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御所の鬼(8)

    ×  ×  ×  ×


 兵衛の家で巴達はゆっくりと身体を伸ばしていた。そこに子供達が集まって来た。

 「朝のうちは子供達に剣術を教える。

 せっかくだから貴方達にも協力して貰えると助かる。」

 信繁の声に兵衛に続き、巴も道場に出た。

 俺は外だな・・・紅蓮坊は庭に下り、まだ稚拙な子供達の相手をした。

 そこには遼河とかえでの姿もあった。

 「おれも自分の訓練を兼ねて教えている。」

 遼河が教えるのは子供達だった。その中にはかえでも混ざっていた。

 鬼だ・・鬼だ・・・と紅蓮坊の姿を見た子供達がざわついた。

 「ぼうずのおじちゃんは、おにじゃないよ。」

 そんな中でかえでだけが紅蓮坊に飛びつき、きゃっきゃっと喜んでいる。

 そんなかえでの行動に、他の子達も恐る恐る紅蓮坊に近づいた。

 その内の一人を捕まえ、紅蓮坊は大きく空に差し上げた。

 「鬼だぞーっ。」

 紅蓮坊はわざと怖い顔をして見せた。

 「いじめちゃだめ。」

 かえでがその尻を叩くと、

 やられたーっ・・・と紅蓮坊は大仰に転げた。

 それで子達の緊張が解けた。

 後はもみくちゃ・・・庭は大騒ぎになった

 いくら遼河が注意しても子供達はもう耳を貸さない、その中心にいる紅蓮坊からして子達と遊ぶばかりだから、それも仕方がなかった。

 遼河は困り果て、道場に駆け込んだ。

 「巴さん、何とかしてください。」

 遼河は薙刀を教える巴に懇願した。

 巴は庭の歓声は稽古のためだと思っていた。ところがそこに出てみると紅蓮坊は土の上に寝っ転がり、その手で三人の子を差し上げ、その腹の上では数人の子が跳ね回っていた。

 「何をやってるの。」

 巴が鋭い声を飛ばした。

 びくっと紅蓮坊の動きが止まった。

 「稽古の時間でしょう。

 遊びの時間ではないはずよ。」

 紅蓮坊は子達を身体から降ろし、面目なさそうに立ち上がった。

 「あんたは子供さえ見れば、いつも・・・」

 「小平次を見ませんでしたか。」

 続きそうな小言を信繁の声が寸断した。

 「昨日の払いにやったまま、まだ帰っていない。」

 信繁は心配そうにそこに立っている子達の中に小平次を探した。

 いない・・・そこに小平次が慌てて飛び込んできた。

 何を・・・

 「連絡だ。」

 信繁の言葉を小平次が断ちきった。

 「源三様からだ。」

 小平次は一枚の紙を差しだした。

 それは烏が運んできたのであろう。結んだ跡があり、皺が寄っていた。

 宛名には兵衛以下の名が記されてあった。

 信繁はそれを持って道場内に入り、巴と紅蓮坊もその後を追った。

 手紙を手にした兵衛を先頭に、遼河も含めた四人は母屋に入り、かえでもその後を追った。

 「何て書いてある。」

 手紙を拡げる兵衛を紅蓮坊が急かした。

 「近々、招集がある。二番隊が御所の警護に就くそうだ。

 すぐに帰ろう。」

 兵衛は結論だけを言い、その手紙をみんなに回した。

 そこには一番隊の不満やら、頻発する将軍の枕元に現れる鬼の話も書いてあった。

 「かえでも一緒に・・・」

 遼河が声を発した。

 「かえでなら・・・」

 その先の言葉を巴が目で制した。


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