました。メイド服を着た皇妃(側妃)様ですがとても似合っていると思いました。
「やる事がなさそうだから給仕してもらっているのよ」
「無駄に危険を増やすのか……」
旦那様が呆れるように言いました。ソニア様への信用の無さが分かる言葉です。
「家の中に毒物はないから心配はないわ。それにソニアさんは私達に危害を加えられないもの。二重の意味でね」
「毒が効かない化物が言うわね」
「普通の人達と違うのは否定出来ないけれど、差はそんなにないわね」
ニコニコと笑うシェーヌさんですが、内心では笑っていないような気がします。
「さて、この場には私達しかいないから秘密のお話をしましょう。きっと櫻子さんの話はしたいでしょう」
「あ、はい。櫻子さんは本当に、そのソニア様の……」
「娘だと思うわ」
少々投げやりな言い方をされました。
「分からないってこと?」
「うーん。そうね。多分そうじゃないって感じだわ。だから当たりでいいわ」
櫻子さんとソニア様は髪色や容姿はあまり似ていませんが、雰囲気が近いものを感じます。だから私も二人は親子ではないかと感じます。
「気になっていたのだがお前はこの世界出身か?」
「ええ、そうなっているわ。娘を産んだ後に……私はヴァルナムシアに転移した。後は知っての通りよ」
「ん? でもそれじゃ第四皇子の年齢と合わない。血は繋がって居なかったの?」
私も血が繋がった親子だと思っていました。でも第四皇子の方が櫻子さんより歳上だった筈です。
「念の為の補足をするが、基本的にこの世界と向こうの世界の時間の流れは同じだ。私達は例外であるから説得力はないが……」ら
「その通りよ。私は陛下に囲われたのだけど子に恵まれなかった。だから陛下が使用人に産ませた子を私の子としたのよ。ふふっ、キャンサールも本当のことを知れば壊れちゃうかも知れないわね。あれで私を母として慕い誇りに思っていたからね」
「そう考えるとと第四皇子も憐れね。……まあ、それは今は置いときましょう。私が興味あるのは貴方の瞳に宿る憎しみの火の正体ね」
ソニア様はニコリと笑います。何処か狂気を秘めていました。でも、虚飾のない彼女の姿でした。
「娘を助けて欲しいことが嘘とは思わない。だけど、本当の目的を教えて欲しいわね。場合によっては私の目的と合致する部分はあるかもしれないもの」
「優しいのね公爵様は、だからこそ貴方には無理よ。
でもせっかくだから私の夢を一つ教えてあげるわ。
かつて私を穢した男達に断罪を与えたい。
貴方は気づいているわよね。私が嘗ていたのは緋子那村よ」
「端的に復讐目的か」
虚飾の無い言葉の圧に言葉を失います。そして旦那様が呟くように言った言葉が反芻しました。
それに緋子那村出身の事実に震えました。点と線が繋がっていく感覚です。
「ええ、そうよ。そうしなければいけない。ここまで話せば分かるでしょう。櫻子は緋子那村に行く。その後どうなるかは火を見るよりも明らかよ」
「だから助けて欲しいって事ね。いいよ。彼女は友人だもの。それにあの村に伝わると伝承が気になるもの」
古そうな一冊の本をテーブルに置きました。文字は掠れて見えませんが話の流れから緋子那村に関連したものだと思います。
「ねえ、竜と魔女と吸血鬼の伝承を知ってる?」
シェーヌさんが尋ねます。そして何故か私を見ていました。
「ええ、伝承があることはね。でも詳しくは知らないわ」
「……」
怪訝そうな表情を旦那様が浮かべていました。こういうときって………?
「旦那様、何か知ってますか?」
「人形だ」
「人形? どういう事ですか?」
竜や魔女に加えて人形、普通の人形の意味では無いとは思います。
ひらひらとスカートを揺らしてソニア様が蠱惑の笑みを浮かべます。表情が『正解』と言っているみたいでした。
「魔女が作った人形が私達の祖先。それを拾ったのが竜だと呼ばれているわ。まあ、よくある天女伝説とか人魚伝説の派生だと思うけれどそれから吸血鬼もいたらしいけど眉唾物ね」
「いた筈よ。私とスエレさんと同じ始原の吸血鬼、俗な言い方をすれば真祖の吸血鬼がね」
……はい? シェーヌさんの言い方だと私は吸血鬼なんですか!?
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次回は水曜日の18時〜20時の更新になります。
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