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人生に疲れたら読む話  作者: リタイアマン
1/1

1日目

初投稿です。

ボチボチ更新します。

 人並みに楽しいことも嫌なこともある人生を送ってきた。

 ここまでの人生は可もなく不可もない。

 だからだろうかこの先も上がることなく、また下がることもなく永遠と死ぬまで平坦な人生を進んでいく。

 そんな未来を感じてしまい、何の為に生きているのかわからない。教えてくれ、誰か。


 ピピピピピピ。目覚ましの音で目を覚ます。

 ボーッとしながらいつも通り思う。

「あぁーー、隕石でも降ってきて一瞬で殺してくれねえかなぁ、そしたらよぉ、もう頑張らなくてもいいんだよなぁ...」

 ベッドの上で目を擦りながら、

「なんて、ありきたりな願望だよなぁ、今日も会社行くしかねーか」

 男はゆっくりと布団から出て洗面所へ。


 明日世界が終わるとしたら、何を思うだろうか。

 多くの人間が不安に駆られながら、生きたいと切望するのか。

 俺は間違いなく、大喜びできる自信がある。やっと終われると。


「別に楽しいことがないわけじゃねーけどよぉ」

 鏡に向かってそう呟くと、歯を磨き顔を洗う。

 リビングに戻りケトルで湯を沸かす。

 慣れた手つきで2切れのパンをトースターに入れ、カップにインスタントコーヒーを大雑把に入れる。

 いつもと変わらない朝。1日の始まり。

 清々しい朝の日差しを横目に思うことは一つ。

「今日も夜までいつも通りかなぁ」


 用意した朝ごはんを食べながらいつも通り、スマホを眺めると夜中の間に届いたメッセージが並んでいる。

 ボーッと流し見すると、返信もしないままスマホを置いた。

 時計に目をやると、出発の時間まであと少しだということがわかった。

 残っていたトーストをコーヒーで無理やり流し込むと、急ぎめに服を着替え小走りで家を飛び出した。


「少し早めに起きたつもりだったんだけど、家を出るのまでいつも通りか」


 満員の電車に揺られながら考える、隣のサラリーマンも同じなのだろうか。

 今日は金曜日、明日の休みはどう過ごそうか考えているうちに、アナウンスが流れてくる。

「まもなく〜」最寄り駅までついたことを知らせてくれる。

 電車を降りる瞬間、いつもと変わらない世界に一瞬だけ、ほんの少し違和感を感じ後ろを振り返る。

 ただその時は、何も分からなかった。


 会社へつき、自分のデスクまで行くと隣の席に座っていた女が快活に声をかけてくる。

「南くん、おはよう。今日は遅刻ギリギリだね」

 朝の日常のワンシーン。これもいつも通りだ。

「おはよう、柊。早く起きたはずなんだけどなぁ」

 気だるげに会話するのは俺が疲れているからなのか。

「今日終わったら飲みに行こうよ」

 と彼女が言ったが、今月の財布事情を考え一瞬ためらい、決断した。

「んー、まぁ、ん、行くか」

「何それ、ま、いいけど!じゃあ仕事頑張ろー!」

 そういうと彼女はデスクに向き直し仕事に取り掛かった。


 定時を少しすぎたころ、隣から声がかかる。

「もう限界、今日はこの辺にして飲みに行こう!」

 作業を進めていた俺は丁寧に保存し、

「そうだな、いつもの居酒屋でいーか?」と聞いた

「うん!あそこの居酒屋、金曜はイケメンの店員さんいるから楽しみ〜」

「お前はそればっかだな、金曜になると毎回飲みに誘いやがって、いい加減連絡先でも聞いとけよ」

「いやいや、拝むのがいいのであって深い仲になるのはまた違うんだな〜」

 なんて嘘か本当か分からない発言をしたが、あまり気にせず会社を後にした。


「らっしゃい!今週もあざーーす!」

 元気な声で声をかけてくるイケメン。

 毎週来ていた為、顔もすでに覚えられているみたいだ。

