第四十五話 だから問いかけることにしました
四十三話の続きです。
シェーヌさんが用意してくれた部屋は二人で住むには広いのです。だから……ベッドは二つあります。二つあるのです。
つまり私が何を言いたいかと別々でした。
「旦那様は一人だと寂しくて眠れない人でしたよね?」
「そんな設定はない」
そこは話に乗ってください。確かに一人で眠れない軍人さんはいないと思いますけど……
「私は寂しいです。だって、マージュちゃんもリッシュ君もお嬢様と一緒で私は一人でした」
「ノルカは?」
鋭い指摘でした。ノルカさんは天井でしたが私と同じ部屋で眠っていました。
「……ともかく一緒に寝ましょう。それからヴァルナムシアに戻ったら皆で一緒のベッドで寝ます」
有無を言わさずに旦那様を手招きします。
「ちゃんと来て良い子です」
「対応がペットだな」
同じ事を私も思いました。だから仔犬の毛並みを撫でるように旦那様の髪に触れます。
「不思議な感じですね。旦那様の髪は、不思議な感触がします。これはなんて言いますか……」
「鎧と言われた事がある」
「ん? 誰にです?」
鎧である点は置いといて誰に言われたのですか? まさか別の女性ではないですよね。
「言ったのはルーナだ」
「あの、ルーナさんって誰ですか!?」
「……そうか。忘れていたんだったな。……私にとっては姉のような存在だった」
「大切な人だったんですね……」
そして大切な記憶でした。忘れてはいけない事でしたが旦那様は責めてきません。
「一年前に双子を連れて会いに行った事がある」
「そうだったんですね……すみません。変な勘違いしていました」
「勘違いか……私がお前と婚姻関係に至れたのもテアトルやエルシア達の助力が大きいがルーナも助けてくれた」
ルーナさんは恩人の一人でした。……少し気になったのは旦那様の口ぶりでは私と旦那様が結ばれる事は大変だった事です。
ディエレーズ元帥は旦那様に『お前が命令通りにその娘を始末していれば事態は既に収まっていた』と言っていました。私に聖女の素質があるからとランファーナさんは言っていましたがそれだけではないように思えます。
「旦那様、言いたくないのなら良いのですが」
「枕詞は不要だ。何を聞きたいんだ?」
「……もしかして元々私を始末するつもりだったんですか?」
沈黙が流れます。もし違うのなら既に否定をしている筈です。
「明察の通りだ。ディエレーズにお前を始末するように命じられた。今から五年ほど前の話だ」
「ではどうして私は今も生きてるのでしょう? もしかして今日が最後の日ですか?」
そんなことは絶対にないと分かっているから冗談で言っています。
「今更弁明するつもりはない。詳しい事情はノルカも知っているから後で確認すると良い。過程は省くが結果としてディエレーズと魔人達と仲違いし敵対した。今お前が私の隣で寝ているのが得られた成果だろう」
「そうでしたか。旦那様、ありがとうございます。私を選んでくださって」
貴方の愛を疑うことはしません。それは今の話ではありませんよ。過去も未来も変わらない普遍の事実です。
私が一番知りたい事を聞けました。でも一番重要な事を聞いていませんでした。
それは私が何者なのか。
聖女の素質のある事でディエレーズ元帥に狙われるのはおかしな話です。聖女候補や本物の聖女が実在するのに私が優先的に排除されるのは何かがあるという事です。
旦那様やノルカさん、公爵様、エルシア様と私が信用している人達は事実を知っているように感じられます。だから不安はないですが不満がありました。自分の事は知っておきたいのです。
だから問いかけることにします。
「旦那様、私は何者なんですか?」
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次回は水曜日の18時〜20時の更新になります。
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