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籠の外のカナリア  作者: null
幕間 甘い後悔

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18/28

甘い後悔

暗闇はいつも私に優しい。

 やってしまった。


 誰もいなくなった後の自分の部屋で、枕に顔を埋めながら大味の後悔に私は身を震わせていた。


 結果は自分が望んでいたものだ。嘘偽りなく真宵と話をして、最終的にお互いの望む形に落ち着いたのだから、喜んで当然のところなのだろう。


 しかし、そのために失ったもの…というか、勝手に自分で放り捨てたものがあまりに大きかった。


 熱に浮かされたみたいにして貪った唇も、吐き出した心情も、唄うように吐いた言葉も、普段の自分なら絶対にしないし、言わないことだ。


 薄々勘づいてはいたが…恥ずかしいことに、私はそういう『欲』が強く、制御しきれない側面がある。


 とはいえ、今回は明らかにその場の雰囲気とか、思い出とか、真宵の真っ直ぐな言葉とかに飲まれすぎていた。そのおかげで普段は言えないちゃんとした気持ちを言えたのは結果的には良かったのかもしれないが、それとこれとは話が別だ。


「あんなことして、次会うときに一体どんな顔をしていればいいのよ…」


 真宵はきっと変わらないだろう。よくも悪くも彼女には裏表がない。変人じみて見えることが多いが、偽りの陰からこちらを覗くようなことはしていないと思う。


 そうして、私が短いため息を吐いていると、携帯が鳴った。メッセージアプリの音だ。


 噂をすれば影。早速、真宵から連絡が来たのかもしれない。


 そう思って、のろのろと起き上がった私は手にした携帯のディスプレイに映った名前を見て息を止めた。


 ディスプレイには、『水姫』の表示。下に添えてある文章には、最近の私を案じるような言葉が綴られている。


 水姫もたしかに裏表はない。自分の好きに生きている。それが許される人間だから。


『大丈夫よ』と淡白な返事だけをして、携帯を放り投げる。


 この数秒の間だけでも、心が揺れ動かされた。自分の選択した道は正しかったのだろうかと。


 そのきっかけを作った水姫にも恨みは募った。忘れようとしているのに、連絡なんてしてこないでほしいと。


 彼氏ができた水姫は、昔に比べると明らかに連絡の頻度が減っていた。以前は毎日適当な文面が送られてきていたし、電話だってよくしたのに…。最初の数日は、彼女の中での自分の順位を思い知らされるようで、胸が張り裂けそうになっていたものだ。


 私は逃げるようにして、布団の中に潜り込んだ。暗闇はいつも私に優しい。


 今度は大丈夫だ。


(だって、真宵も私と同じなんだもの…男のところへ行った水姫とは違う)


 私が真宵を裏切らない限り、真宵が私を裏切るはずもないのだ…。

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