 席につきすぐに注文する。

「生二つ、エビの唐揚げと、冷奴、それと、、」

「冷やしトマトとキムチチャーハン2人前でいいっすか?」

 食い気味にイケメンが聞いてくる。

「おっけー!さっすが!いつものコースで」

 と答える柊はすでに楽しそうだ。


 3杯ほどビールを流し込み調子の良くなってきた俺たちは酔っ払いの会話を繰り広げ出す。

「つーかよぉ、人生なんていつ終わってもいーんだよ。明日人類滅亡だーってなったところで俺は構わないぜ。毎日毎日同じような人生だしなぁ」

「いやいや、全然違うこともあるよ!だって昨日は飲んでないし、今日は飲んでるもん!」

「あのなぁ、昨日と今日で見たらそうかもしれないけどよぉ、先週と今週じゃ全く一緒じゃねーか!」

「同じような日常の中にこそ、幸せってあるんだと思うけどな。少しの違いで私は楽しいし!今日はエビの唐揚げいつもより多かった気がするし!」

 ニコニコしながら話す彼女は特別幸せを感じやすいタイプなのだろうか、俺との感覚が違うことに羨ましさを感じる。

「俺はなぁ、もっと変化が欲しいんだよなぁ、今までの日常が突然変わっちまうようなさぁ」

「そうそう変わることなんてないって!毎日の積み重ねが大事なんだから!ま、また来週も頑張ろ!」

 だいぶ飲んで満足した俺たちはいつも通り早めに店を後にする。


 駅までの帰り道の中、彼女がこう言った。

「突然変わっちゃうようなこと一個だけあるよ」

「ん?なんだよそれは」

「私ね、南くんのこと、、、」

 衝撃だった。彼女から告げられたことは確かに今までの日常が崩壊するくらい突然のことだったが、それよりも全く心踊ることのない自分に衝撃を受けていた。


「んー酔いすぎだろ、また来週な」

 とだけ言い駅に着くと電車にかけ乗った。反対のホームから視線を感じた気がするが、わざと目線を下に向けていた。


 ガチャガチャ。家の鍵を乱暴に開けさっとシャワーを浴びると、冷蔵庫からビールを一缶取り出し飲み直す。

「1週間を終えた後に飲む酒はうめぇや、けど、こんなことの為に生きてんのかぁ」

 また来週には同じ1週間を過ごすことの億劫さが頭の片隅から顔を覗かせる。


 そんな時、ピンポンピンポンピンポンピンポン!

 玄関の方からチャイムの音が鳴り響く。扉の向こうに誰がいるのかわかっていたが念の為穴から確認し扉を開く。

 隣の家の女、咲だった。

「やぁやぁ童貞、セックスしようよ」

 そんなこといきなり言う奴はこの世界でこいつだけだと思う。

「童貞じゃねーし、いきなりすぎるだろ」

「ま、なんでもいいから入らせてもらうわ〜。お、ビールあんじゃん!」

 自由勝手がすぎる気がしたけど、一人飲みも退屈だしなぁと考え許すことにした。

 そのまま二人で飲み進めていくうちにいつものペースに持っていかれ、なし崩し的に咲に跨られる。

 心は動かぬまま体を合わせ終わると、咲は言った。

「んー、じゃ帰るわ〜」

 自由すぎるコイツは欲を満たすと満足したように隣の部屋に戻って行った。


 若干の虚しさが残りながら一人残された部屋。

「...........俺も寝るか...」

 歯磨きを終えベッドに入る。

 酔いが回っていて今は眠ることしか考えられない。目覚ましもかけずに横になると呟いた。

「明日は世界が終わってくれないかなぁ」


 ====================================================

 0時丁度に就寝した俺は、時計の針がそのまま24時間戻っていくことに気が付かなかった。

 翌朝目が覚めると、眠い目を擦りながらスマホを確認し飛び起きた。


「今日が、金曜日のままだ」

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