第四十七話 初めて会った人は私の友人でした
旦那様から衝撃の話を聞いた後、特に何かある事なく私は眠ってしまいました。そして、翌日になりました。
元々私は寝覚めが良い方ですが今日の目覚めは特に良かったです。朝食を作るつもりでしたが既に出来ていました。
「起きていたんですか?」
「そんな感じだ。朝食を用意しておいた」
「わあ、ありがとうございます」
トーストと卵スープ、海藻サラダと比較的簡易に作れるものですがとても嬉しいです。思えば旦那様に作ってもらったのは……記憶がないから初めてですね。
私の嗜好としてもお米よりもパンの方が好みです。お嬢様とノルカさんはお米が好きだったのでパンより食べる回数が多かったような気がします。
朝食を美味しくいただくと身支度を整えて学校に向かいます。
表情が緩んでしまいます。やはり楽しみなのです。
「……」
少しだけ旦那様が呆れているみたいでした。
「やっぱり浮かれてるように見えます?」
「浮かれていると思うが問題はない。少しに気なることがあった。しかし、考えても仕方なかった」
気になることですか。うーん。私が悩んでも意味はなさそうですね。
準備が終わり部屋の鍵を閉めて学校に向かいます。実は登校することも楽しみでした。
旦那様は隣の部屋を見ていました。
「旦那様?」
「行くか。それから呼び方」
「あ、そうですね。リロードさん」
まだまだ慣れない呼び方ですが気をつけます。
初めて通う道は胸の高鳴りと共に色褪せずに残り続ける……少し詩的な感じですね。
「スエレ、初めて会う者から声をかけられたら動揺せずに話を合わせろ」
「? 人見知りではありませんから大丈夫ですよ」
旦那様……いえ、リロードさんは少しだけ私に過保護ですね。嬉しくはありますけど……
「おっはよーでーす」
「わっ!」
「そう来るか……」
突然後ろから声を掛けられたと思うと抱きつかれました。
「だ、誰!?」
「スエレが困っている離せ………クシル」
リロードさんが引き剥がしてくれました。でも、なんで名前を知っているんですか?
「おぅーー相変わらずのイケズですね。執着キモいです」
「喧しい。いつもの双子とは一緒じゃないのか?」
「クイとナナイなら今日は別です。だからワタシ悲しい。でもスエレと会えてハッピーです」
「……旦那様、この方は?」
小声で耳打ちします。だから旦那様と呼んでいます。旦那様も私の耳元で囁きます。
あ、駄目です。これは駄目な嵌り方をしてしまいます。
だからこそ今は平静を装います。
「クラスメイトのクシルだ。留学生でお前の友人だ」
今日お会いしたのですが、まるで確定事項みたいな言い方になっています。
クシルさんは留学生と言った通り髪が明るい金色でした。少し親近感を覚えます。
「細かい話は後だ。要点はイエルテェの記憶操作で私達は学園に通って既に数ヶ月経っている。恐らくシェーヌと同時期に設定してあるはずだ。植え付けられた記憶とはいえ向こうにとっては事実になっている。面倒だが話を合わせた方が手間が無く良さそうだ。ついでに私が名前を知ったのは引き剥がした時に触れたからだ。お前は忘れているから言っておくと私は記憶を消すだけでなく読み取ることも可能だ」
「あーラブラブするなです。スエレはワタシの嫁でーす」
周囲からは旦那様と抱き合っているように思われていたみたいでクシルさん以外の方からもチラチラと視線を向けられていました。
「別に構わないだろう。スエレは私の同棲している婚約者だ」
「うわっ、自己顕示欲がキモッ、口を開かないで欲しい」
「コイツの言動は何処かの馬鹿を思い出させるな」
それってノルカさんのことですか?
私も私で失礼なことを思っていると見覚えのある人達が近づいてきました。櫻子さんと朝霧さんです。
「おはようございます」
「おおっ、櫻子じゃないですか。今日は早いですね。アレのせいで遅くならずに済んで良かったです」
「ふふ、今日はちゃんと緑君は起きられましたよ」
「櫻子、餓鬼じゃないんだから普通に起きられるって」
お二人のやりとりには夫婦の貫禄を感じてしまいます。こちらも負けてはいけませんね。
「スエレ、補足が一つある」
「ふぁ、ひゃいっ」
耳元で囁くのは禁止です。変な声を出してしまいました。
「この二人は記憶操作されてないような気がする」
「どういうこと……ですか?」
「詮索は後だ。しかし、少々面倒だ。取り敢えず邪魔なクシルを引き離す」
考えられることとしてはクシルさんと櫻子さん達で話が噛み合わない可能性があるってことですね。
「櫻子、緑、少し良いか?」
「はい。なんでしょうか」
「良いけど、ってお前櫻子の事名前で呼んで」
「クシルさんすみません。研究会の秘密の話ですので」
「そうですか。しょんぼりです。でも仕方ありませんね。あとでむぎゅうっとします」
クシルさんは名残惜しそうに歩き出しました。
「今日からだったんだな」
「これからも宜しくお願いします」
お二人の口にした言葉から記憶操作されてないことを察するには充分でした。
「私達としてはそうなっている。しかし……」
旦那様は事情を説明します。でも理解と納得が出来る内容ではないのです。
「それは、とても興味深いです。私は郷土研究が専門ですがオカルトの分野にも興味がありますから」
櫻子さんが目を輝かせています。一方で緑さんがゲンナリした表情です。多分、朝霧さんの反応が普通ですね。
「理解できないか?」
「正直に言えば。でも櫻子が信じるなら俺も一応信じるよ」
緑さんは言い切ります。お二人の深い信頼関係を感じました。
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