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第十六話 舞踏会前夜になりました

2025年初めての投稿になります。

皆様今年も宜しくお願いします。



※後日加筆修正する予定です(2025.01.03)


※活動報告を更新しました。(2025.01.06)

 舞踏会前夜の夜になりました。お嬢様は眠るのが早いので既にベッドの上でお休みになっています。


「私達も眠いから眠るわ」

「うん。おやすみ」


 フロマージュちゃんとアイリッシュちゃんはお嬢様の部屋で眠ります。私は二人におやすみと言って自室に戻ることにしました。


「あっ! ママでござる」

「ノルカさん、戻ったんですね」


 小走りで駆けてきました。私はノルカさんの腰に下げている黒い鞘に納められた刀に目が行きました。

刀に不思議な力を感じたのもありますが、公爵城内で帯刀は駄目だからです。


「あ、これでござるか。拙者の相棒よ。これで勝てる」

「はあ、何を言ってるのよ。帯刀してんじゃないわよ」


 ネグリジェを着用したエルシア様がため息をついてゆったりと歩いてきました。背後にはサキさん達エルシア様付きの侍女さんがいます。


「お、エルちゃんじゃん。美容の大敵だとか言ってたけど寝なくていいの? そろそろ肌とか年的にきつくない?」

「……新手の挑発かしら? 残念だけど数年後ならともかく今は効かないわ。……その刀、取り戻したのね」


 エルシア様はノルカさんの刀を知っているみたいです。もしかしたら私も知っていたかもしれないですね。

それよりもサキさん達が物凄い表情でノルカさんを見ていました。エルシア様がそっと手を出して制していますが、今にも飛びかかってしまう勢いがあります。


「これで拙者に敵無しでござるよ」

「……頼もしいよりも不安な方が勝るわね。当日の状況次第だけどイーギア大将かディエレーズ元帥のどちらかは貴女が相手するのよ。その武器……確かレプリカ武器って言ったかしら。強力な武器であっても相手も同格以上の武器な上に貴女より強いのよ。前日に小言を言ってられないけど目的を見失なわないようにね」

「ふっ」


 ノルカさん……今の話を理解してますよね? エルシア様は重要な事を仰っていましたよ。


「……はあ、もう良いわ。当日はリロードもいるから大丈夫……では全然無いけど、なんとかなるわね」


 不安要素が残りますがエルシア様がなんとかなると言っているの事を信じることにしました。


「私も眠るわ。スエレ、それからノルカもおやすみなさい」


 踵を返してエルシア様が歩き出しました。私も挨拶します。サキさん達が私に挨拶した後、ノルカさんを凄い形相で睨みました。


「ふむ、サキちゃん今日はなんか機嫌悪いなぁ。何か嫌なことでもあったでござるか?」

「……多分、ノルカさんの言動だと思います」


 それから移動すると私の部屋の前に人影がありました。


「ヴェンフェリオン子爵?」

「すまない。戻ってくると思って待たせてもらっていた」

「まさか、夜這い? ……すぞっ」


 それは違うと思います。ですが用件はなんでしょう?


「明日の舞踏会、君の安全を約束するつもりであるが第四皇子殿下には気をつけて欲しい」

「そんな忠告必要ないでござるよ。拙者がいる以上はママに手を出させるつもりはないもん」


 ヴェンフェリオン子爵が手を差し出してきました。掌には黒い紙? がありました。


「これは元帥の一部だ。力を与えられるということで第四皇子殿下から渡されたものだ。ノルカ殿は知っているかな?」

「あー元帥の鱗でござるか。と言っても質は最低な物かな? 子爵は大して重要じゃないから最低限の物しか与えられなかったって感じでござる。だって拙者が斬った時の手応えがあんまりなかったから」


 鱗ですか……確かに爬虫類の鱗のようにも見えます。でも元帥の鱗って比喩的な意味でしょうか?


「……言葉の意味そのままで元帥の体の一部の鱗のようだ。眉唾物であるが元帥は魔龍と呼ばれているから魔竜の鱗と言う事だろう。実際に鱗かどうかはあまり重要じゃない。問題は鱗を持つものに力を与える事だ」

「うーん、でも子爵は弱かったでござるよ」


 言葉の刃物でバッサリと斬るノルカさんです。


「否定はしない……だが僕の爆発魔術は普段よりも強化されていた。それにノルカ殿には手も足も出なかったが一般的な兵士に比べれば遥かに強い筈だ」


 ノルカさんの言葉を静かに受け止めて理性的に説明をする。最初に会った時とは別人に思えます。と言うよりも最初に会った時のヴェンフェリオン子爵はおかしかったような……


「ヴェンフェリオン子爵、もしかして鱗の力は精神に悪影響を与えますか? ノルカさんに斬られた時、傷口から黒いモヤみたいなものが見えました」

「やはりか……あの時の事は本当に申し訳ない。謝って済む話ではないが……あの時の僕は欲望に忠実だったと思う」

「うーん? 拙者的には変わってない気がするけど」


 ノルカさんの感想は一旦置いておきますが、ヴェンフェリオン子爵も自覚がありました。


「第四皇子殿下は元々欲深い方であったが、最近は異常だったと思う。特に君に対して執着してるような気がある。僕と同じように元帥の鱗で力と欲が強くなっているなら危険は跳ね上がる」

