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御所の鬼(9)

    ×  ×  ×  ×


 御所からの命令は翌日もたらされた。

 晴海と源三が待つ御所に兵衛と巴は相前後して着いた。

 それから遅れる事一刻で紅蓮坊が、それからまた一刻、遼河とかえでが・・昼過ぎには全員が揃った。

 「その女童までか。」

 謁見に当たる晴海はかえでを睨み付けた。

 しかも、かえでの傍らには子犬さえもが居た。

 紅蓮坊はそれに対しくどくどと言い訳を並べた。

 「もうよい。

 御所に詰めるのは今晩からじゃ。

 それまでにその女童と犬はどこかに預けてこい。」

 晴海は厳しく言いつけた。


 どうする・・・兵衛達は飯屋で顔をつきあわせた。

 「どうもこうも無いでしょう。

 かえでは連れて行くべきです。」

 そこに源三が入ってきた。

 「あの子を連れて行けば、今晩で決着はつくでしょう。

 それにあの子が望むなら、げんたも連れて行くべきです。」

 「だが、どうやって御所に入れる。」

 「幸い一番隊は今晩から詰め所を出ます。そこにいるのは私達だけです。」

 「晴海殿は。」

 「これには参加しません。」

 兵衛の問いに源三が答え、

 「あのくそ坊主、また逃げる気か。」

 と紅蓮坊が毒づいた。

 「雉殿は。」

 今度は巴。

 「晴海殿の守護との事です。」

 「そうであれば、かえでを入れる事が・・・」

 「まて、ここには居られようが、どうやって連れて来る。」

 紅蓮坊が疑問を挟む。

 「あなたと巴殿は動かないでください。

 兵衛殿はこの御所内での信頼が厚い。それに私は門番の幾人かに鼻薬を効かせてあります。

 丁度今晩はその者達が警備に当たります。

 御所に集まる時、兵衛殿がかえでを匿って連れてきます。その時には私は門番に言い聞かせます。あなた方三人は素知らぬ顔で早めに御所に出仕していてください。一番隊の隊員が全て詰め所を出た後、兵衛殿と私でかえでを詰め所につれて参ります。」

 よし・・それを聞いて紅蓮坊は手を打った。

 「かえでは真夜中まで詰め所に匿い、月が高くなってから、御所の寝所の庭に連れて行きます。」

 「何故真夜中なのだ。」

 紅蓮坊が首を傾げる。

 「日は陽、月は陰。

 鬼を含めた魔物の力は陰である月に支配される。」

 「どう言うことだ。」

 「つまり、月夜の方が鬼の妖気が強まると言う事だ。」

 巴は諭すように紅蓮坊の顔を見た。

 「ならば不利ではないか。」

 「左様・・・」

 横から源三が口を挟んだ。

 「だが、妖気が強まるからこそ、鬼の発見が容易になる。

 そこにかえでの力が生きる。

 後は我等と鬼の力比べだ。

 儂はそなた達ほど鬼を伐つ力は持っていない。そなた達の力が頼りだ。」

 「とにかく動こう。」

 飯を食べ終わった兵衛が立ち上がる。

 「装備は持って来ている。

 俺と遼河は以前世話になった壬生の寺に戻り、装備を調えたらすぐに御所に向かう。

 巴にはかえでを頼む。

 準備が出来たらすぐに兵衛に渡してくれ。」

 「儂は先に御所に行き、手筈を整えておく。」

 源三はその場から完成したばかりの花の御所に向かった。


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