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御所の鬼(12)

    ×  ×  ×  ×


 京の西のはずれにある鬼塚の前。ざわざわと人の声が聞こえた。それはまだ日の高い頃だった。

 そこに集まっているのは京見廻組に属する四つの隊だった。

 それを率いるのは当然局長安藤宗重。そしてその傍らにはいつものように城ノ介がいる。その二人を会わせて総勢三十人。

 それらが騒いでいる。

 ある者は鬼塚を曝けといい、ある者はそれを止めた。

 「局長、鬼は夜になれば強くなるとか。

 日の高い今のうちに鬼塚から掘り起こし、首を斬るべきでしょう。」

 「それでは全体の作戦が齟齬をきたす。」

 他の者が声を上げ、宗重はその二つの意見に迷っていた。

 「城ノ介・・お前はどう思う。」

 宗重は横に立つ長身の男に意見を求めた。

 「俺はあんたを護るだけだ。

 策に対する意見は無い。」

 城ノ介は冷たく言った。

 宗重の逡巡は暫く続いた。

 鬼塚を掘ると言った者達が業を煮やし、近くの農家から鍬を何本か調達してきた。

 掘ろうぜ・・・それを同意見の者達の前に投げた。

 何人かがそれにわらわらと駆け寄り、鬼塚に鍬の刃を入れた。

 待て・・と言いながらも宗重はそれを止められなかった。


 こんもりと盛り上がった土を鍬がどかしていく。

 がきっと鍬の刃が硬いものに当たる。

 掘り出すぞ・・その男の鍬が硬いものの脇を掘り、その横に鍬の刃をくい込ませた。

 出すぞ・・・その声に廻りの者達が刀を抜いた。

 だが、掘り起こす前に屍体だったはずの鬼が立ち上がった。その腹からはまだ内蔵がはみ出ていた。

 出たーっ・・・鍬を振るっていた男はその姿に腰を抜かしたように尻餅をついた。

 「斬れ・・斬るんだ・・・」

 宗重が怯えたような声を上げる。

 一匹目の鬼の後から、次々と鬼達が立ち上がってきた。

 現れた鬼達の手に武器は無い。しかもまだ完全には傷は癒えてはいなかった。

 鬼は素手で戦う。

 しかしその行き先に迷っている風もあった。

 「鬼の武器は何処だ。」

 宗重が大声を上げ、

 十輪寺です・・・物知りがそれに応えた。

 十輪寺と言えばここから南、そこにはやるな・・・また別の声。

 チッ・・要らぬ事を鬼に教える・・・・

 城ノ介は舌打ちをした。

 十数匹の鬼の一団はそこから南に動き出し、宗重は為す術を知らなかった。

 「南に回り込め。」

 城ノ介は堪らず声を上げた。

 奥村左内が率いる護皇隊どころか、御所からの兵もまだ着いていない。今、得物を鬼に奪われれば、ここに居る隊は壊滅する。

 市中の隊を呼べ・・・宗重が大声を上げ、隊員が何人か東に走った。


 騒動・・・内裏を後にした奥村左内は西へ向かう道すがら、妙な胸騒ぎを憶えた。

 急げ・・左内は自分が任された僧兵達に声を掛けたが、その者達は一向に急ごうとはしない。

 「続く者だけ走れ。」

 言葉を残して左内は駆け出した。

 左内の後ろには十二人中、五人しか続く者はいなかった。


 鬼塚の前にはもう数人しか残っていなかった。

 「他の者はどこにいった。」

 左内は怒鳴った。

 「鬼の後を追って十輪寺に向かいました。」

 左内はそこに鬼の武器がある事は知っていた。

 十輪寺へ・・・左内の部下が叫ぶ。

 「もう遅い。

 花の御所に向かう。」

 左内はそこから(きびす)を返した。

 「後からくる者達もある。

 そこもと等もそれと一緒に御所に向かえ。」

 後ろには左内の怒鳴り声だけが響いていた。


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