第四十話 最愛でも困った珍獣さんでした
生徒会室に旦那様……リロードさんが戻ってきました。櫻子さんは少し前に図書室に戻っていますので鉢合わせになることはありませんでした。
リロードさんは大淀さんに話をしてます。
「…………それで緑君に会ったわけなんだね。しかし、魔女である事を打ち明けたのは?」
咎める口調になる大淀さんです。多分ですが秘め事を打ち明けた事以上に自分よりも先に緑に行った事が気に入らない部分があったのでしょう。つまりは嫉妬という事ですね。
私もリロードさんが他の方と楽しそうに話していると同じような気持ちになります。
「隠していたつもりはない。お前に聞かれていなかったからだ」
「……それ知らなければ聞くことも出来なかったよね?
君がシェーヌさんの知り合いの時点で普通の人間ではないとは思っていたけどね……向こうの世界の話は少しだけ聞いていたけど、魔女とは種族って事でいいんだね?」
「その認識で間違いない。性別問わずに魔女と呼ばれる種族だ。長命種で人間に比べて保有魔力量が多い」
「こういう言い方が適切か分からないけど人間の上位種みたいだね」
確か生物としての欠点も子供が出来にくい事があると聞いた事がありますが、それ以外は無い筈です。
そう考えると旦那様との間に双子ちゃんが産まれたのは奇跡のようなものなのかもしれません。
「昔の魔女達は自分達が人を管理する上位種であると認識していた。その結果が人間が魔女に支配される第一次奴隷時代だ」
「どの世界にも奴隷制はあるんだね」
「何度もあった。神から人の手に渡ってから……」
お互いの世界の歴史を話していました。
「長くなりそうね。そろそろ暗くなるから帰りたいのだけど……そうだわ。今日は行ってみるの?」
行ってみるの? と聞かれたのは私とリロードさんの為に大淀さんが借りてくれたマンションの事です。シェーヌさん曰く、良い場所とのことですので楽しみです。
「はい。行ってみます」
「それがいいわ。ソニアさんは私の方で監視するから心配しないでね」
話しているとタイミングが良いのかソニアさんが戻ってきました。
「中々に楽しそうなところね。でも私が学生になるのは無理そうね」
「ええ、知ってるわ。歳を考えて欲しいわ。此処は子供の通う学び舎で大人が行くお店じゃないものね」
わざわざ挑発するシェーヌさんです。ソニア様は表面上笑っていました。
「話が長くなってしまったね。遅くなるから今日は帰ろうか。君達は月曜日から転入だったかな?」
「はい。ですので明日と明後日で準備をしようかと思ってます」
「それが良いね。最低限必要なものは用意してあるから明後日に送るよ」
私は大淀さんに感謝(旦那様にも感謝させるようにします)しました。
「治安は悪くないけど暗くなってるから気をつけるんだよ」
「お前は誰にものを言っている」
「っ! ……すみません。旦那様、その言い方は駄目です」
勢いよく注意したからリロードさんじゃなくて旦那様って言い方になってしまいました。
「確かにリロ君、此処はヴァルナムシアじゃないから物言いに気をつけた方がいいわね。特に偉い人にはね」
「分かった。偉そうにしてる奴は潰す」
「うん。物騒、ブレないのが君の良いところだけど自重して」
リロードさんは分かったと理解した素振りをしますが、正直怪しいです。
「スエレさん、申し訳ないけどよろしくお願いするわ」
「分かりました。お任せください」
「まるで躾のなってないペットみたいだな」
自分自身でよく理解されてますねと内心思いました。私はリロードさんは最愛の旦那様です。一番愛している男性(アイリッシュちゃんは別枠)です。
でも、困った珍獣さんでもありました。
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次回は水曜日の18時〜20時の更新になります。
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