表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/188

30 困った令息 ⑩

 


 それまでは、妹以外の女の子など、かわいいと思ったことはなかったし。なんなら視界にすら入っていなかった。

 妹こそが天下一。抜けているところも含めて天使のように可愛いと思うし、放って置けない。

 もちろんそれは家族愛だが、ゆえに、自分が一番純粋に妹を愛しているという自負があった。


 だが、しかし、なぜかこの時は。


 少女の奇妙な賢さに圧倒されていたせいだろうか。彼女の笑顔は、やけにキラキラして見えた。

 それは、単に容姿がいいとか、しとやかだとかそういった単純な美点が彼に響いたわけではなく、何か、複雑な色彩が目の前に広がるように、彼女の中にはさまざまな未知が潜んでいるように見えたのだ。

 ヘルムートは思わず瞬いて少女の顔に見入った。

 見惚れたというよりは、強烈な興味であったような気がする。

 行方知れずになっていた妹がせっかく見つかったというのに、助けてくれた少女の目の前から立ち去ることがとても残念でならない。

 きっと、この先公爵家の令嬢である彼女とヘルムートは、そうおいそれと再会できない。

 まず自分のほうが家格が下だし、親同士の親交がない家同士では、社交会にデビューもしていない子供同士が交流することはほぼない。

 もしも二人が歳が近ければ、何かしらの接点ももてたかも知れないが。彼女は自分よりもいくつも年下。そんな機会はなかなかないだろう。

 それがわかっていたから、ヘルムートは彼女が『じゃあ私はこれで』と自分に手を振って背を向けた時、無性に寂しくなってしまった。

 離れがたくて、堪らず、


『──あの!』


 思わず、足が前に出ていた。


 咄嗟に呼びかけると、少女が、ん? という顔で振り返る。

 どうかしましたか? と言いたげな顔に、ヘルムートは、両手で彼女に渡されたぬいぐるみを握りしめて彼女のほうへ差し出した。


『こ、このぬいぐるみ──……』






ここまでお読みいただきありがとうございます。


まだまだ序盤。「楽しそうだな」「続きが読みたいな」と思っていただけましたら、ぜひブクマや評価等をポチッとしていただけると大変励みになります!

応援していただけると嬉しいです、よろしくお願いいたします!(*ᴗˬᴗ)人

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あーあーしっかり幼少期にやらかしてたよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