「大丈夫、ママは拙者が護る。第四皇子が強くなっても拙者に勝てないもん」


 頼もしいですが慢心してはいけませんよ。ノルカさんが護ってくれる安心感はありますが第四皇子が私に執着してる理由が分かりません。


「ノルカ殿の実力は疑っていない。でも手段を選ばなければその限りではない。僕も微力ながら護るが気をつけ過ぎても構わないくらいに気を付けて欲しい」

「分かりました。気を付けます」

「……ねえ、子爵はママの事好きなの? なんか変な好意を抱いてない?」


 ジト目でノルカさんが見つめています。私もチラッと視線を送ると目を伏せられました。また、少し顔が赤いように見えました。


「当たらずとも遠からずだ。大教授と婚約してなければと考えた事はある。でも今は貴女を騎士として護りたいと己の心に誓える」

「騎士? 時代錯誤でござるな」

「今でも騎士爵はあるだろう。それに君のような忍者娘に言われたくないっ!!」


 反論しづらい発言でした。でもノルカさんは愉快そうに笑っていました。


「済まない……ともかく貴女の仲間の末席に置かせてもらえると幸いだ」

「うーん、断るっ!! 恥を知れっ!!」

「恥を知らない君に言われたくないっ!!」


 言い合う二人を見ていると仲良しさんだと思ってしまいました。

ノルカさんだけでなくヴェンフェリオン子爵も信頼したいと思いました。



 翌朝、目覚めが良かったです。今日で状況が大きく動く事への緊張は問題ないみたいです。

でも舞踏会への参加はほんの少し憂鬱かもしれません。

夜間着から侍女服に着替えます。舞踏会用の服をエルシア様がご用意してくれていますが直前までは普段通りであるつもりです。


「ママ、おはよう」


 天井に張り付いて寝ていたノルカさんと目が合いました。


「おはようございます。遂に今日が舞踏会ですね」

「うん、ママの為に頑張るでござる」


 天井から降りて綺麗に着地するノルカさんです。何度見ても拍手したいくらいに素晴らしい動きでした。


「朝食食べに行こう。あ、その前に起こしに行く?」

「そうですね。お嬢様は朝が弱いですしフロマージュちゃんも同じですね」


 反対にアイリッシュちゃんは朝に強いです。代わりに眠るのが早いです。


「やっぱり一緒に寝てたのでしょうか」

「ん、誰とでござるか?」


 私はお嬢様の部屋に行く道中、双子ちゃんと一緒に寝ていたのかとノルカさんに訊いてみました。


「それは間違いないでござる。マージュちゃん達が小さい……って今も小さいけど、もっと赤ちゃんの頃はママが寝かせていたのを覚えているでござる。だって拙者はその間……ママが付きっきりだったから」


 少しだけ悲しそうに言います。寂しかったと言う事でしょくか? そこで私は訊いていなかったことを確認する事にしました。


「ノルカさんはどうして私をママと呼ぶのですか?」

「それは話すと長くなるでござる」

「聞かせてください」


 何があったのか知りたいです。


「それは語るも涙の話、拙者が空腹で死にそうだった時にママがおにぎりをくれた。それからママと呼ぶ事にしたでござる」

「……それが理由なんですか?」


 満面の笑顔で頷かれて私は言葉に詰まりました。もっと深い理由があるかと思ってましたが単純だったからです。


「他にも理由はあるでござるが、そこは兄者が戻ってからがよろしいって感じ」


 ……多分ですが確信部分をはぐらかしているみたいです。もしかしたら旦那様から口止めされているかもしれないですね。

 お嬢様の部屋の前に来るとエルシア様がいました。


「あら、おはよう。レティちゃんに会いに来たけど丁度良いわ」

「おはようございます。私たちに何かご用でしょうか?」


 エルシア様は普段通りで覇気があり凛とされていますが、どこか困っている気配があったのです。


「元帥とは無関係みたいだけど、先程、旧ジェリック領で問題が起こったと連絡があったのよ。対応する為にベルウッドが残る事になったから貴女の護衛が……それくらいになったわ」


 ノルカさんの事を指していました。


「いえ、私の為に護衛を手厚くしなくても大丈夫ですよ」

「私が不安なのよ。貴女が傷付けばレティちゃんや貴女の子供達が悲しむ。それに私も悲しいわ」

「拙者も拙者も!」

「騒がしいな。何をしてるんだい?」


 規則正しい足音を立ててヴェンフェリオン子爵が近づいてきました。足音は聞こえませんが後ろにソルカさんがいます。


「うん? 二人で仲良くどしたの?」

「いや、姉者よ。儂は公爵と夜遅くまでチェスをしておった。それから軽く休んで起きた時に此奴と鉢合わせになっただけじゃ。姉者の思っておるわけではないですじゃ」


 誰も疑ってはいませんがソルカさんは弁明するように言葉を紡ぎます。エルシア様は言葉を切って簡単に状況を説明しました。


「小娘の護衛じゃろ? この小僧で良い。肉壁にはなる」

「僕も異論はない。役に立つなら命を捧げよう」

「はあ、まあ良いわ。まだ時間があるから幾つかのプランを想定しておくわ。貴方達も朝食が終わったら話し合いましょう」


 気苦労が絶えないエルシア様ですが表情は楽しげでした。少しだけ公爵様に似ているように見えお二人は親子なのだと思いました。


 親子……私は未だにフロマージュちゃんとアイリッシュちゃんを実の子供という実感を持っていません。記憶がないからなのか元々なのかは分かりません。でも二人が大切である事だけは嘘偽りなく自信を持って言えます。

だから、今日も二人に『おはよう』と言います。明日も明後日も『おはよう』と言う為に私は今日、自分自身の運命に向き合うつもりです。

いつも最後まで読んでくださりありがとうございます。

月・金の18時〜20時の更新になります。


誤字脱字報告や感想、評価などいただければ今後の励みになりますのでどうかよろしくお願いいたします。

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